5 商業ギルド
「おはよ、父さん母さん」
「おはよう、何時も決まった時間に起きるわね」
なんかね、前世でもそうだったが癖になるんだよな。
「良いじゃねえか、起こす手間が無いだろ?」
ドンドンと扉を叩く音がする。
「アルー!起きてる?開けて!」
アーちゃんの声だ、何かあったのかな?
ドアを開けると、勢いよく飛びついてくる。そして倒れる、支えれ無い自分が歯痒い。
「おはよ。どうしたの?」
「お母さんが!苦しそうなの、助けて!」
「解った、行こう」
隣なので、直ぐそこだ。寝室に行くと旦那さんが看病をしてる。
「アル?…アニスが連れてきたのか、すまないな」
「困ったときはお互い様ですよ。鑑定しますね」
「お願いする」
エレナ 人族
状態:インフルエンザ
SKILL
商人 料理
「エレナさんは、流行りの風邪ですね。この風邪は高熱と寒気、身体の節々が痛くなります。それと感染力強いので、レジスさんやアーちゃんにも伝染ると思います」
「そうか、アルにも伝染ったらすまん。救護館は混んでて入れないな」
「アルお願い!お母さんを助けて!」
アーちゃんお願いは聞きたいな。仕方が無いか。
「これからする事を、秘密にしてくれますか?」
「うん!」
「何をする気だ?」
「状態異常回復」
エレナさんの身体が、淡く輝く。
「す〜、す〜。」
呼吸が安定したので、一応鑑定を掛けたが状態異常はなくなってるな。
「アル!神官でも無いのに使えるのか!」
「だから秘密にして下さいね」
「あぁ、エレナはただの寝坊だ。アニスも解ったな?」
「うん!」
この世界では、回復スキルを持ってるのは貴重らしい。見つかると貴族や救護館を運営をする、ゲドラ教のしつこい勧誘に合う。それと、人攫いに会うからね。
「それでは、朝御飯食べて無いので帰りますね」
「ああ、すまないな。今度御礼はするよ」
「でしたら、僕の身長に合った練習用の剣が欲しいです。中古でも良いので」
成長すると、余り使えなくなるからね。
「それくらい問題無い。後で持って行くよ」
失礼をして、家へと帰ると。
「おかえり、何かあったの?」
「アーちゃんの勘違いでした。エレナさんはただの寝坊ですよ」
少し冷めてしまったが、猫舌の3才児には丁度良いか。
食べ終わると、自室に戻り久しぶりに知識の書庫を訪れる。
久しぶりだね。
そうだね。教えて欲しいだけど、この世界でインフルエンザに効くポーションのレシピってある?
あるよ、材料はね………………これを錬金で作ってね。
知らない薬草ばかりだ。まあ直接作らないのでいいや。ありがと書庫さん。
偶には遊びに来てね。寂しくて死んじゃうよ!
どこのウサギさんだよ。でも、助かるので今度ゆっくり来るね。
良し!レシピのメモを書き写したので、商業ギルドへ向かうかな。
「父さん、商業ギルドへ行って来るね」
「ああ、気をつけてな」
大通りを歩き、路地裏へ入らないようにする。要らぬトラブルはまだゴメンだ。到着する迄に色んな人達が声を掛けてくれる。
花冠を作った時のお母さん方や、お店の人、こうやって目立って置けば万が一の時の目撃情報になるからね。
っと、到着だな。
「お早う御座います。本日もマスターをお呼びしますか?」
「はい。お願いします」
いつもの応接室へ移動し、暫し待つ。
コンコンと音がしドアが開く。
「おはよう。昨日の今日で、もう新作かい?」
「はは、みたいな物ですが、今日はお世話になってるフェルザーさんへの御礼です」
スッとメモ用紙を渡す。
「これは?」
「流行り病に効くポーションのレシピです。これは僕に儲けは入らないので、この国全土へ回して貰えないでしょうか?」
この国の錬金師さんガンバレ!
「そこまで、貴重な薬草は無いが儲かるよ」
「救護館はいっぱいですし、治療費は高いですよね。一般の方でも支払いは苦しいので、後は個人的にゲドラ教が嫌いなので」
「ははは、それは私もだ。名前は伏せた方が良いから利益は無しってことだね」
「この歳で狙われるのは嫌ですからね。返り討ち出来る様に鍛えて無いので」
「君なら2,3年したらできそうだね」
今でも魔法を使えば出来るけど、まだ目立ちたくないな。
「今日はこれだけなので、そろそろ失礼します」
「解った、このレシピは商業ギルドお抱え錬金師が発見した事にするよ」
それが一番良いな。目立たず商業ギルドに貢献出来たので、これでCランクの義理は果たせた。
「ただいま!」
「おかえり。さっきレジスが来てコレを、アルにやってくれって。日頃の御礼だそうよ」
早速、子供用の剣を持ってきてくれたんだ。ちょっと嬉しい。日本じゃ銃刀法違反で捕まるが此処は異世界だ、腰に付けて歩いても捕まらない。
腰に付けて、鞘から抜く。軽く振ってみるが、問題なく扱えるな。
「危ないから庭でやりなさい。それにしても様になってるわ」
確かにここじゃ危ないな、庭へ行こう。
……一通り振って見たが、剣術スキルは仕事してるな。
「アルー、剣持ってる!かっこいいね」
「ありがと、これでアーちゃんを守るね」
「遊びに行こ!」
母さんに遊んで来ると、告げて2人で出かける。今日は何処へ連れて行かれるのかな?