31 宿
「こんにちわ」
「いらっしゃいませ、本日の御用件は?」
語尾にニャンが付いてないだと…無念。
「どうかされました?」
横でリズが無表情で抓ってくる、ごめんなさい。
「い、いえ、何でもありません」
慌てて、カードを差し出す。
「宿を探してまして、何処か良い処有りますか?」
「商業都市ベイリアルのアルトゥル様!」
周りがザワつくが昔の冒険者ギルドみたいに誂わない方が良いかな?あの時は4才児だからいっか。
「あの、宿は?」
「失礼しました。大きな声でお名前と出身地を」
流石商業ギルドだ。情報の大切さは解ってくれてる。
「此処へ来たら、どうせバレますので気にしていませんよ」
「本日の宿泊施設でしたら、王家の方も御利用されるレイグラーフとかどうでしょうか?」
「多分、最初に訪ねましたが値踏みをされ、満席と断われましたよ」
「え!?でもコチラの方は…」
リズの身分も容姿も知ってるけど、口には出さないようだ流石だ。周りも気付いてるけど、聞き耳を立ててるだけだしね。
「フロントの方は知らなかったかも知れませんが、あの態度では僕も反対ですね。もう2度と行かないと彼女が言いましたから」
「それでしたら、フロックハートが宜しいですね。お料理が美味しいのは勿論ですが、お風呂付きの部屋があります」
え!この世界でも風呂あるの?
あるよ〜、勿論だけど元転生者が造ったけど維持に魔石を使うから余り普及して無いよ。
私のとこにはある。
それは、王宮だからだよ!風呂の概念は無いのかと思ったけど…手軽に入れるようにしても良いのかな?
私は良いと思う。気持ち良い。ただ、獣人は毛が抜ける。乾かすのが大変。
そっかー、それもどうにか考えてみるか!
「では其処でお願いします。場所を教えて頂けますか?」
「丁度、支配人がお見えですので少しお待ち下さい」
そう言って立上り、奥へと席を立つ。数分後に1人の女性を連れて帰って来る。
「初めまして、フロックハートの支配人を務めます、ライラと申します」
優雅に一礼をする、黒髪の女性に見惚れる。すると、リズさんや痛いじゃ有りませんか?目で、浮気ダメと訴えて来る。
「仲がよろしいようですね」
「未来の旦那様だから、放っておくとまだまだ増える。注意が必要」
「そのようですね」
王女様、こんな人の多い場所で言っちゃたら…ここには沢山の耳が有るのに。
「ライラさん、言いたく無ければよろしいいのですが…」
「はい、この黒髪ですよね。想像の通り、異世界からの訪問者の子孫に当たります」
やっぱりそうだよな、この世界で初めて黒髪を見たよ。何だか懐かしいな、今もこの世界に異世界人は居ないのかな?
居ないね〜。居たら面白そうだから監視するしね!
そうだよね、ショーコちゃんが放っておく筈は無いか。
「異世界の宿?愉しみ」
リズの顔が、少しほころぶ。俺も少し期待してるよ。
「ではご案内致しますので、付いて来て下さい。生憎と歩いて参りましたので」
「構いません」
「うん、問題無い」
受付で御礼をし、ギルドを出て行く。その場に居た商人達が一斉に喋りだす、第三王女の夫が終に決まったか!等で持ち切りになってしまった。だがアルトゥルは知らない、知っているのはショーコちゃんだけ。
ギルドを出て、歩いて本日の宿へ向かう。当然珍しい物が有れば立寄り、道草ばっかりで時間は掛かる。
宿に到着したが、これは前世で見た旅館だ!ここ迄見事に再現してるとは、ちょっとテンションが上がる。
「ようこそおいで下さいました、当旅館の女将ライラと申します」
アレだ、旅館と服装が合ってない!残念すぎる。
「お部屋にご案内致しますので、どうぞお入り下さい」
中へ入ると、靴を脱ぐ使用になってる。そこは良いよ、何故和服を教えなかった。
「靴を脱ぐのは初めて、面白い」
「こちらをお履き下さい」
室内用の…靴。ち、がーう!ここはスリッパでしょ!先祖の日本人よ、半端にやったな。
部屋に案内され、ドアを開くと…床だった。畳であって欲しかった、これは何もかも半端になってるな。
「すいません、お風呂を見せて頂けませんか?」
「「おーー」」
木と岩で露天風呂を再現している、どうやら風呂には拘っているようだ。
「お気に召したようで何よりです。先に入られますか?」
「是非お願いします」
夕飯までまだ時間ありそうだから、先にお風呂を堪能したい!
早速、入らせて貰う。先に身体を洗い…ってボディソープも石鹸も無い。魔法でいいか?清潔で済ませるが、何か違う。早く終わるから良いけど。
湯船に浸かると、はぁ〜っと声が出るのはやはりオッサンかな?暫く経つと、リズが入って来る。何となく入って来るんじゃ無いかと思ったがやっぱり入って来たらしい。
「入って来るとは思いましたが、せめて身体にタオル巻いて入って欲しかったですね」
「問題無い」
あるよ!目のやり場に困るし、そりゃあ俺は眼福だけどさ。
「それは良かった、けど清潔が使えない」
使えない人はどうするかと思ったが、やはりそうだよね、使える人に頼むしかないよね。
リズにクリーンを掛けて、当然のように入って来る。もう少し恥じらいを持って欲しい物だな。
「お風呂はいつも見られる、慣れ?」
「でもそこに男性は居ませんよね?」
「いない、でもアルだから良い」
もういいや、お風呂を堪能しよう。隣にリズが居るから、尻尾がワサワサと触れるので尻尾をモフる。
湯船の中でモフるのも触り心地は良かったが、妖艶な声が響き渡ったのは言うまでも無い。
「ゴメン、触り過ぎましたね」
「良い、アルだから」
のぼせたのか、それとも触り過ぎか顔が赤いので出るとしますか。
リズも一緒に出るが、湯船には毛が浮くよね。無系等魔法で魔力を細かい網にして、底から上へと動かす。
「凄い、これなら簡単」
「はい、タオルをどうぞ」
俺も自分の身体を拭くので、タオルを渡す。
「拭けたらタオルを巻いて来て下さいね」
「解った」
肌着を急いで着る、魔法の袋からブラシと銃?を取りだす。前世のドライヤーだ、クリーンがあるから出番は無いかと袋の肥しになってた。
リズが裸でやって来た、だから先に言ったのに…。
「タオルを巻いてと言いましたよね?」
「全部見たからいまさら?」
そうだけど、そうじゃ無い!少しは恥じらいの顔も出して欲しい。
「努力する」
「ココに座って下さい」
髪から乾かしていく、ドライヤーは火と風のピンズで造ってある。それでこっちのブラシは髪のダメージを回復させるピンズを取付けてある。
「この風暖かくて気持ちい」
「お風呂の概念が無いのかと思い、袋の肥しになってました。ブラシも髪や毛の回復が出来るんですよ」
「それ、欲しい!」
「ええ、だったらリズ専用を造りますね」
「ありがと、待ってる」
尻尾も風を当てながら、ブラシを通していく。
風呂から出ると、リズの髪と尻尾が艶々になった。本人は満足してるので成功かな。少しすると、ライラさんが食事の準備にやって来た。
「まあ、髪と尻尾が特に綺麗に!」
「アルの魔道具で綺麗にして貰った」
何か言いたげだけど、ぐっと言葉を呑み込む。予想は出来るけど、俺達以外のお客さんって居ないんだよね。




