21 王都
その頃ヴァレール・フォン・ラファネル伯爵は王都へと向かっていた。アルトゥルが開発に成功した回復腕輪を持って。
当初はアルトゥルと、同行する予定だった。娘のソフィーに嫌がられたので渋々諦めた。
「偶には夫婦で、馬車の旅も宜しいのでは?」
「確かに、だが王都では賑やかになるがな。アルトゥルくんの功績が大きいからな」
「ええ、本当にソフィーを貰ってくれないかしら?」
「アルトゥルくんは貴族位に興味は無いだろうが、陛下は貴族位を渡したがるだろうな。それなら婚姻も楽だ」
「ソフィーなら喜んで、平民になると思うわよ」
「だろうな」
そんな会話が行われてる事は知らず、絡まれてる最中のアルトゥルである。
馬車は3日掛け王都へとたどり着く。
「久しぶりの王都だわ」
「そうだったな、別邸に向かってくれ」
御者は頷き、王城近辺の貴族街へと向う。城を中心に貴族、有力者、平民と其々区分けが成されてる。
伯爵家はそれなりの地位で有る為、王城から近い位置へ屋敷を構える。
「皆、出迎えありがとう」
屋敷の前に並ぶ使用人へ労いの言葉を掛ける現当主だが、珍しい光景になる。
選民意識高い者は、声を掛ける者は居ない。故に変わり者と揶揄される小派閥の貴族だ。
「旦那様、明日の午前中に謁見の許可がおりました」
「早かったな、アネスト」
「ハイ。何でも世の在り方を変える事が出来る可能性があると言う事で、宰相様が進言して下さいました」
国王陛下側近の宰相、ディートリヒ・フォン・バウムヨハンも平等主義の1人だ。
「彼の出現で、世の中が荒れる可能性も事実だがな」
「そうでございますが、変わらなければ衰退して行くばかりかと?」
「ああその通りだ、我が領土は商業都市と呼ばれ新しい物を常に取込み全土へ発信出来る。貧富の差はあれど、スラムが無いのが自慢だ。アルトゥルくんのおかげだ」
アルトゥルがこの6年でスラムを消した。戸籍の管理をする事で、貧しい人に補助金と健康なのに働かない者は強制奴隷制度を採用した。犯罪奴隷や借金奴隷とは違い、
賃金は全部本人が貰える。
「奴隷で強制的に働かすとは、最初は驚いたがスラムで腐るよりはと思ったが結果良かったな」
強制奴隷はアルトゥルが作った魔導工場で働く事になり、掃除から制作、運搬とスキルが無いい者でも何かしらの役割を与えられる。
「左様で御座います。犯罪率も改善されましたが、どうしてアルトゥル殿は裏組織を潰さなかったのでしょうか?」
「彼が言う処。一般市民への畏怖の対象とどうせその内放っといても出来るなら、裏も仕切れば他の組織は入って来ないし来ても対処しやすいそうだ」
「ホッホッホ、確かにそうでございますね。強制労働者も働く意欲が戻ると、そのまま其処で雇っていらしてるそうで?」
「アメとムチの使い分けらしい。そうだコレを呑んでみると良い」
魔法の袋から一瓶の酒を出す。
「コレは、うん?冷たいのですね」
「アルトゥルくんがドワーフと開発した、麦から造ったエールと言う酒だ」
「なんと!麦からパンではなく酒ですか?」
「この工場はベイリアルの衛星都市の1つをアルトゥルくんが開拓から建造をし小さな村で造ってる」
「衛星都市とは、何でございますか?」
「ベイリアルを中心に、囲む様に小さな村を造り其処で強制労働や生産を行ってる。そのおかげで人手不足だ。造ったアルトゥルくんは利益を取って無い、自分は冒険者が本業と言ってるからな!」
「それでこの王都のスラムの人数が減り続けているのですな?」
「馬車で3日で食い扶持に有り付けるからな、警備隊も有志を募って見回りが出来るようになり生産利益から賃金を出せるのも大きい。騎士団だけでは到底補え無いので非常に助かる。それでも人は足らないがな」
「これは、美味しゅうございます」
アネストがエールを飲み干す。
「そのコップ一杯で銅貨3枚くらいだが、一気に飲めるから量が出る、肴も欲しくなるだろ?それもアルトゥルくんの話しだがな」
「ですが、お酒好まれ無い方は?」
次の物を取出し、渡す。
「あら、貴方私にも下さらないの?」
妻のフェリーチェの視線が突き刺さるので急いで追加を出す。
「紅茶の用意頼めるかしら?」
「畏まりました、奥様」
「貴方はまだ沢山持っていますよね?1ホールほど出して貰えますか?」
逆らえないのでおとなしく出す伯爵様でした。
「これもまた、甘味ですか!」
「このケーキと言う甘味とラム酒と言う酒も新発見の植物から同時に制作可能なのだよ」
「ハイこれ、あなた達も後で皆で食べて頂戴。アルトゥルくんが作った甘味よ」
「有難う御座います、奥様!」
「なるほど、確かにアメで御座いますな」
「おかげで街は更に賑わってる」
「道理で最近、妬みの噂をよく耳にする訳ですな?」
「やはりそうか、主に彼処の教会の派閥だろう?」
「左様で御座いますな。何でも流行り病の際はアルトゥル様が特効薬を商業ギルドへ持ち込みしたそうで?」
「ああ、非常に助かった。あの病は定期的に発症するので、教会の財政の1つだからな。次の手で完全に潰せると私は確信してる」
「それ程の功績ですか!では、屋敷の警備も強化しませんとな」
「頼む!」
それから、王都の現状をアネストから聞き情報得る。翌日には登城するので軽く食事を摂り眠りに着く。この世界でまだ風呂の概念が無いのでアルトゥルはそれも試行錯誤してるそうだ。




