2 幼少期
月日は流れ3歳の、誕生日を迎えた頃の出来ごとに母は呟く。
「アナタ、妊娠したかも?」
「やったな!」
「おめでとうございます。母さん」
喜ぶ父はそのまま、母を抱き締めている。そしてそのまま…。
「コホン!…父さん、嬉しいのは解りますが、妊娠初期は安静が一番ですよ」
「っと、すまない。ついな」
「もう、アナタったら!どっちが子供か解らないわよ」
こちらの世界では、医療が未発達なため殆どが魔法に頼っている。切り傷や骨折なんかにも、回復が使われる。
病気には状態異常が使われ、確かに治りは早い。もしくは各種回復薬が使われる。
この事から、事象が起こった後の対処のみで予防の概念が無いのである。もし流産にでもなってしまえば、女性側ばかり責められるそうだ。
産まれてくる、弟か妹よ!お兄ちゃん?が護るからな!
「それにしてもアル、何でそんなに詳しいんだ?魔道具のピンズにしろ、教える事はもう無いぞ」
「解らないままで居るのが、嫌いなので調べますから」
魔道具に使われるピンズも、至極簡単だった…。例えば魔導コンロに使われているピンズは、火の形は焚火のイメージで造り、はめ込む火の魔石を付けて終わりだ。
使い方はピンズに魔力を流し込めば、コンロから赤い火出る。火力の調整は出来ないので、…はい、もう解るよな!?火の調節が出来るツマミを造り、そこに風のピンズを付けてる。火の出る構造も前世のコンロに変えたので青い炎に変わった。
これを、商業ギルドで特許申請を出したので独占出来たが生産が間に合わない。コレは自業自得だった。普通の魔導コンロでも銀貨75枚はするのに、新しいコンロは金貨2枚でも売れた。
新型コンロの利益は俺に入ってくるので、貯めて路銀にしないとな。
「アルー!教会に行こー!」
今日は、鑑定を受けに行く日だ。3歳頃に自分のスキルを確認をする習慣だそうな。
アニスは俺を誘いに来たのかな?一緒に行くとしますか。
「アーちゃん、おはよう。ちゃんと御飯食べた?鑑定中にお腹鳴るよ?」
「食べたよ、もう!私のほうがお姉ちゃんなんだからね!」
半月しか変わららないんだが、言ったらよけいに拗ねるからな。
「エレナさん、お早う御座います」
「おはよーアルちゃん。随分と落ち着いてるわね。アニスは昨晩からはしゃいでるのよ」
それは仕方が無いんじゃ、俺は自分で見れて結果は知ってるし。
「シエリー、我慢できない子が居るから」
「そうね、行きましょう」
「アーちゃん、はい!」
手を差し出すと、握ってくれるのでそのまま教会に向う。よくコケるからな、まだ子供なので腕力は無いが、杖替わりくらいにはなるだろう。
歩くこと約1時間、商業都市だけに中々広い。それもあるが、まだ3才児だしな。
女神カルナを崇める、カルナ教。健康を守ると言われている。商売の神様では無いのね。
「お早う御座います。本日はどのようなご用件ですか?」
「お早う御座います、シスターさん。今日は、僕たち2人の鑑定をお願いします」
「お、お早う御座います。よろしくお願いします」
「はい、2人とも礼儀正しい子達ですね。お母様方もこちらへどうぞ」
奥へと案内される。前世でも教会に用が無いので、入った事も無いので新鮮だ。
通された先の部屋に、カルナ様の像が置かれている。
「このカードを持って、お母様と一緒に1組ずつお入り下さい」
「はい、有り難う御座います」
「アル!お姉ちゃんの私が、先に入るからね」
「レディーファーストだよ、どうぞ」
「まあ、アルちゃんたら。ありがと先に鑑定して貰うわ」
「アルったら、何処で覚えたのかしら」
「ふふふ、優しい子ですね」
2人は部屋に入っていく。
「それでは閉めさせて頂きます。中には悪用する人もいるから、他人へスキル情報は教えないで下さい」
「はい、個人情報ですもんね」
「ホントに何処で、覚えてくるのかしら」
その頃、先に入ったアニス親子は鑑定の最中だった。
アニス 人族
状態:幼女
SKILL
商人
「スキル1個しか無いね」
「昨晩からのはしゃいでたのに残念そうね?3歳頃はね1個、2個くらいしか無いものよ。これから沢山の経験で、何でも出来るようになるわよ」
不機嫌な顔のアニス達が、部屋から出て来たので母さんと部屋に入ることにした。
「アーちゃん、不機嫌になってるね」
「沢山スキルが有ると思ってたら、たぶん1個しか無かったんじゃないかしら?」
なるほど、どうせ後で聞いてくるので俺も隠しておこう。
アルトゥル 人族
状態:幼男
SKILL
鑑定 付与
「鑑定を持っていたから、色々と詳しかったのね」
「そうなんだよ、気になったらジッと見ると教えてくれるから」
まあでも実は…。
記憶 鑑定 付与 隠匿 体術 剣術
魔法 回復 錬金 錬成 魔力操作
睡眠学習で、面白そうなのは覚えたんだけどね。この世界には魔法があるから使って見たいし、旅にはあったほう便利だ。
部屋から出ると、アーちゃんが突撃して来た。
「アル、何個スキルあったの?」
「僕は2個かな」
「ずるい!」
ホントはもっとあるけど内緒だ。
「元々は1個だと思うよ、父さんから付与を習ったから覚えたと思うしね。アーちゃんもエレナさんから、料理とか習えば良いよ!アーちゃんの手料理食べてみたいからね」
「アルありがと。私もお母さんに教えて貰うから、最初に食べてね」
「うん」
グロいヘドロの塊で無ければ、たぶんきっと食べれると思う。
「じゃあ、早速今夜から手伝ってねアニス」
「ホントに良くまわる口ね、母さんはアルの将来が心配だわ」