13 盗賊
宝と言っても大した物は置いて無いな、剣をはじめとする武器防具。
宝石類は何処かの、商人や貴族から奪ったのだろうか?
予備の魔法の袋の方に、仕舞いこんで置くかな。うん?この矢鱈動き廻ってるのは誰だろう、ココは終わったので行って見るか。
洞窟内を歩く事数分、其処に居たのは1匹のスライムだ。
「唯のスライムか、この世界のこいつって害獣扱いだっけ?」
基本は何でも食べちゃうだけだし、ダンジョンでは掃除屋さんだね。
スルーで良いか、此処が綺麗なのはコイツが転がってるからだろうな。
突然地面が光だし、見た事無い魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣はスライムを包み込み……消える。
しょーこちゃん、消えたよ。
う〜ん…何処かに転移したっぽいけど、この世界のどこにも出て来て無いのよね。ほんとに消えたっぽいよ?
まぁ。しょーこちゃんで解ん無いじゃ、俺じゃ増々解らんな。
他は何も無さそうなので、5人固まってる場所へ行こうか。
鉄格子の中に、5人の女性と少女が見える。
「助けに来ました」
「子供?誰か来る前に逃げて!助けを呼んで来て」
どうやら迷子だと思われたらしい…。
プークスクス!
あー…早く大人に成りたい。
アルはチビっ子が可愛いからそのままで良いんだよ!クスクス。
お姉さん方にカード見せて、冒険者ランクDと商業ランクCと年齢で驚かれる。
「今開けますね。錬成」
グニャっと、鉄格子を曲げて出口を作る。
5人は出て来て、お礼を言ってくれる。ここまで関わったので、出来る限りはするつもりだ。
「もう少しで、迎えが来ると思うので外で待ちましょう」
幸い捕まったばかりで、酷い扱いは受けて無いらしいが男達は殺されたらしい。
奴隷として売るつもりなので、手を出さなかったのか定かでは無いが幸運だと思う。
光が見える、出口だ。まだ、迎えは来ていないので暫く待つか。
温かいスープでも作るかな。魔導コンロに火を付け、鍋を用意する。そこに魔法で水を入れる。
出汁とか創りたいな、海で色々仕入れたい!この国は内陸だから遠いよ。いつか行って、食生活も変えたいな。基本的この世界は薄味だ、折角若返ったからもっと濃い物も食べたいな。
因みに女性人には、魔法の袋に興味津々だ。滅多に見れ無いそうだしね。完成したので器に容れて渡す。自分ではイマイチだが、女性人には好評だ。
「おーい!」
スープを啜ってると、そんな声が微かに届く。マップで確認すると数人の護衛と馬車だ、迎えの到着だ。
「よう!久しぶりだな」
確か試験でお世話になった、理想郷の壁のアタッカーさんだ。
「皆さんが、護衛依頼を受けたのですね」
「騎士の1人がギルドに知らせてくれてな、小さな子に助けられアジトに乗り込んで行ったと聞かされてな。多分アル坊の事だと思ったよ」
「ディン!先に行っちゃうなんて酷いよ〜」
「久しぶりだ」
メンバー勢揃いか、他にも数名知らない顔が居るがギルドで見かけたような気がする。
「呑気にメシを食ってるてことは、もう終わりか?」
「ええ、盗賊は全滅させました」
「その歳で、人が殺せることに驚くぜ」
「モンスターと一緒ですよ、馬車に女性達を乗せて帰りますか?」
「待て待て!盗賊のお宝は見つけた奴の物なんだぞ」
「あ〜なるほど、それなら全部僕が回収しましたよ」
そう言って魔法の袋を見せる。顔が明らかに残念がってるな。
馬車はゆっくり、商業都市ベイリアルを目指す。道中暇なので少し聞いてみる。
「魔法使いのお姉さん、少し聞きたい事があるのですが?」
「そう言えば名前教えて無かったわ、私はモレナよ。私と、遊びたくなったの?」
それはステキな提案だが如何せん、まだナニの成長も済んでない…無念。
アルの貞操はワタシがまもる〜!いえその前に頂いちゃえば良いんだ!
だからそっちじゃ出来ないだろ…
魔法の袋から取り出したローブを見せる。
「このローブの持主は判りませんか?」
「コレって、ロサナのローブかも!私の双子の妹だよ、近々王都から遊びに来るって言ってたしね」
「盗賊の頭領が着てました」
「ウソ、…ヤダ、ナンデ?」
歩みを止め、その場で崩れ座り込む。
「どうした?」
ディンさんにローブの事を詳しく説明をする。
「クソ!モレナは、楽しみに待ってたのによ」
「待って下さい!そのローブを着て居た人は、2日前に街の奴隷市場に連れて行かれてました。魔法使いの奴隷は高く売れたと言ってましたから」
しょうこちゃん奴隷市場に、モレナって言う人居る?
仕方ないか、今回は同じ女として共感は持てるからね。調べるわ………居るね!ラング商会の奴隷部門で、明日オークションが開かれるよ。そこで出品だってさ!
ありがと、助かるよ。
「街に着いたら、奴隷市場で探しましょう」
「だけどよ、一回奴隷に落ちちまうと物扱いだ!それが非合法だとしても」
「では、合法に買取しますよ」
「金貨10枚以上するぞ!クソ、借金してでも買取ってやる!」
「大丈夫ですよ、僕が買取ますから。資金はここの盗賊から頂きましたからね」
人助けの資金なら惜しくは無い、犯罪や借金奴隷とは違い非合法なら尚さらだ。
「アルくん、ありがとう〜お姉さんアルくんのためなら何でもしちゃうよぅ」
「では涙を拭いて、いつもの可愛い笑顔を魅せて下さいね」
よけい泣かせちゃった。