10 冒険
「父さん、母さん、今日は冒険者登録を済ませました」
晩御飯の最中、そんな一言を喋る。
「あら、そうなのね」
落ち着いてるね母さん。
「ゴホ、ゴホ!」
落ち着け父よ!盛大にむせ返ってる。
鍛錬の為に冒険者ギルドに向かって序でに登録をした事や、記憶の事は少しぼかし回復の事も伝えた。
「ですので、ゲドラ教会の勧誘があるかも知れないので」
「追い返せば良いのね」
「いきなりDランクか、凄えな!」
両親とも、話が通じて何よりだ。
翌朝、朝食を済ませ隣のアーちゃんの武具店へお邪魔する。
「おはよう御座います」
「おはよう。今日は珍しいな、何かあったのか?」
「こういった腕に着ける盾は無いですか?」
ランタン、スパイクシールドの絵を見せる。スパイクはあの緑色のロボが、装備してるL字の盾では無いよ。
「う〜ん。似たような物はこれかな?篭手に近いのとアルが装備したら盾っぽくならないかい?」
確かに…まだ成長期すら済んでないのでオーダーメイドは勿体ないので、コレのサイズ調整をしよう。
「コレと革製の胸当てと、革のブーツをお願いします」
「サイズ調整はサービスするけど、全部で銀貨25枚だけど払えるかい?」
コンロの利益もあるから、問題なく支払う。
「今日は街の外へ出るのでアーちゃんに遊べないと伝えて下さい」
「え!危ないよ、確かにアルは強いと思うが」
カードを見せて納得してもらう。
「Dランクか、確かに大丈夫だが危ない事はしないようにね」
「はい」
サイズ調整が終わったので、街の正門に向けて歩き出す。余りこちらに来て無いので変わった風景を眺めながら進む。
正門には、入って来る者で賑わってる。出てく者もいるが比率は7:3くらいかな。冒険者の出入り口は小さいがあっちへ向かう。
「君、親御さんは?」
やっぱり止められるよね、装備は軽装だしね。カードを見せると驚かれるが、もう慣れた早く大きくなりたいな。
街から街道を進み、暫く経つと森が見える。今日はここで訓練を兼ねての初めての冒険だ。
比較的、森の浅い部分はモンスターは出て来ないので少し奥へと進む。
「しまった!探索と地図のスキルを覚えて無いや」
しょーこちゃん、直ぐ覚えれる?
都合のいい時だけ呼ばれて、終わったら捨てるのね!
そんなヤリ捨てたみたいに言われても…。寧ろチェンジのチャンスか!
い〜や〜だ〜!別れてあげない!っと小芝居は、終わって本題の件はと。
突然素に戻るなよ。
探索は直ぐ出来るけど、地図は少し時間掛かるよ。
探索だけ宜しくね!
頭に流すね…………はいお終い。アルが死んじゃうと、私が暇だから気おつけてね。
理由は暇潰しかよ。まあ助かったよ、またね。
気を取り直して、先ずは探索だ。
このまま前方に3匹居るな、そこへ向かうか。
コボルト3匹発見っと、魔力は温存したいので不意打ちかな。
こっそり近づき、一番威力の高い突き刺しを背に突き立てた。
気付かれたので、2匹目を斬りつけ牽制したが3匹目が持っている棍棒で殴り掛かる。
それをスパイクシールドで反らし、怯んだスキに剣を喉元へ斬りつける。
2匹目終了、…と少しホッとしてると。
アル後ろ!
残ってた2匹目が、棍棒を振りかざしてた。咄嗟にシールドで防御したが、左腕が痺れた。油断した、最後まで気を抜かない様にしないと。
助かったよ、しょーこちゃん。
もう!油断しないようにね。
身体強化で素早く移動し、すれ違いに斬る。これで、全部討伐っと。索敵するが、周囲にモンスターの反応無し。
「ふー、油断禁物だな」
解体は…出来ないので、全部閉まっちゃえ!ギルドでやってもらおう。
その後、一軒分くらい狩ったのでそろそろ街に戻るかなと街道を目指す。
路が見えたので、歩いて帰るか。移動手段は欲しいな、でも体力も付けたいからここは自重しよう。
乗り物は造ろうと思えばイケると思うけどね、魔石と付与があれば出来るけどまだ辞めとこう。
歩いて帰路につくが、馬車が襲われるイベントも無く街へ到着。都合良く発動しないもんだよね。
冒険者ギルドに入ると、早速絡まれた!やっぱりテンプレは有るんだ!
「おい、そこのチビ。その魔法の袋を寄越せ!」
「何で見ず知らずのオジサンに、上げないといけないのですか?」
「俺は、まだ24だ!Eランクのガバル様が有意義に使ってやるからよ」
「僕から見ればオジサンですね。欲しいなら金貨100枚で売りますよ」
「ぼったくりか!イイから寄こせ!」
話に成らないので、スルーしてカウンターへ歩き出す。
「寄こせと、言っただろうが!」
殴り掛かって来たので、かわして足を引っ掛ける。勿論身体強化で足を強化してね、じゃないと体重差で俺も転けたら決まらないもん。
「酔ってるから、足元が覚束ないんですよ。それに奪っても、所有者登録してありますから使えないよ」
「テメー、兄貴に何しやがる!」
取巻き3人が囲む、イベントは良いけど面倒くさいね。
基本ギルドは冒険者同士の争いは干渉しないけど、武器を手にしたら警備隊案件だよ。
「武器を構えるなら、手加減しませんよ」
身体強化はするけど、魔法や武器は使わないよ。
取巻きAが、ナイフで刺しにきたので素早くしゃがみ込む。両腕でナイフを持ってる肘関節を掴み自分の肩へ引っ張る。ボキっと関節を砕く。
取巻きCが剣を構えて近くに居たので、左の膝へ垂直に蹴り込み砕く。これで、2人ほど無力化した。ガバルが手斧を投げてきた。
避けると、後ろの野次馬に当たるので…よく見て掴み取る。脚に返してあげると、太ももに当たり血を撒き散らす。
取巻きBは戦意喪失して、座り込んだので終了かな?
「まだ、やりますか?それとも、その千切れかけの脚、切り落としましょうか?」
「わ、悪かった!ヤメテくれ!」
「手を出したのも、殺そうとしたのもそちらが先ですよね?都合良すぎませんか?」
「何を騒いでる!」
ギルマスの登場だ。前回もこの登場の仕方だったかな?
受付嬢が説明を行ってる。でも早くしないと出血死しちゃうよ。
「済まなかったな、アルトゥルくん。彼等は度々問題ばかりだ起こすので何度も注意はしてるのだが、今回は無理だな」
ギルドも簡単に見限るとかはしないんだな。
「彼等は警備隊に引き渡し、ギルドを除名処分にする」
説明によると、犯罪奴隷となり強制労働をさせられるらしい。俺も気をつけよう。
「アルトゥルくん、今日はどうされました?」
「モンスターの引取をお願いします」
「ではこちらにお願いしますね」
「え〜と、解体して無いので此処へ出しても良いですか?」
「解体場へ案内しますよ、どの部位が貴重か知らないんですね?解体料金を、頂きますがよろしいですか?」
「はい」
プロに任せよう!それがイイや。
案内されると、エプロンに返り血が付いてるゴツいおっさんを紹介される。
「解体場を仕切ってるバラネフだ!」
「新人冒険者のアルトゥルです」
「早速、獲物を見せてくれ」
ゴブリン☓15、ゴブリンリーダー☓3、ゴブリンウィザード☓4、ゴブリンアーチャー☓3、コボルト☓9、コボルトリーダー☓1、オーク6です。
「な!お前さんソロだろ?」
「はい」
「アルトゥルくんカードを見せて下さい!」
カードには履歴が残るらしい、かなりハイテクだな。これって異世界人の発明じゃないかな?
「あってます!ソロなんですから無茶しないで下さい!」
「ですから控え目に狩りましたよ」
「ガーハハハ!面白い坊主だ!オークの肉以外は食えないぞ。ゴブリンは臭くて不味くて食えん!コボルトは筋だらけだがオークは美味いぞ!」
「魔石は店で使うので、オークの肉は半分は持ち帰り半分はギルドに卸しますね」
「次は、ゴブリンやコボルトは魔石だけ取って帰りな」
「解りました」
「今日はもう遅い、明日にでも取りにきな。保存費用は貰うが、解体料金を摂っても大分黒字だ」
と言う事なので、明日また行くかな。明日はアーちゃんと遊ばないと機嫌が悪くなるからのんびり遊ぼうかな。