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君の海を泳ぐ

作者: ゆき


君を想って泳ぐ。

夜の海をただ宛もなく泳ぐ。







「イヴさあーん!イヴさんっお願いしますっ!」


チャラついた声が耳に届いたら

スイッチが入る。


あたしは可愛い、誰より可愛い、

暗示かけながらピンヒール鳴らして今日も

真面目に水商売。



「はじめまして!イヴです♡」

いっつも思う、

あたしの高い声どっから出てんだろマジで。


「えー!可愛いじゃん!イヴちゃん!

オジサン40過ぎてるけどいい?」

いや、普通にナシ、てか無理。


「やだあうれしいー!興奮したら喉乾いちゃった

1杯頂いてもいいですかあ?」

クソ頭痛い。


毎日がこんなちょろかったら良いけど

まあ、そんなわけもなく。

ディスられまくりの日がほとんどで

客の取った取られたは日常茶飯事。

社会人の、“お疲れ様です”並に軽い“愛してる”が

飛び交うこの城があたしの居場所であり職場である。

つまりは超大変な仕事なわけ。



しかも大抵、可愛いねって言ってきたら

それは抱かせてくれって意味。


あ、それはあたしの持論だから。

他の嬢はどー思ってんのか、なんて知らないけど

まあそんなもん。









でもむしろ

そんなもんでいい

本気の熱量とかもう忘れちゃったし


重いと嬉しいって思うのは、月末に渡される封筒だけ。



そうは言っても何だかんだできっと

無駄に期待しなくて済むところとか

絶望しちゃうほどは本気になれないところが

気に入っててもう1年も勤めれちゃってるんだよなあー。


ここは確かに苦しいけど

あの頃の君と程よく繋がれる場所だから

嫌いじゃないんだ




「あ、売り上げ伸びてる。」


閉店後、張り出される数字達があたしを

頑張ったって褒めてくれる。




ねえ、みてる?

昔さぁ

コミュ障なお前には俺がいなきゃダメだな!なんて

嬉しそうに笑ってたけど

案外そうでも無かったよ。


全然付き合ってあげれなかった酒も

今じゃこんなに呑めちゃうよ。


肌出しすぎって

好きな服着させてくれなかったけど

あの時よりもっと出してんだから、不機嫌になって電話くらいかけてきてもいーのに。



なんて。


「さて、帰りますか。」

ふとした事で、言ってやりたい事とか

あん時はこうだったなとか思い出して

泣きそうになることもしょっちゅうだけど。


大丈夫

君が居なくてもあたしは誰かに、

好いて好かれて、ちゃんと生きてる。


まだLINEブロックできてないし

Twitterも見ちゃうけど

それでも、みんなのイヴでいられるように

ここで生きてく。


あ…でも、さすがに

アイコンの嫁と子供と犬、写ってるやつ

あれは変えて欲しいわ


なーんかイライラしてきたから

明日の客の同伴は高い肉たべさせてもーらおっ。



フラフラな足取りで店を出て

ゆらゆら送迎車に揺られ

今夜もいつかの幸せを夢見て眠る

明日のあたしが溺れないようにーーーー。
















愚痴みたいになってしまったけど、

何が伝えたいかというと


やっぱり意地というものがあって

外からは強く見せたい見栄の部分を持ってるけど

中は意外と息継ぎできんほど苦しんでることもある。というのを

表現したかった作品です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] その世界を知らなくても伝わる描き方 切ないところ、皮肉、現実、心情、短い話の中に全てしっかり詰め込まれると思いました
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