案内されたのはプレイ部屋!?理性よ保て!
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「よし、今夜はこのラブリーなホテルでお泊り会よ! 愛理、ついてきて!」
「はいっ」
ホテルの自動ドアへ大きな第一歩を踏みしめご来店。店内は薄暗くありながら、プロジェクターのプラネタリウムがセッティングされており、満天夜空の星たちが私たちを迎え入れた。ラブホはもっとこう、ねっちょりとした空気が流れているイメージだったけど、案外洒落ていることに驚いた。しかもフロントも無人で自分たちで部屋を選べるタッチパネル。その横には部屋に直通のエレベーター。プライバシー的に上手いカラクリだと思う。
「部屋は最上階だってよ」
「最上階!? それって街の夜景を楽しめる部屋ってことじゃない!」
「夜景が見えるって決まったわけじゃねぇから」
「いいえ、絶対にそうよ! 予感がそう言ってる!」
最上階、スイート、夜景、いい雰囲気、桃尻ルート。う~ん、この流れ最高っ!!
あれ? そういや今日はお揃いの新しい下着を買ったはず。それをお風呂上りに着用するでしょ。んで、下着がお揃いって事実を知るのは私と愛理の二人だけ――? どうしよう、ムラムラする。性的興奮が止まらない……っ! たのむ、オラの体よ、もってくれ!!(野沢雅子ボイス)
これだけ可愛いポップな外装をしているのだからホテルの部屋もさぞ女子の胸が躍りそうなものになっているはず。しかしその期待は最上階へ着いた途端、あっけなく崩壊することとなる。
「え……」
三咲が予約した部屋は絶景ならぬ絶頂を楽しめるバリバリSMプレイ部屋だった。
人の手足を固定できるX型の磔と微妙に股が切れちゃうんじゃないかってぐらいに尖った三角木馬壁が部屋の中央に置かれている。それと壁には鞭と先端がピンク色の猫じゃらしに手錠に目隠し等といったお仕置きグッズがどうぞご自由にといった感じにズラリ。もちろんソファーにテレビにベッドもあるが、拘束グッズの存在感があまりにも大きいので霞んでいる。
楽しんだもん勝ちとはいったけどさ……。SMプレイをする部屋をいざ前にすると色々とエグい。ここでたくさんの人がプレイを楽しんだと思うと……なんともいえない気持ちになる。照明を最大にしても足元が見えにくいレベル。言い換えるとエロスの漂う薄暗さ。壁紙と家具も赤黒で統一してあるからか、アダルティで異様な空間がひしひしと伝わる。
「三咲さぁ……恵もなかなかだったけど、あんたも意外とドジっ子属性なのね。私、こう見えて結構引いてるわよ」
「ち、ちげぇよ! これはたまたま! 空いてる部屋があるって電話の奴が言ってたからここになったんだよ!!」
レジ袋をぶんぶん振り回す三咲のテンパり様に苦笑い。本気でガチのやつってことだけは分かった。
「すごい、この部屋は何かのコンセプトホテルみたいですね! わっ! このスティッキ、魔法使いみたいで可愛いかも……」
愛理、それ魔法のステッキちゃう。お尻の穴に入れる凸凹ビーズや。
「そうね、すんごい可愛い」
「ここに私たちが泊まるのもなんだか申し訳ないですよね。小さな子とか喜びそうなのに」
逆よ逆。子どもを作る場所にもなりうるのよ。無垢でよかったと受けとめるべきなんでしょうけど変な部屋だと疑う動作も一切見せないからちょっと心配…。ポジティブにいけば、ラブホと知られる心配がないって負担が減るからいいのかもだけどさ。
「あっ! ねぇねぇ、愛理」
「なんですか?」
「さ、先にシャワー浴びて来いよ……」
「? では、お言葉に甘えていってきます」
ふふふ、これこれ。一度言ってみたかったのよね!
「おい」
「なに? 急に後ろに立たないでくれない?」
「お前が愛理に手を出す可能性がゼロとは到底思えねぇ。だから俺はお前が変なことしたら即締め上げて恵たちの前に突き出す」
人のことは言えたものではないが、相変わらず神経を逆撫でしそうな物言いの三咲。前髪の間から見える額からは青筋がビンビンに張っていた。この怒り様、かなり信用されていないらしい。言われなくとも手出しなんかしない。……理性が保っていたらの話だけど。




