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悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛します。  作者: 273
ルート4 憧れのあの子とホテルに行こう!
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どうしても男を倒したい!最大の悪あがき!

 この「ぐちょぐちょメモリアル」の人気は四人のイケメン兄弟――なんだけど、その人気の理由のひとつとして顔採用ではない、ガチのイケメンボイスを起用してること。


 しかも中でも金持三咲の声優は、超イケメンボイスで有名でその声を耳にした女性は下半身から涎を垂らすとかなんとか……。私は男キャラに興味ないから気にはしていなかったけど、ノーマルな愛理がそんな美声を聞いたら膣キュンするしかないじゃない!


 勝ち目のない状況に血の気が引いていった。そんなことになっていることは知らない二人は仲良さげに会話を進めていく。元はといえば男をカラオケデートに誘ってしまったことが一番ダメだった。今まで散々あった自分の馬鹿さ加減にいい加減呆れる余裕すらない。曲を選んでいる三咲に今になって歌うなって言うのも場の空気を悪くしてしまう。せめて、せめて何か、もうこの際悪あがきでもいい。とにかく、三咲が歌うのをを邪魔したい、蹴落としたい……っ!! 


 頭の中にあるのは抹殺のみ。さっきまでのどうでもいい思考とは真逆のことばかり考えること数十秒、椅子から立ち上がり二人に向けてこう言った。


「ねぇ、喉乾かない? 私、飲み物持ってくるわね」


「あっ、そういえばドリンクバーまだでしたね。じゃあ私も」


「ううん、私が二人の分も取ってくるから大丈夫。ゆっくりしてて」


 にこやかな笑みを残して部屋を後にした私は、大急ぎでジュースを取りに行く。


 下剤でも入れるの? と思ったあなた、惜しい! 下剤は家に置いて来ちゃった。だけど心配ご無用! 私には立派な手と口があるの。だったら、阻止するためにとことん行動に移すのみ。それが地味な思い付きでも、悪あがきでも、金持三咲との恋愛フラグを折るためには色んなことを試すしかない――。


「お待たせ! 愛理はリンゴジュースでよかった?」


「はい、ありがとうございます」


「私がオレンジジュースで……三咲は、コーラでいいわよね?」


「なんでジョッキなんだよ」


「ジョッキのグラスがあったからよ。別にいいじゃない。男の子なんだし」


「飲み会じゃねぇんだから普通のにしろ」


 悪態をつきながらも、よっぽど喉が渇いていたのかグビグビとコーラを喉に流し込んでいく。それを隣で確認すると、


「あー……あっ、愛理はさ! 最近気になる芸能人とかいる?」


 笑いをこみ上げてくるのを防ぐようにわざとらしく愛理に話しかけた。


 三咲が飲んでいるのは一見コーラだが、中身はコーラではない。カラオケに不向きな喉の油を少なくするウーロン茶と、ゲップの出やすいコーラを調合したドリンク。人にジロジロ見られながらもドリンクバーでちょっとずつ味見した甲斐があった。上手くいけば歌っている途中に下品ゲップを出す作戦。めちゃくちゃ地味で陰湿な攻撃なんでしょうけど別にいい。


 仮に成功したとしてもゲップだけではインパクトが薄い。イケメンボイスとやらがそんなことぐらいで霞むにはまだまだ。声を妨げるためにスピーカーからたまに出るキーンという音、要はハウリングを起こすため、三咲をさりげなくスピーカーの真下に誘導させておく。ハウリングはスピーカー付近で起こりやすい。


 そしてハウリングの原因として音量も上げられるから歌っている間に曲を探すふりをしてデンモクでマイクエコーの音量を爆上げしてやる。全てが上手くいけば、打倒できなくとも印象を薄くさせることができる。神様、お願い! 私に勝利の女神を――


「クソ尻、次歌えよ。俺はその次でいい」


「あれれ、まさか歌うのが怖くなっちったカナ??」


「ちげぇよ。とっとと先に歌え」


「はいはい。じゃあジュースでも飲んで発声練習しておくことね」


「チッ、うっせぇな」


 なんにも知らない馬鹿は不審がることなく調合コーラ飲みまくる。ゲップが出るのは五分後ぐらい? こっちが歌い終わるまで十分喉を潤すことね。


「じゃあ私はソロで翼をくださいを歌いまーす! 愛理のために歌っちゃうよ!」


「桃尻さん頑張ってください」


 応援されたことにめちゃくちゃ張り切った私は、座りながらではなく立って後ろの方へと移動。宴会できそうな大部屋なだけあって軽くダンスもできる。まるで人気アイドルになった気分。翼をくださいのイントロが流れ出し、最高の爪痕を残そうと肩を軽く揺らしたとき、お腹から違和感の塊が胸辺りに浮かび上がってきた。


 この違和感の名を知っている。――ゲップだ。



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