「豆腐の角に頭をぶつけて死ね」は生温い!打倒ツンデレ男!
それから私たちは駅前のカラオケ店に行くことになった。興奮と期待でついスキップをしながらショッピングモールを出たところで、バッタリと三咲に遭遇したのだった。
「げっ、最悪」
内側に留めておけばよかったが、これまたつい本音がボロン。
あいつはもう帰るのか、それともまたどこかで時間を潰すのか。つま先の角度的に、駅の方を歩こうとしている。無視をしたかったが、助けてもらった愛理はそうもいかない。三咲を見つけた瞬間にチョコチョコと駆け寄っていき、
「三咲くん、さっきは助けてくれてありがとう。もしかして待っててくれたの?」
「別に。ゲーセンで時間潰してただけ」
んま~、せっかくヒロインがお礼してるってのにスマホ操作しながら聞く? ったく、これだからツンデレ系は嫌なのよ!
「あら、だったら一刻も早くおうちに帰ったほうがいいんじゃない? 雅人が指しゃぶりして待ってるわよ、きっと!」
「黙れクソ尻。――おい、愛理」
と、今まで画面とにらめっこしていた三咲が目を離し、その視線を愛理へと真っすぐ送る。
「大丈夫だったのかよ」
「へ?」
「いやだから、色々と……嫌な目にあっただろ……」
「うん、それはもう大丈夫。桃尻さんと三咲くんが助けてくれたから。そうえいば、お礼言うの忘れてたね。本当にありがとう」
「別に。そんな大したことしてねぇから」
「そんなことない。すごくかっこよかったよ!」
「ば……大袈裟だろ」
愛理がかっこよかったと伝えた直後、三咲は顔を下に向けて鼻の下を掻く。あれはどう見ても照れ隠し。今すぐにでも二人を引き剥がしたかったけれど、二人を見るとちょっとヤバめな雰囲気ではないかと恋愛フラグセンサーがピコンと反応した――というよりも、臭う!
「ぐちょメモ」のイベントでも愛理が輩に絡まれるところを三咲が助けるというイベントがある。それがきっかけで二人の男女関係の意識が芽生えるきっかけにもなっていた。だからこのフラグに染まりそうなきっかけを易々と見過ごすわけにはいかない! そう考えると愛理も三咲を異性として見ているんじゃないかと不安がムクムク膨らんで……うーっ、吐きそう……っ!
こんな気分のままカラオケに行っても楽しめるわけがない。こんな選択をしたくなかったけど、愛理の気を少しでも引くためならこう言い出すしかない!
私は三咲の真後ろに立って、小さく伝言するかのように囁く。
「三咲、あんたも今からカラオケに来なさい」
「は? なんでだよ」
「愛理は私にもかっこよかったって言ってくれたのよ。あの子にとって、かっこいい存在は二人も必要なければ、いらないの。そして今みたいな恋愛フラグを見せつけられたら、もう戦争じゃない」
「意味分かんねぇよ」
「どっちにしろあんたに拒否権はないから。……ねぇ愛理! 三咲もカラオケに行くって!」
「わあっ、本当!? 三咲くんの歌声、聞いたことないから楽しみ!」
「はあ!? 俺行くとか一言も――」
「三咲くんは普段どんな音楽聞いてるの? 色々興味あるかもなんて、あはは」
「う……っ!」
ぷっ、ツンデレってヒロインにはめちゃくちゃ雑魚い~! 笑顔を振りまく愛理に「行かない」と言えるわけがないって顔をしてやんの。まあ、それでこそ「ぐちょメモ」の男よ。
打倒、金持三咲。あいつよりかっこいい見せ場作って、愛理と結ばれてやるわ……っ!




