世の中の不平等!ピンチのときこそイケメンが際立つ説!
愛理を不安にさせた上に、下着の盗撮まで? この男――死ね。そう、心の中で思ったなら、その時既に行動は終わっていた。人の目を気にする余裕もないまま、声をわめき散らして男へと詰め寄っていく。
「ちょっとあんた! なにしてんのよ! 今スカートの中にカメラ向けていたでしょ!? 言い訳しても無駄なんだからね!」
いきなり怒号を飛ばされた男はその場で大きく跳ね上がって、
「は、ははあ? するわけないだろっ、そんなことっぉ! 証拠があんのか証拠がっ、まったくこれだから女はっ、フゴッ!」
豚っぽい鼻音と否定を早口で言いまくる。はい、嘘乙。ペラペラとよくもまあ噛まずに言えたもの。しらを切って上手いこと逃げようったってそうかいかない。いや、いかせない。愛理の被害は私の被害。今からこの男をボコボコの再起不能にする。だから見ててね、愛理。私に惚れても全然オッケーだから。
「あんたがしてないって言っても、私とこの子はあんたの怪しい動きするのを見たんだけど? それに無実だってんなら、その携帯の中身見せなさい」
「しょ、しょんなの! プライバシーの侵害だろう、がっ!」
「あっそ。じゃあそこに防犯カメラあるみたいだし、それ見て判断するしかないわね。警備員呼ぶから逃げんじゃないわよ」
「な、な……大袈裟だろ……」
防犯カメラ、警備員のワードにどんどん青くなる男。さっきまでの勢いは半減していったかと思えば次の瞬間、担いでいたリュックの中からマジックテープの財布を取り出して一万円札を何枚か私と愛理にナイフを突き立てるかのように差し出してから、
「ほら……こっ、これでいいんだろ!? こっちだってこんなことぐらいで警察呼ばれたらたまったもんじゃねぇよ! 仮に撮っていたとしても、そんな格好してる方が悪いんだろ!」
プッツーン、久々に堪忍袋の緒が切れる音がした。
「はああぁー?! あんたそれマジで言ってんの!? あっ、でもなんか納得できるかも! その見た目に言動だと、異性と関わる機会ないっていうか、モテそうにないもんね!」
「な、んだと~……っ」
男は頭に血が上ったのか、拳を振り上げた。
「え、ちょ! 暴力反対!」
「うるせえ!」
突として起こる暴力行為に愛理と周りにいる人たちの金切り声がワッと起こる。正直、さんざん煽っておきながらここまでヒートアップするとは思っていなかった。愛理が絡むと全てが盲目になってしまう性格に学習しろと呆れの次に、背筋が凍るほどの恐怖の波がやってきた。
やばいっ、避けきれない! このまま顔面クリーンヒットする! ……ん? 痛く、ない……というか、ぶたれていない?
「なんなの?」
そーっと瞼を開いて前にいる男の方を見ると、そこには三咲が男の腕を掴んで間一髪で止めに入っていたのだ。持前の整った美貌と行動の勇敢さが際立ち、近くにいた人たちからは歓声が微かに沸き上がった。それも主に女性から。




