サイコパスは突然に…恐怖の未解ケツ事件!
次回から新章になります。
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「それが桃尻くんの座薬かい?」
愛理の持っている座薬と私の肛門を交互に見つめる。そう、まるで的に矢を射るときみたく。狙いを定めている。確信した。抜け駆けで座薬ルートにもっていこうとした件にお怒りモード。恵は愛理に代わって私に座薬をぶち込もうとしている気だ。肛門の初開通は愛理じゃなく、金持兄弟で一番のサイコパス。想像もできない光景に寒気が走った。
「愛理くんは慣れていないだろうし、僕がやるよ。貸してごらん」
「えっ? あ、はい」
まずい、否定文を入れるのが遅れた。逆に愛理は一歩二歩と私から遠ざかってオロオロするばかり。座薬は恵の手に渡ってしまったのだ。初めてを奪われてしまうのだけは絶対に阻止せねば!
「ちょっと先輩、いきなり女子の部屋に上がりこんで座薬を入れるとか変態にもほどがありませんか? なんだかもう具合も良くなったので今日のところは帰ってください! 座薬は後で私が入れますので!」
座薬を待つポーズから正座へチェンジ。絶対に入れさせない強気で睨み返し、自分なりの威嚇を現す。……が、そんなことで怯んだり、曲げないのがサイコパス恵である。私の言い分に返事はなく、爽やかな笑みをしながら私のいるベッドへ詰め寄ってきたと思えば、背骨を恐ろしく早い手刀で叩きつけて無理やりうつ伏せへとさせられた。こっちがどんなに力いっぱい込めようとも、びくともしない。
まずいまずいまずいまずいまずい……っ!
「や、やめてくだしゃい! 私の初めては愛理がいいんでしゅうう!」
鼻から水をダム並みに放出させ、汚い面を恥じることなく懇願。しかし恵は器用に片手で座薬を開封させていた。こんなときに限ってパジャマもワンピースタイプで下をめくればもう下着。そして一枚の布生地すら難なく突破させられ、穴と薬は仲良く隣り合わせ。相手が人差し指で薬を押せば、体内に放出されるであろう。マジで発射する五秒前。
「ひっ!」
そんな中で愛理の姿は扉付近までいっており、仰天や物恐ろしさとも受け取れる金切り声をあげていた。
「大丈夫。痛いのは最初だけださ。言っただろう? 雅人の座薬も僕がやっていたと。それにあの日のことを思い出してごらん。僕たちは阿吽の呼吸で息ピッタリだったじゃないか」
「無理無理無理無理! やだ、助けて愛理ぃ!! あっ、でもやっぱり見ないでぇ!! 若林!! こいつ出禁!! サイコパスにやられる!! せめて! せめてローション使って!」
「挿れるよ」
「その漢字やめ……アーッ!」
その日、桃尻家の広い屋敷には一人娘の断末魔が走った。魂の抜けた女子生徒と礼儀正しく美しい顔の男子生徒が帰った後、不信と心配に思った使用人たちが娘の部屋を見に行ったところ、尻を半分に出した娘がミイラ顔負けに干からびた状態で発見されたという。この部屋で一体何が起きたのか追求する者はおらず、後にそれは使用人たちの間で「未解ケツ事件」として四十九日ほど語り継がれた――。




