さあヒロイン、レッツ座薬!
タイトルを変えてみました。
もしかしたらまた元に戻すかもしれないので、アドバイスとかあったらお願いします。
となれば、愛理はどうしてそうなるといった目をかっ開き、唇は合唱を歌うときみたく指三本が入りる大きな形をして驚愕。
「へっ? ……えぇええ!? も、桃尻さん何を言って……む、無理無理! 無理です! 座薬を入れるだなんてそんなこと……っ」
手と首がもげんばかりの全力で振って拒否られた。この答えは予測していたとはいえ、こんなにも否定されればチクリと痛む。本来ならばここで「冗談よ、うふふっ」なんて誤魔化しをいれて茶化して終了させていただろう。しかし、もうどうにも止まらない。火照りすぎた私の辞書に「心のブレーキ」という文字は消え去っていた。
「いいの、やって。これは私からのお願い」
尻をぷりんっと突き上げ、もっと前に突き出して話を続けた。
「あなたは今、消えてしまいたいほどの羞恥心でいっぱいなはずよ。だからこそ、私に座薬を入れておあいこにしましょう? 何を言っているのか自分でも分からないけど、これであなたの気持ちが少しでも沈静する行動に繋がるなら――私、死んでもいいわ」
月が綺麗ですねの返しで有名な「死んでもいいわ」をまさかこんな下品なシチュエーションで使う羽目になるなんてね。
顔には出さずに胸の内でフッと鼻で笑っていると、後ろから聞きとるのがやっとの小さな声が返ってきた。
「そこまで言うのなら……やります」
さすが我がヒロイン。最後の四文字は、これから行うプレイに真っ当に向き合い、強く決心した言い方だった。
そうして強張った手先で台の上にある座薬に触れ、開封しようとしたところで部屋の扉がなんの前触れもなく、室内にいる私たちを注目させるほどの音を出して開いた。とにかく私は座薬を入れてもらう体勢を保ちつつ、首を精一杯後方に曲げ、顔半分で扉の方へ目線をやる。
んもう! 若林ったら、誰も入るなって言ったじゃないの!
一喝をしなきゃと喉まで出かかったが、それはすぐに胃の中へ戻される。なんせそこにいたのは金持家の長男、恵が制服姿でいたから。
「な、はっ!? なんであんたがここに……っ」
いい感じだった二人の空間に男が乱入。これには破天荒欲もおったまげのパニック。
「あっ、恵先輩も後から来るってこと言い忘れていました。ごめんなさい」
「なっ!?」
そりゃないよ愛理っ!
「ごめんね、桃尻くん。ノックもなしに部屋に入ったのは謝るよ。そして今の話は聞かせてもらったよ。座薬? いいね、僕は座薬を入れるのは得意なんだ」
にこやかな笑顔、敵意のない話し方。それでもツカツカとベッドに歩み寄ってくる恵の姿は悪魔にしか見えなかった。
私には分かる。こいつの腹の中はむちゃくちゃ激怒している。




