違う、そうじゃない。その名はTHE・薬!
皆さん今年はブクマ、感想、レビューありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
「そうそう! 林間学校のしおり、渡しておくわね。今日色々話があったのよ。あとこれは今日の授業ノート、汚い字かもしれないけどよかったら」
「こんなにたくさん大荷物じゃありませんでしたか?」
「うふふ、全っ然! それでね林間学校のことなんだけど――」
林間学校のしおりや学校の出来事、授業の進み具合など一通り話をする。しかし、ここで愛理の急変を感じとる。上半身は自力でしっかりと起きているものの、二の腕あたりが小刻みに動く……いや、ひどく痙攣している。たちまち呼吸も不安定となっていき、なんとか会話が成り立っても目の視点も合っていなかった。これはまずい。
「ね、ちょっと横になろうか」
落ち着いて声をかけるが、裏側では狂乱状態だった。でもここで私の感情を丸見えにさせてしまうのは絶対にNG。愛理にも混乱を招いてしまうから。急かさず、スローペースで背中から布団に重力を預けるように落としていく。頭部をぶつけることなく眠りにつける状態につけることができたのも束の間、力尽きた抜け殻のように瞼を閉じる。
「えっ、愛理!? 愛理、大丈夫!? ど、どうしよ! これって救急呼ぶやつ!?」
私は半泣きで話しかけてはオロオロとするばかり。こんなときだからこそ冷静に対処すべきなんでしょうけど、好きな子が死にそうなのを前にして正常でいる方が無理! 応急処置として冷えペタ? いや、応急処置にもなってないような……あーん、もっと知識とか色々つけてくるべきだった!
ヤンデレルートを持つ恵を呼ぶか、呼ばないか。究極の選択で迷い、動けずにいると目を閉じたままの愛理が「……薬」と小さな声で言った。
「薬? そっか、病院でもらった薬があるのね!」
薬だから近場に置いてあるはず……おっ、あったあった。テーブルの上に内用薬って書いてある白い袋発見。この中にある薬を飲ませれば、たちまち元気100%になるってわけね。
袋の中にある薬を取り出すと、ロケット型の錠剤。飲み込むには大きい薬。高熱のせいで受け答えがやっとの愛理だ。これをしっかりと飲ますには……最悪口移ししかない……!? そ、そんなの、ご褒美じゃないっ! でもでも、愛理が自分で飲めるかどうか確認はしておかなきゃ!
「寝ているのにごめんね。この薬飲めそう?」
「そ……れ……ざ……や……」
「えっ」
ほんの少し前までしっかりと答えていたのに、一文字出すのに絞り出すように唇を一生懸命動かしていたが、もはや呂律が回ってない。
もしものことかあったらどうしよう。恵の存在などとっくに忘れ、救急車をすぐに呼び出せるようにポケットにある携帯を握りしめながら、今は愛理が伝えたい言葉を聞き取ろうと耳を近くに寄せたところ――
「それ……はっ……座薬……なんで……す……っ」
愛理はハッハッと呼吸使いをしながら言った。
「ははーん、座薬ね! 座薬、座薬……は? ざさざざっ、ざや……THE・薬……座薬ぅー!?」
ここで桃尻エリカ版のWikipediaを見てみよう。「座薬」とは、普段出すことしか知らない肛門に逆方向から薬を入れることである。個人的な意見だけど座薬はよく効く。




