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悪役令嬢になったんで推し事としてヒロインを溺愛します。  作者: 273
ルート3  憧れのあの子を看病しよう!
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勝つのはどっち?ヤンデレルート進む男とヤンデレルートを回避したい女!

 なんてそんなわけないか。考えすぎだろうと水で流しかけようとしたとき、念のため恵が放った言葉をもう一度、頭でリピート。


「僕も愛理くんのいろんな顔が見たいと思ったことがあるよ」うんうん、分かる分かる。


「逆に僕だったら彼女が自分でも知らない一面を汲み取って導き出してあげたい」うーん、分からんでもない。


「そして戸惑いながらもその色に染めあげていきたい」……ちょっと待て! これよ、これ! やばいヤンデレサイコ臭がぷんぷんなんだけど! まさかこいつ、勝手に自分でヤンデレルートに向かう気? ゲームでは愛理が弱みを見せたことによって特殊な監禁ルートが発動されたけど、この世界では事の発端やイベントすらかすってないのに自らの意思でってことは……ガチのサイコパス男じゃないの――!?


 あまりにも強力なフラグに泡を吹き倒れそうだった。気を失いかけても、愛理の住むアパートには着々と進み、夕日に染まる二人の影が炎みたくゆらりと踊っている。それが恵の影だけどこか楽しげに感じてしまうと、自分一人が悩んでいることが馬鹿らしくなり、かつての対抗意識が爆上がり。


 そうよ、なんのための転生よ。これは桃尻エリカルート版のぐちょメモよ。こんな野郎に愛理を渡すもんか。愛理は私が守る。ヤンデレルートになんか絶対にさせないだから……っ!


「着いたよ」


 和やかな恵の声に興奮状態が覚め、平生の心境に戻る。いろいろ思っているうちに、もう着いちゃったのね。殺意まみれの面構えを元に戻さないと。


 愛理の住むアパートは少しこじんまりとしたアパート。オートロックではないものの、こまめに行われているエレベーターの定期点検の張り紙や、乱れのないゴミ起き場に死角すら見逃さない防犯カメラの数が備え付けられており、全体的に女性一人が住むには地味すぎず、古すぎずちょうどよい造りだった。


「愛理、起きてたらいいんですけど」


「寝ていたらドアノブに袋をかけておこうか」


「そうですね」


 そんな会話をしながら、玄関扉の横にあるチャイムを押した。私はこのとき、出ないでと強く願っていた。恵と愛理を会わせなければ今日はとりあえずヤンデレルートにならないと思っていたから。


 願いが届いたのか、チャイムを鳴らしても愛理が出る様子はない。部屋の中から物音ひとつすら聞こえないので、今は眠っていると判断した私たちはコンビニの袋をドアノブにかけようとしたら、


「あら? 鍵、されてない……?」


 不用心なことに鍵どころかチェーンもつけておらず、キィィ……といった甲高い音を出して扉がスローモーションで開けば、部屋の中まで丸見え。でも明かりついておらず、カーテンも閉め切ったままの暗闇。ワンルームなので一直線でそのまま自室があるのであろう。タンスやら洗濯機やら物があるのはなんとなく暗くても認識できた。それと、部屋の中心部に大きな物体が転がっていた。クッションだろうか。首をかしげ、目を凝らした私がその物体をクッションでもなければ、ぬいぐるみでもないことに気づいたのはすぐのこと。


 愛理は何も敷かれていないフローリングにぐったりと力尽きたように倒れていたのだ。そんなものを目撃したら普通ではいられない。すぐに顔色を変えて、発狂寸前のまま土足で家の中へお邪魔。


「愛理ぃぃぃーっ!!!?」


 いつからここに倒れていたのだろう。誰も看病しない彼女の孤独と苦しさを考えれば考えるほど胸が痛くなり、名前を呼んでは抱きかかえた。が、


「愛理、しっかりして!! あい……乳首ぃぃぃーっ!!!?」


 ワンピースパジャマの胸元の下はノーブラ。そして先端にある蕾に釘付けとなってしまい、今度は乳首絶叫となる。


 なによこの展開! To LOVEるじゃない! しかし愛理には悪いけど、今の私はヒロインの乳首のことでいっぱいよ。ゲームでもたくさん見てきた愛理の乳首。画面越しでも拡大にして何回も拝んで、パソコンの壁紙にもしていたっけ。こうやって近くでお目にかかると実に美しい。結城リトなら赤面で済むんでしょうけど、私は心の勃起が止まらん! ありがとう神よ……っ!


「桃尻くん。靴、人様の家では脱がないとね。マナー違反だよ」


「あっ、はいスイマセン。……って、靴は脱ぎますけど一大事なんです! 恵先輩は今すぐ私と一緒に愛理をベッドに運んだら、コンビニのご飯をチンしたらおかゆでも作ってください!」


 いやらしい気持ちを断ち切って、それぞれの役割を決めて恵と協力して看病することとなった。え? 私はなんの役割かって? もち、愛理の火照った身体をフキフキすること☆ いやらしい気持ちは一度加速したら止まらないものなのよ。


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