ヒロインと楽しいゲーム大会!ただし男ども、テメーらはダメだ。
四人がせかせかと動き始けばものの五分もしないうちに、恵の部屋は多数のゲームに埋めつくされる寸前となっていた。一世風靡をして今やレトロゲーム機と呼ばれている代物が新品同様のピカピカで保管。入手困難なレアカセットまで当たり前のように持っているから、ここまでくると恐怖&もはや裏ましい。……っていうか、トランプやUNOがあるのは分かるけどさ、なんで遊戯王カードまで部屋に置いてるのよ。カード関連ほぼこれで場所とってるじゃない。
「で? 愛理、お前なにがしたいの?」
「おいこら天使に向かってなにその態度は!?」
「あはは、大丈夫だよ桃尻さん。私はゲームとかあまりしないから初心者にもできそうな……といっても、一番は皆と盛り上がるようなゲームがしたいかな?」
ふむふむ、なるほど。初心者にとってルールが単純で楽しく夢中になれそうなゲームか。そりゃもう、私もゲームに触って間もない頃にめちゃくちゃ夢中になったアレしかない。
自分なりのアンサーが出たので、すかさずお勧めのゲームはこれだと我が先に声に出したところ――
「だったらマリオカートよ!」
「誰でも楽しめるといえば……人生ゲームしかないよね……」
「ストレッチにもなりそうなツイスターゲームなんてどうだい?」
「ハラハラドキドキの黒ひげ危機一髪は盛り上がり間違いなしですぅ!」
「オセロ」
見事なハモリ。そしてバラバラ。ジャンルを別にするならば、私以外は全員アナログゲームを候補に挙げたことぐらい。愛理も皆一斉に答えるなんて思ってもおらず困ったように微笑んでいる。
ここは愛理の意見を優先させたいのだが、私はどうしてもマリオカートがやりたい、単純にゲームをしたいからではない。これにはちゃんとした理由、下心がしっかりある。ゲーム初心者あるあるとして、マリオカートをプレイすればレース画面に集中しすぎた挙句、コントローラーと共に体ごと横へ倒れる現象が起きやすい。そこで倒れそうになる愛理の隣に私がいて、キャッからのドキッで上手いこといけば鼻血噴出のイベント発生する的な!?
「どれにしよう。迷っちゃうな」
「オホホ、したことのないゲームをするのがいかが?」
「したことのないゲーム。オセロや人生ゲームは小学生の頃した記憶があります。黒ひげ危機一髪もお祖母ちゃんの家でしたことがあるので、したことがないのはマリオカートというゲームとツイスターゲームになりますね」
「あらあらまあまあ、ツイスターゲームはあまりお勧めしませんことよ」
「へっ? どうしてですか?」
私は四人に聞こえないボリュームで愛理の耳元でこんなことを囁いた。
「ツイスターゲームというのは、男女が体を交えて色んな体位を作るゲームなの。あなた、私たちに見られながら四つん這いできる?」
「よつんば……え? ええええっ……で、でき、できましぇん! ど、どうして恵先輩はそんなゲームをしようなんて言い出したんでしょうか!?」
「ああ見えてきっとド変態なのよ。じゃ、もう答えはでたわね?」
「はい、マリオカートがしたいです!」
しめしめ、マリオカートルートに突入っと。笑いだしそうな唇を噛みしめて金持兄弟に視線を送ると、よからぬ企みを計画しているんだろうといった無言の圧力が壁のように立ちふさがって、私はそれを挑発と受け取る。ヒロインと結ばれるためなら闘志満々。
午後一時、ヒロイン争奪戦開始――。




