表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の島の秘密  作者: ありま氷炎
後日談
99/100

星に願いを

 午後3時……。

 境内から参拝客の姿が消えていた。


 それというのも、神主である花村ヒトシが決めたもので2月14日は午後2時には神社への参拝をやめさせた。


 理由は去年にさかのぼる。


 父が生きていたころ、2月14日はバレンタインデーだからと女性参拝客が押しかけ、チョコレートを山のようの置いていかれる日だった

 おかげで2月14日から2週間ほど、チョコレートな日々が続く。

 島の人たちに配るのだが、それでも余るほどチョコレートをもらっていた。


 そして去年、ヒトシにその番が回ってきた。

 美少年のヒトシ、昔からチョコレートはかなりの量をもらっていた。 

 しかし、神主になったヒトシへのチョコレートの数はその比ではなかった。


 芸能人がトラックいっぱいのチョコレートをもらうという話を聞いたことがあったが、それに頷ける量をヒトシも受け取っていた。

 山のようなチョコレートを前に途方にくれていたら、彼の想い人アナンが「こんなにいっぱいチョコレートあったら、私のなんて要らないわね」と持っていた可愛らしい包装紙の箱を破り始めた。


 どうしていいかわからず、驚いているヒトシの前で、アナンがばりばりとチョコレートを食べ始めた。

 どうやら、自分で食べたほうがいいと判断したようだった。


 後日、そんなことがあったとは知らないヨウスケが、しっかりとアナンからもらったチョコレートを食べていたと聞き、ヒトシは愕然とした。


 そんなこともあり、今年は参拝時間を縮小、しかも『チョコレート等の贈り物は止めください』を大きな立て看板も作った。

 おかげでチョコレートの数は大幅に減ったが、それでも賽銭箱などの投げ込む輩もいた。


 ヒトシはさすがに捨てるのはまずいという意識が働き、それらのチョコレートを隠し、愛しい女性を待った。

 午後4時、ヒトシは境内の掃除を済ませると、神主の服から通常のジーンズとTシャツという格好に着替える。


 午後5時、まだ、学校終わってないかと自分に言い訳をしつつ、神社の本殿の縁側に座る。


 午後6時、鴉が鳴き始めた。


「………」


 ヒトシはジーンズのポケットから電話を取り出す。


「もしもし、今どこにいる?え!?アナンと一緒?」


 幼馴染で昔アナンと寝たことがある男、ヨウスケが愛しい女と一緒にいるとわかり、ヒトシは言葉を失う。


 来るべき日が来たのか、ヒトシは呼びかける声を無視して電話を切った。


「はああ…」 


 かすれた声で溜息をつく。


 周りを見渡すと、すでに夕暮れが終わりと告げようとしていた。


 ヒトシは自分を叱咤すると、境内を駆け抜け、勢いよく、階段を下りる。

 森の夜は来るのが早い。


 足元を見失いそうになるが、どうにか階段を降りきった。

 

 いつもであればヨウスケに迎えにきてもらっていたが、今日はアナンとデート中だった。


(今日はっていうか、今日からかもな)


 ヒトシがそう思いポケットに手を入れ歩き始めたとき、眩しい光が前から浴びせられる。


「ヒトシ!」

「花村くん!」


 それは車のライトで、車から見知った影が二つ降りてきた。


「お前、また変な勘違いしただろう?」

「変な勘違い?なにそれ?」


 アナンはヨウスケに意味がわからないというような顔を見せる。


「ヒトシくん、ほら、去年たくさんチョコレートもらっていたでしょ?だからさ、ちょっと私は今年は考えたの!うちでお好み焼き、食べない?」

「お、お好み焼き?!」

「こいつ料理できないだろう?この島で鍋って言うのもなんだからって、お好み焼きにしたんだって」

「どう?チョコレートで甘くなった口にちょうどいいと思わない?」

「ぷっつ」


 ヒトシは不意に笑いだす。


 この世の終わりだと考えていた自分が馬鹿みたいだった。


「なに、笑ってるの?お好み焼きしか作れなくて悪かったわね」

「お好み焼きって料理のうちに入らんだろう。だいたい、粉も市販だろう?」

「うるさいわね!だったら、北守は今日は焼き当番のみ。私と花村くんが食べる係だから」

「お前、それはあり得ないだろう?バレンタインは女が男に何か送るものだろう?」

「北守~それは日本だけなの。海外では男の人が女性に贈り物をするのが普通なの!」

「そうなのか?ヒトシ、アナンがそう言ってるけど。本当か?こいつ、自分が焼くのが嫌でそう言ってるだけじゃないか?」


 ヨウスケが同意を求める視線をヒトシに送る。その隣でアナンが同意したらだめだと口を尖らしている。


「さあ、俺は知らないけど」

「ヒトシ!」

「花村くん!」

「二人とも、俺、腹ぺこぺこ。どっちでもいいから早く食べたい」

「そうだな」

「そうね。私もお腹すいちゃった」


 3人はそう言い合い、仲良く車に乗り込む。


「ああ、北守。コンビニ寄って。ビール買いたい」

「え?嘘だろ?明日、お前仕事だろう。駄目だ!」

「いいでしょ。だったうちで飲むんだし。花村くんも飲むでしょ?」

「あ、うん」

「げ、ヒトシ、頷くな。こいつが飲んだら最悪だ」

「何よそれ!」


 車の中では賑やかな会話が続く。


 ヒトシは悪態を付き合う二人から視線をはずし、窓から外を見る。

 空には星が輝き始めていた。


 『いつまでもこうやって一緒にいられますように』


 ヒトシは目を閉じるとそう星に願った。

 




いないと思いますが、最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ