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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第八章 残されるもの
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1年後

「先生、もう帰るんだ?今日はデート?いいなあ」


 ボブカットの似合う可愛らしい女子生徒が、鞄を持って職員室から出てきたアナンに声をかけた。


「な、何、言ってるの!今日は用事があるの」

「うそばっかり。楽しんで~」


 女子生徒はクスクス笑いながら手を振ると廊下を走り抜けて行く。


「違うって言ってるのに‥…」

 

 アナンは女子生徒の後姿を見ながらため息をついたが、気を取り直して校門へ向かった。


 花村マサシが亡くなって、今日で1年経とうとしており、今日はマサシが眠る場所に皆で集まることになっていた。


 アナンは結局、国語教師として学校に残り、生徒達にからかわれる毎日を送っていた。


 シュンイチは退院後、自ら自首し、拳銃の密輸および使用で銃刀法違反、懲役5年の判決を受け静かに刑に服している。

 東守タカノリと西守タダオは、シュンイチが独断で銃を密輸、使用したと主張し、罪に問われなかった。


 南守アキオも青井ノゾムを病院に運んだ後、自首した。マサシを自らの恨みで誘拐、殺害したと主張し、懲役10年の刑に処せられ、シュンイチと同じように刑務所で刑に服している。


 青井ノゾムは辛うじて命を取り留めた。しかし銃刀法違反に問われ3年の刑を処せられた。マサシへの誘拐および殺害はアキオが1人で実行したと主張し、ノゾムもヒトミも罪には問われなかった。


 野中ヒトミ、改め、青井ヒトミはノゾムの子供を出産、籍を入れた。アムルになった時にはすでにノゾムの子供を身ごもっていたようだった。結局ノゾムはそのことを知っていたのかどうか、ハナムラの受精卵を入れることはしなかったようだった。


 大野の殺害はやはり西守タダキの仕業だった。原因はノゾムから得たお金の分配について揉めた結果、タダキが大野を殺害したようだった。

 タダキはこの殺人及び他の犯罪が明らかになり、懲役15年の判決を受けた。




 正午の日差しが頭上に容赦なく照りつけ、アナンは眩しさに目を細めた。校門に一台の車が待っているのが見えた。


「町田、遅いぞ」


 ヨウスケは車の中から不機嫌そうな顔を出す。

 ヨウスケはシュンイチが退院すると、学校に辞表を出した。父が自首することが予想できたからだった。今は花の出荷や『これからの島の未来を考える会』のようなものに参加して、島の繁栄に力を注いでいる。


「早かったわね。北守さん、元気そうだった?」

「ああ、相変わらずアキオさんとは仲直りしてないみたいだけど」


 ヨウスケは助手席に座るアナンを見ながらそう答えた。


「花村くんは?」

「すでにあの場所に行ってるよ」


 1年前のあの日、

 遺伝子注入システムを改造して、現れたヒトシとカランを迎えたのは静かに眠るマサシであった。ヒトシは荒れ狂い、力を使ってアキオとノゾムを殺そうとしたが、アナンがカランにそれを止めさせた。

 マサシは自ら殺された。

 その思いを知っているアナンにはヒトシを止めるしかなかった。


 そして、ハナムラの遺伝子をヒトシとノゾムから除去し、ヒトミとアナンからもアムルの遺伝子を取り除いた。


 それからのことをアナンはぼんやりとしか覚えていなかった。シュンイチとアキオがノゾムを病院に運んだり、警察へ連絡したり、していたことはなんとなく覚えている。

 ヒトシは表情を凍らせ、泣くことも叫ぶこともせずただうずくまり、じっと父の躯を見ていた。アナンはそんなヒトシに寄りそっていた。


 自分にできることはこれしかなかった。


 数日後、マサシの葬儀が終わり、ヒトシが落ち着きを取り戻した。食事をとるようになり、少しずつだが話をするようになった。

 アナンはほっとして、次に自分がすべきことを考えた。最後のアムルとして、アナンはカランのその後を考えなければならなかった。

 そんなアナンにカランは機能停止を望んだ。

 アナンはカランの希望通り、機能停止をするように命じた。カランはほっとしたような笑顔を見せ、停止した。


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