戻ってきたアナン
この感触、覚えてる。
優しい口づけ……
あの時を同じ。
彼が私を必要としている。
私を待ってる。
私は戻ってもいいのね。
私を待ってる人がいるのね。
淡い光の中でアナンは目を開けた。
目の前には銀色の髪をなびかせたアムルが見えた。
もういいの?
外にでもいいの?
辛いことがまってるわよ。
それでもいいの?
アムルはアナンにそう言った。
うん。
分かってる。
辛いのは同じ。
でも逃げたらだめ。
この体は私のもの。
痛みも辛さも、喜びも全部私のものなの。
分かったわ。
返してあげる。
やっぱり、あんたは北守が好きなのね。
ハナムラではなく、北守が……。
好き?!
アムルの言葉に反論しようとしたが、できなかった。
突然自分を包む暖かい光が消え、アムルの姿も見えなくなった。
そして体の感覚が一気に戻った。
最初に感じたの柔らかな唇の感触だった。
「北守!」
アナンは反射的に、どんとヨウスケの胸を押した。ヨウスケがバランスを崩すのがわかったが、このままキスをされてるのは恥ずかしかった。
「ありがとう。でももう十分よ」
真っ赤になった顔をヨウスケに見せないようにアナンは顔を背ける。
「町田先生!戻ったんだ」
カランの腕の中でヒトシが嬉しそうに声を上げた。
ああ、花村くんも待っててくれたんだ。
アナンはヒトシの久々に見た笑顔に心が温まるのがわかった。
「さて、町田。元に戻ったばかりで悪いが、カランにこのシステムを遺伝子除去システムに改造するように言ってくれ」
「……そのためにキスして、私を戻したの?」
「……悪いか?」
相変わらず冷たいヨウスケにアナンはため息をつくが、躊躇してる時間はなかった。
メグミさんの弟のノゾムさん、そして花村さん、二人の命がかかっていた。
私も二人を助けたい。
そして花村くんも!
「わかったわ。でも後で思いっきり仕返しするから覚えておいてね」
アナンの言葉にヨウスケは首をすくめただけで何もいわなかった。
「カラン、まず花村くんを放して。そして遺伝子注入システムを遺伝子除去システムに変えて」
「了解だよ。アナン」
カランはヒトシから腕を話すと、遺伝子注入システムをヨウスケが受け取った。




