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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第八章 残されるもの
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アナンを呼び戻す方法

「ヒトミ……?」


 後部座席のドアを開けると、そこにヒトミの姿はなかった。

 ノゾムの元にいったのか……?

 アキオは遺伝子注入システムを掴みながらそう思った。


「ヒトミが……」


 すぐそばで、目を凝らして戦いの様子を見ていたヨウスケがつぶやいた。アキオがその方角に目を向けると、ヒトミがカランに鳩尾を殴られ、気を失うのが見えた。


「アムルが指示したみたいですね。やはりヒトミはアムルになっていた。マサシさんの予想通りですね」


 ノゾムはヨウスケの言葉を聞きながら、ドアを閉めた。


 ヒトミのことは後回しだった。

 早く遺伝子注入システムを改造させ、ノゾムを元に戻したかった。


「ヨウスケ。お前はこの遺伝子注入システムをカランに渡して、改造させろ。俺はマサシとヒトシの戦いを止める」


 アキオは遺伝子注入システムをヨウスケに渡すと、走り出した。


 遺伝子注入システムの改造が済むまで時間を稼ぐつもりだった。

 このまま、ハナムラの力を使って戦い続ければどちらかが死ぬことが予想できた。


 ヨウスケはアキオの背中を見送ると、遺伝子注入システムを持ってカランに元へ走った。



「ノゾム!無駄な戦いはやめるんだ!」


 アキオは上空に浮かび、睨みあってる二人を見上げてそう叫んだ。


「邪魔するな。裏切り者のくせに」


 ノゾムはアキオを見下ろしてそう言うと手の平をマサシに向けた。


「やめろ。ノゾム!恨むなら俺を恨め。マサシはハナムラだが、メグミの子供でもあるんだ!メグミは死ぬまでマサシのことを心配していた。だから、マサシを恨むのはやめろ!」

「うるさい!」 

 

 ノゾムは手の平を今度は眼下のアキオに向けると、光を放った。


「アキオさん!」


 マサシはとっさにアキオの目の前に飛び出した。光がマサシを襲い、その体を地面に叩きつける。


「マサシ!」


 アキオは地面に仰向けで倒れるマサシに駆け寄った。


「だ、大丈夫です。アキオさん。今の青井さんは青井さんであって青井さんではありません。ハナムラです。何をいっても無駄です」


 マサシは唇が切れ、流れ出た血を手の甲で拭い、ゆっくりと立ち上がった。


「ハナムラである私しか彼を止めれません。私は息子のヒトシを守りたい。ここで青井さんを止めないとヒトシを守れません。分かってくれますね」


 マサシをすぐ側のアキオに決意を伝え、上空に飛び上がる。

 雨は止む勢いがなく、降り続けていた。


「マサシ!」


 頼む、ノゾムを殺さないでくれ。

 アキオはその言葉を口に出せなかった。



「ヨウスケ!」


 ヒトシはヨウスケの姿を見ると表情を和らげた。しかしアムルは嫌な顔をしてヨウスケを見た。


「ヒトシ、説明は後でする。カラン!このシステムを今すぐ遺伝子除去システムに改造しろ」


 ヨウスケはヒトシに視線を向けた後、焦った様子でカランに遺伝子注入システムを見せた。カランはシステムに見た後、アムルの顔色を窺う。


「ふん。大方コピーを元に戻すでつもりでしょ。カラン、改造する必要はないわ。このまま戦いを続けさせましょ」

「ま、アムル!」


 ヨウスケはアムルの言葉が信じられず、怒鳴り声を上げた。


「ちょっと怒鳴らないでよ。ヨウスケ。ヒトシの命なら心配ないわ。コピーを抱けば延命できるでしょ」

「お前!ふざけんな!」


 ヒトシが怒りをあらわにアムルに駆け寄った。しかし、ヒトシがアムルに掴みかかる前にカランがそれを止める。


「アムル、お前はそれを本気で言ってるのか?」

「ええ、もちろんよ。マサシを応援してるけど、コピーが強ければコピーに抱かれたいと思うのは女の本能でしょ?」

「くそ、お前は!」


 ヒトシがアムルに掴みかかろうとするが、カランが両手を掴みそれを防いだ。


「アムルはやはりハナムラと同じでおかしな生き物だな。やっぱり俺はお前が嫌いだ。そろそろ町田に代わってもらう。もう十分だろう?」


 ヨウスケは突然アムルに抱き寄せ、強引に唇を重ねた。


「んっつ」

「ヨウスケ?!」


 ヒトシはヨウスケの行動が理解できなかった。しかしカランに自由を奪われ、ただ唇を重ねる二人を見ることしかできなかった。


「町田、戻ってこい。この体はお前の体だ。アムルのものではない。ヒトシも俺もお前の帰りを待ってる」

「そんなこと言っても無駄よ!」


 アムルはそう叫ぶが、その口はヨウスケの唇によって再びふさがれた。


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