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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第八章 残されるもの
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ハナムラの戦い

 体が揺れていた。

 青井ノゾムは目を開け、随分低い茶色の天井を視界に入れる。

 横にはヒトミが静かに寝ているのが見えた。


 僕は……


 ノゾムは体を起すと、自分が車の中にいるのがわかる。

 畳まれた後部座席が見え、助手席と運転席に見慣れた男達が座っていた。

 運転席にいるのはアキオで、その隣にはマサシが座っていた。


 ぼんやりとする頭の中で、ノゾムは記憶を探った。

 

 そして頭痛が始まった。


「うっつ」


 ノゾムのうめき声が聞こえた。


「ノゾム!」

「青井さん!?」


 アキオが車を止め、マサシが振り向く。


「大丈夫か?」


 二人が見つめる中、ノゾムは頭を両腕で抱え床に伏せた。


「ノゾム!」


 アキオは車から降りると、後部ドアを開けた。苦しむノゾムに触れようとした。


「僕に触るな!」


 ノゾムはそう叫ぶと起き上がる。

 顔からは苦痛の色が消え、口元には奇妙な笑みを浮かべていた。


「ノゾム…」

「青井さん、その目は…」


 マサシはノゾムの瞳が銀色に光っているの見て、背中に嫌な汗が流れる。

 力が使えない今、確かめようがないが、その瞳はハナムラのそれであった。


「あー面白いな。これがハナムラの力か」


 ノゾムは呆然とするアキオに冷たい目を向けると、車から降りた。雨がノゾムに降り注ぐがその体が濡れることはなかった。体から光が放たれ、雨に濡れるのを防いでいた。

 マサシは助手席のドアから降りるとノゾムの前に立ちふさがった。雨で視界が塞がれる中、ノゾムはマサシに楽しげな笑みを向けた。

 桟橋から走ってきたタカノリとヨウスケの車がその後ろに止まり、ヘッドライトを浴びせた。


「おやおや、北守さんも東守さんもいるんだね。丁度いい。みんな一緒に殺してあげるよ」


 ノゾムはそう言い、車に向かって光の球を投げた。


「タカノリさん、ヨウスケくん!」


 マサシの声は衝撃音でかき消された。光の球は車を襲い、車体は回転しながら桟橋へ飛ばされた。桟橋にいた人々は、ふいに飛んできた車に驚きの声をあげ、こちらを見る。


「やれやれ、目立ってしまったようだね」


 ノゾムはため息をつくと、桟橋に向かって再度光の球を投げた。


「させない!」


 マサシは光の球に向かって跳び、同時に力を解放する。

 ぱしんっと頭の中で何かが割れた。

 光が消え、現れたのは銀色の目を輝かせ、宙に浮かぶマサシだった。


「アキオさん、ヨウスケくんとタカノリさんをお願いします!」


 マサシは二人のことを託し、ノゾムに向かって跳んだ。

 アキオは一瞬躊躇したが、桟橋に向かう。


「マサシ、ノゾムを絶対に殺すな!」


 走りながら、アキオはそう叫んだ。しかしマサシがその言葉に返事をすることはなかった。


 頼む。ノゾムを殺すな。


 アキオはそう願いながら足を速めた。



「おやおや。マサシくん。ハナムラの力を解放してしまったのかい?松果体が肥大してしまうよ」


 脂汗をかき、自分を睨むマサシにノゾムは嫌味な笑みを浮かべた。

 マサシは歯を食いしばり、力を放った。

 頭の中でハナムラが自分を支配しようとしているのがわかった。

 松果体が肥大しているのも感じた。

 しかし、自分がノゾムを止めなければ、島はめちゃくちゃになってしまう。ヒトシの命も狙われるに違いなかった。


「父さん!?」


 宙に浮いてるはずなのに、後ろからヒトシの声が聞こえた。振り向くとそこにはカランに手を引かれ、アムルとヒトシが飛んできた。


「父さん、なんでハナムラに戻ってるんだよ!」


 ヒトシはカランたちを共に地面に降り立つと、宙に浮かび父を見上げた。


「安心しなさい。私の意識はまだここにある。アムル、ヒトシを頼んだよ」


 マサシはヒトシに笑いかけた後、アムルにそう言った。


「安心して。あたしがちゃんと見ておくから」


 アムルの返事にマサシは苦笑して、ノゾムに目を向けた。


「ヒトシくんか。それにカランというロボットと町田アナンだね。君達と遊ぶのはマサシくんを殺してからにするよ」


 ノゾムはニタっと笑うとマサシに向かって跳んだ。


「青井さん、あなたは母の弟です。傷つけたくありません」


 マサシはノゾムから繰り出される攻撃を受け止めながらそう話しかける。


「でも、ヒトシを狙うのであれば、例え母の弟でも容赦しません」


 マサシはノゾムに蹴りを入れ、その体を地面に叩きつけると、光の球を投げた。


「!」


 しかし、光の球がノゾムに当たることはなく、光輝く球体がマサシの光を受け止めていた。


「ノゾムは私が守るわ!」


 光が消え、現れたのはヒトミだった。


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