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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第七章 解き明かされる過去
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ハナムラ、そしてキタモリの始祖の話

「ハナムラ様」


 冷凍睡眠機能を解除してカプセルの蓋を開けるとハナムラがうっすらと目を開けた。

 その瞳はうつろで、キタモリの姿を捉えると見開かれる。


「君は誰?僕は?」


 ハナムラの言葉にキタモリは言葉を失った。

 しかし小さく息を吐くとカプセルの中のハナムラを見つめた。


「私はキタモリです。あなたに仕える者です」


 記憶を失ったハナムラはそれまでの凶暴な性格がなりをひそめ、素直な少年のように見えた。それはフロワンに置いてきた弟の姿をだぶらせた。

 キタモリとハナムラは地下に潜った宇宙船をいったん地上まで出した。そして外に出るとリモートコントローラーを使って宇宙船を地下に再び隠した。


「花が少ないんだな」


 キタモリはうっそうと茂る木々を見ながらそう呟いた。その隣のハナムラは眩しそうに空を見上げている。


「ハナムラ様、まずは地球ナルーン人のいる場所に行きましょう」


 記憶を失ったハナムラにフロワンのこと、この地球ナルーンに来た理由などを説明した。ハナムラはすこし驚いた様子だったが理解しているようだった。


「$%^^&^」


 二人が森の中に入ろうとすると、ふいに女性が飛び出してきた。


「$%%^^」


 その後を追って、怒声を上げながら数名の男達が現われた。男たちは汚れた着物を纏い、下卑た笑いを浮かべている。


「#@%$^^&」


 女性が何かを言ってキタモリの影に隠れた。

 多分助けてくれといったのだろう。

 キタモリは地球ナルーン人と争う気はなかったが、この状況で女性を助けなかった場合、何が起きるか容易に想像できた。


「%&%&*@##$」


 男たちは薄笑いを浮かべ、その手に刀を握り、キタモリとハナムラの前に立った。


「#%#$%$^」

「何を言ってるか、わからないけど……。キタモリ。助けてあげようよ」

「……ええ、そのつもりです」


 ハナムラの言葉にうなずくとキタモリは腰から銃を抜き、男の手に向かって発砲した。


「#$$$!!」


 銃から放たれた青白い光によって男の手から刀が落ちる。男は悲鳴をあげた。


「どうする?まだやるか?」


 キタモリは他の男に向かって銃を向けると男たちは悲鳴のような叫び声を上げて一目散に逃げ出した。


「#$$%^」


 女性は男達が逃げたのをみて、キタモリの背中から顔をのぞかせた。そして何かを言って頭を下げた。

 お礼を言われたのは想像できた。

 

 女性は去ろうとする二人を引き止めると自分の住む村へ案内をした。

 キタモリは断ろうとしたが、アムルの手がかりがあるかもしれないと女性についていくことにした。


 村は人口が30人ほどの小さな村だった。

 宇宙船のコンピューターで、キタモリは自分達が不時着したのが小さな島であることがわかっていた。村はこの島に点在するうちの一つのようだった。

 村の人々は奇妙な服を着るキタモリとハナムラに興味津々の様子だった。

 女性は村人の無粋な視線を気にすることもなく、村の端っこにある小さな家に二人を連れて行った。そして無事に戻ったことを伝え、出てきた老婆になにやら説明する。すると老婆は柔和な笑みを浮かべて二人の手を取り何度も頭を下げた。


 結局キタモリとハナムラはその村に居つくことになった。アムル探しには地球ナルーンの協力とここの言語の習得が必要だと思った。


 1年が経過し、キタモリもハナムラも言葉が分かるようになった。

 この島には4つの村が存在しており、そのうちの一つが島の征服を狙っていることがわかった。村には本土から悪人が流れてきており、その村に集まっているようだった。この1年の間に何度か襲われ、その度にキタモリとハナムラはこの村の人々を助けていた。


 キタモリは自分が助けた女性、カノに思いを寄せられているのがわかっていた。

 自分も彼女に対して同様の思いを持っているがわかっていた。

 しかし、自分の使命はハナムラの延命、アムル探しだった。アムルを探したらフロワンに連れて帰るつもりだった。


 そんなある日、ある女性が村に迷い込んだ。

 女性の名は、ミヨと言い、本土から連れて来られたようだった。

 乱暴されそうになるところを何とか逃げ出したようだった。


 ハナムラはミヨに不思議な印象をいただいた。そして同時に抱きたいという動物的衝動を覚えた。キタモリはミヨへの思いに苦しむハナムラの様子を訝しがり、ミヨの遺伝子を調べた。

 予想通り、ミヨはアムルであることがわかった。

 ミヨは地球ナルーン人でありながら、なぜかアムルの遺伝子を持っていた。


 奇妙さを感じながらもキタモリは喜んだ。

 そしてフロワンに帰る準備を進めた。


 数日の間にハナムラとミヨは関係を深めた。記憶を失ったハナムラに、キタモリはアムルのことを正確に伝えていなかった。ハナムラはミヨを抱くことで、ミヨを死に至らしめることを知らなかったのだ。


 キタモリは極秘にフロワンに帰る準備を整えた。

 王に命じられた通りにハナムラと一緒にアムルを連れて帰るつもりだった。


 帰るその日、ミヨとカノが消えた。二人は山菜を採りに出かけていた。

 ハナムラとキタモリは必死に二人を探した。

 そしてハナムラはミヨの気配を探り、力を使ってその場所を探り当てた。

 二人は西の村の男達に捕まっていた。


「カノ!」


 キタモリとハナムラにとって男達を退治することなど造作もなかった。

 しかし男達が逃げる寸前にやけっぱちで放った矢を二人は見逃した。

 矢はカノに突き刺さり、力なくその場に倒れた。

 キタモリは矢を抜き、着物を切り裂くと、傷口に当てた。

 キタモリは自分の腕の中で力を失っていくカノを見ながら、胸がつぶれるような思いをしていた。

 そしてカノを救うためになら何でもできると思った。


 それから村に戻り、カノはなんとか命を取り留めた。

 キタモリはフロワンに帰るのを諦め、地球ナルーンにとどまることにした。


 11年後、キタモリは地下に隠した宇宙船に戻ってきていた。


「フロワン暦3081年4月8日、これが最後の記録になる。私は地球ナルーン人としてこの地球ナルーンに残っている。ハナムラ様は10年前にアムルの後を追ってお亡くなりになった。しかし新たなハナムラ様が誕生し、10歳になる。私はこの地球ナルーンでハナムラ様を見守り続ける。アムル一族は近くにいる。先代のアムルはこの島の近くで誕生している。ハナムラ様が生まれ続けるようにアムルもどこかで生まれ続けているようだ。ハナムラ様もフロワンにいたときとは異なり、穏やかな性格を保っている。この地球ナルーンで私はハナムラ様と共に生き続けるつもりだ。

 今度はフロワンのものは全て、この宇宙船と共に地下に隠す。ハナムラ様は地球ナルーン人として生きていく。フロワンを知る者は私が最後だ。

 フロワンの仲間よ。父さん、母さん、クモリ。帰らない私を許してくれ。私は地球ナルーン人として幸せに暮らしているから」


 その言葉が終わると画像が消えた。

 どうやらフロワンに送るつもりでレコーディングしたらしい。しかし、宇宙船の損傷状況などから送られている様子ではなかった。


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