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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第七章 解き明かされる過去
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始祖ハナムラの話2

「ここにも木の根が……カラン。邪魔だから剥がして」


 アムルの言葉にうなずくとカランは次々と部屋に張り巡らされた木の根を剥がし始めた。


 ここは……


 ふいに意識の底に沈んだはずのハナムラの声が脳裏に響いた。

 ヒトシはハナムラにのっとられないように神経を集中させる。


 お前には体を渡さない。


 ヒトシは脳裏のハナムラにそう言った。


 知ってるさ。ここで俺の仲間は死んだ。


 苦笑交じりのハナムラの声がそれに答えた。


 ヒトシ……記録をみてみろ。


 ハナムラの声はそこで切れた。意識もまた底に沈んだようだった。


 記録?仲間?死?


 ヒトシはハナムラの言葉を反芻しながら部屋を見渡した。カランによって木の根が取り除かれ、部屋が見渡せるようになっていた。壁には歯損した大きなカプセルが5つ埋め込まれているのが見えた。


「ヒトシ?」


 ヒトシはまるで誘われるように部屋の壁に設置されているパネルの側に近づいた。そしてパネルの側の薔薇の形のような紋章に触れた。


 ウィン。


 音がしてパネルに画像は映し出された。


「#$$%%%#@%$$」


 聞き取れない言語が聞こえた。画像に移っているのは青年だった。その顔はどこかヨウスケに似ていた。


「@##$*&%$##」


 青年はこちらを食い入るように見ていた。顔に憔悴の色が浮かんでいた。


「ハナムラの船は不時着したみたいね」


 画像を見ているアムルがそうつぶやいた。


「何言ってるのか、わかるのか?」


 ヒトシの驚いたような言葉にアムルは微笑んだ。


「あんたも目を閉じて聞いてみて。ハナムラならわかるはずよ」


 ハナムラ……。

 ハナムラではないっと反論しようとしたが、ヒトシは何も言わず目を閉じた。そして画像から聞こえる声を聞いた。


「@###%%%…フロワン暦3070年4月7日、ナルーンに不時着して5日がたった。ヒガシモリ、ニシモリ、ミナミモリの遺体は焼却した。ハナムラ様はまだ冷凍睡眠中である。現時点でアムルは見つかっていない。」


 ヒガシモリ?ニシモリ?


 ヒトシは言葉が理解できたことに驚きながらも聞こえてきた名前に眉をひそめた。


「ハナムラだけでなく、キタモリ、ミナミモリ、ヒガシモリ、ニシモリの4人が一緒に来たみたいね。でも3人は死んでしまったようだけど……ヒトシ」


 アムルはヒトシを見つめた。


「あんたはこれを見る必要があるわ。わかるわね」


 アムルの言葉にヒトシはうなずいた。

 地球にたどり着いた自分の祖先に何があったのか知る必要があった。

 そして自分のために、ハナムラのために犠牲になった仲間のことを知る必要があった。



「くそっ」


 キタモリは舌打ちするとパネルを叩いた。

 不時着して1週間が経とうしていたが、アムルの手がかりはなかった。

 アムルを探す計器が壊れていた。


「これは地上に出るしかないか」


 キタモリはそう言いながらハナムラが眠るカプセルを見つめた。


 不時着の際、他の仲間の冷凍睡眠カプセルは壊れ、仲間は死んでしまった。

 運よく俺とハナムラ様のカプセルが無事だった。


 王がフロワンから脱出したアムル一族を追うように俺たちモリ家に命じた。ハナムラ様は王宮から抜け出して俺たちについてきた。

 気がついたのはワープした後で、しかもフロワンと連絡が取れず、仕方なく一緒にナルーンに来ることにした。

 ハナムラ様は確かまだ15歳のはずだ。

 あと3年は時間がある。


 地上に一緒に連れて行くか?

 そのほうがいいかもしれない。

 冷凍睡眠カプセルは不時着した衝撃であと数時間しか機能しないはずだ。

 ここでじっと待つよりはましだ。


 キタモリはそう決めると地上に行くために準備を始めた。



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