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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第七章 解き明かされる過去
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いざハナムラの謎へ

「おじさん、おじさんはお姉ちゃんを殺した犯人を捕まえてくれるの?」


 大野に聞いた、銀色の髪で死亡した少女の村に着くと、その少女の弟がそう尋ねてきた。

 両親は村におらず、少年は家に1人でいた。一緒に暮らしているはずの祖母は畑に行ってるということだった。

 少年は10歳前後だった。

 殺した?

 この子供はそう思っているのか?


「ねえ。おじさん!この間来たお兄さんはお姉ちゃんを殺した人を捕まえてくれると言っていたよ」


 お兄さん……大野のことか。

 都合のいいことを言ってこの子供から話を聞き出したのだろう。

 あの腐った男がやりそうなことだ。


「そうだね。君の替わりに僕が君のお姉さんを犯人をやっつけてあげるよ」


 ノゾムがそう言うと少年は安堵の表情を浮かべた。


「本当?本当だね!僕はお姉ちゃんが大好きだったんだ。お姉ちゃんが死んで母さんも父さんもおかしくなった。そいつのせいでみんなおかしくなったんだ。だから絶対、絶対にやっつけてね」

「わかったよ」


 ノゾムは少年の頭を安心させるように撫でるとその村を去った。


 大野から教えられた別の村に行くと関係者はすでに村にはいなかった。

 しかし神隠しがよく起こる山の話は聞かされた。

 その山はヒトミ達が向かっているはずの田の山だった。


 田の山に着くと、銃声が聞こえた。

 近づくと男の背中が見え、ヒトミが倒れているのが見えた。

 心臓が止まるかと思った。

 男はシュンイチだった。


 僕は北守を殺してやりたいと思った。


 ノゾムはため息をつくと煙草をヒトミの鞄から取りだし、火をつけた。

 苦い味がした。


 ヒトミは遺伝子注入システムを使用した後、深い眠りに落ちた。

 ノゾムはベッドに横たわり、静かな寝息を立てるヒトミを見つめた。


 利用されているのを分かっているのに自分を愛する女……


 そしてそんな彼女を抱くと安堵に似た感情を抱く自分……


 彼女が傷いてる姿を見て、胸が苦しくなった。

 北守を殺してやりたいと思った。


 ノゾムは煙草の火を灰皿に押し付けて消すと、椅子から立ち上がり、ヒトミに背を向けた。


 研究所の所長のポジションを諦めきれない西守タダキにアパートと研究室を手配させた。研究室はこの舵町の私立大学内のものだった。

 ヒトミへの体外受精はその研究室で行うつもりだった。





「なんだ、これは?」


 ヒトシはアムルの後についていき、本殿の裏庭にいた。そして地面に不自然に空いた直径50センチほどの丸い穴を見ていた。

 よく見るとそれは穴ではなく入り口のようだった。

 マンホールの蓋のようなものが穴の側に落ちているのがわかった。


 カランが開けたのか……

 さすがロボットだな。


 ヒトシは手袋をはめ、にこやかな笑顔を浮かべるとカランに目をやった。

 アナンの体がアムルの意識にのっとられてから、カランはアムルの僕のように、その側に常に張り付いていた。

 ヒトシは自分に瓜二つのカランがアムルに使われているのを見ると、まるで自分がアムルの僕になったような気分になって嫌な気持ちになっていた。


「カラン、先に入って」


 そんな思いを知らないアムルはカランを穴の中に先に行かせると、自分も穴の中に入ろうと足を踏み入れた。


「これはなんの穴なんだ?」

「宇宙船の入り口よ。あんたの祖先、ハナムラが乗ってきたね」


 ヒトシの問いにアムルは穴に体を滑り込ませながら答えた。

 アムルはその答えに目を見開き愕然とするヒトシに楽しげな笑みを見せると穴の中に完全に入った。

 ヒトシは一瞬考えた後、覚悟を決めるように頷くと、アムルを追った。


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