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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第七章 解き明かされる過去
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マサシの考え

「父さん。もし、青井の行方がこのままわからくても、俺は町田先生と寝るつもりはないから」


 家に戻って昼食の準備をしている父マサシにヒトシはそう言った。


「……わかってるよ。でも私はどうにかして青井さんを見つけるつもりだ。カオルさんの命と引き換えに生まれたお前を私は死なせるつもりはない。絶対に青井さんを見つけ、この忌まわしいハナムラの遺伝子を取り除いてみせるから」


 マサシはぽんぽんとヒトシの頭を軽く撫でるように叩くように微笑んだ。


「父さん」

「さあ、ご飯の準備ができたよ。アムルを呼んできて」

「アムル?まあ。町田先生の体だからしょうがないか」


 ヒトシは不満げだが、素直に頷く。


「力を使ったらだめだよ。自転車があるだろう?それを使って神社まで行っておいで」

「自転車?!」

「そうそう」


 自転車という言葉に顔を歪めて玄関まで歩いていくヒトシの背中を見送りながら、マサシは表情を険しくさせていた。


 マサシにはある考えがあった。

 ハナムラの力を解放してでもノゾムから遺伝子注入システムを奪うつもりだった。

ヒトシの精子は保存してあると言っていたのでノゾムが遺伝子注入システムを使い、新しいアムルを作り、ハナムラを生み出すことは容易に想像できた。力を解放すれば、新しいアムルの気配を探り、ノゾムのところへ辿りつくことができる。


 今度はハナムラに意識をのっとられるつもりはなかった。


 自分の命を犠牲にしてでもヒトシからハナムラの遺伝子を取り除くつもりだった。



「アムル?おーい、アムル、カラン~」


 ヒトシは肩で息をして、額の汗を拭いながら本殿にいるはずのアムルとカランを呼んだ。自転車で神社まできたが、境内に着くまでに階段を昇りつめ、ヒトシはへとへとだった。


「おかしいなあ」


 神社は静まり返っていた。マサシが神主の仕事を休んでいるせいか、訪問者は誰もいなかった。


「ヒットシ~」


 ふいに本殿の後ろから声がして、銀色の髪をなびかせるアムルが現れた。ヒトシはアムルに見とれた自分が恥ずかしくなり、視線を逸らす。


「ヒトシ、今あたしに見とれたでしょ?ハナムラはアムルが欲しいもんね。でもだめよ。あたしの相手はマサシなんだから」

「くっつ、誰があんたなんかに!」


 妖艶な笑みを浮かべて自分に近づくアムルにヒトシは言い返す。しかしアムルには彼の顔は少し赤らんでいるのがわかっていた。


「まったく、素直じゃないわよね。あたしが欲しいんでしょ?」


 ヒトシの視界に、アムルの潤んだ瞳、つややかな唇が目に入る。

 だめだ。

 ハナムラに支配されては。

 ヒトシは目を閉じて息を吐いた。


「アムル、来てよ。出入り口があったよ!」


 カランの声がそう聞こえて、ヒトシはほっとした。アムルの甘い言葉、香りはヒトシにとって抗うのは難しいものだった。

 アムルはそんなヒトシの様子に面白くなさそうな顔をしたがカランの声がした方向へ顔を向けた。


「見つかったのね。ヒトシもここに来てるから、一緒に行くわ」


 アムルはそう答え、ヒトシを見た。


「ヒトシ、あの冊子に面白いことが書いてあったのよ。一緒にきて。ハナムラなら知っていた方がいいわ」



「中山さん?」


 ヨウスケが携帯電話を取ると電話をかけてきたのは中山だった。


「刑事?」


 中山の言葉にヨウスケは眉をひそめた。


「殺害……。多分青井が関わっていますよね。今俺達は青井のところへ向かっています。病院のほうには警察の人はまだ来ていませんでした。わかりました。気をつけます」


 ヨウスケはそう言うと電話を切った。


「何があったんだ?」


 電話口で発せられた刑事、殺害という言葉にタカノリは嫌な予感を覚える。


「タカノリ伯父さん。アムルのことを書いた記者が殺されました。多分、殺したのは青井です。今刑事が花の島に来ているそうです」

「刑事が?」

「急ぎましょう。面倒なことになるかもしれません」


 タカノリはヨウスケの言葉にうなずくとアクセルを踏む足に力を込めた。


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