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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第七章 解き明かされる過去
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ノゾムの憎しみ

「ふっふっふっ。わかったわ」


 1時間ほどして、冊子を読み終わったアムルが不敵な笑いを浮かべた時、周りにいたのはカランだけだった。


「え?マサシは?ヒトシは?」

「ハナムラ達ならどこかに行ったよ」


 カランはヒトシそっくりの笑顔を浮かべてそう答えた。


「そう、残念ね。あたしがこれから得た情報を披露してあげようと思ったのに。ま、いいわ。そう遠くにはいっていないようだし」


 アムルは天井をじっと見つめながらそう言った。アムルの意識のもとではアムルはマサシ達同様、花村の気配とアムルの気配を感じることができた。


「カラン、面白い物をみせてあげるわ。一緒についてきて」


 アムルは冊子を手に取り、立ち上がると本殿の外を出てすたすたと歩き始めた。


「アムル、待ってよ」


 カランは自分の主人であるカムルの祖先アムルには逆らえなかった。本殿を出ると急いでアムルを追う。



 ノゾムはベッドで静かに眠るヒトミを見つめていた。

 姉メグミを誘拐した男の孫。

 自分を裏切った男の姪。


 憎かった。しかし同時に触れると柔らかな感情がノゾムに流れ込むのがわかった。


 ノゾムは部屋の隅に置いてある、遺伝子注入システムを手に持った。


 おもちゃみたいなものだ。

 しかしこれで運命の女、アムルが作れる。

 これにより姉はアムルになり、結果的に殺された。


 カランというロボットが関わっているとヒトミから聞いた。

 しかしそんなことどうでもよかった。

 ノゾムにとって重要なことは、誰か姉を殺したかということだった。

 花村タケシ‥

 南守、北守、東守、西守。

 すべて破滅させてやる。


 手始めに南守の、僕を裏切ったアキ兄、マユ姉に復讐してやる。

 ノゾムは遺伝子注入システムの先をベッドの上のヒトミに向けた。

 そしてボタンに手をかける。


 なぜか手が震えるのがわかった。

 ボタンを押す指に力が入らなかった。


「ノゾム?」


 物音に気づいてか、ヒトミが目を覚まし、遺伝子注入システムを持つノゾムを見た。ヒトミは優しい笑みを浮かべる。


「ノゾム、私はすべてわかってるわ。あなたが私を本当は憎んでいることも、あなたを裏切った伯父さん、お母さんを許せないことも……」


 ヒトミはベッドから降り、ノゾムに近寄った。遺伝子注入システムを抱えるノゾムを包むように抱きしめる。


「でもそれでもいいの。私はあなたを愛している。あなたのためなら何でもするわ。あなたになら殺されてもいいの」


 ヒトミはノゾムに口づけると、遺伝子注入システムの先を自分に当てた。ボタンの上に置かれたノゾムの指に自分の指を重ねる。


「あなたの役に立ちたいの。あなたのためにアムルになる。そしてハナムラを生むわ」


 ヒトミはそう言い、ボタンを押す指に力を込めた。


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