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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第六章 作り出される運命
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脱走したヒトミ

 部屋の奥でとんっと音がして、ベッドから誰かが起きたのがわかった。


「ヒトシか?町田か?起きたのか?」


 部屋の奥で休んでいるのはヒトシとアナンだった。目の前のマサシは静かな寝息を立てて寝ている。


 ヨウスケは部屋の奥から誰かが歩いてくるのがわかった。


「ま、町田?」


 現れた女性にヨウスケは戸惑った。アナンには間違いないと思うのだが、その髪は銀色の輝いており、妖艶は笑みを浮かべてこちらを見ていた。


「あらあ。マサシもまだ寝てるのね。つまんないわ」


 銀色の髪を持つアナンはヨウスケの目の前のベッドで眠るマサシを見ると、残念そうに唇を尖らす。


「お前はだれだ?町田か?」


 ヨウスケは警戒してそう尋ねた。マサシやヒトシのようにアナンが何か意識を乗っ取られたと感じていた。


「大丈夫。警戒しないでよ。あたしはアムル。ハナムラの力でようやく目覚めることができたわ。でもあたしはアナンの邪魔をする気まったくないから。アナンが疲れてるから、あたしが代わりに出てるだけなの」


 アナン――アムルはヨウスケに近づきながらそう答えた。


「やっぱり、いい男ね。アナンが気にするのもわかるわ」


 アムルはヨウスケの側に立つと、そっとその唇に自分の唇を重ねた。


「っつ、何やってるんだ。お前」


 ヨウスケはアムルを突き飛ばした。柔らかな冷たい感触がした。ヨウスケはアムルにキスされて自分が動揺していること気がついた。しかし動揺を見せないように床に座り込むアムルを睨みつけた。


「ひどいわね。ちょっと挨拶しただけなのに」


アムルは顔を膨らませながら立ち上がった。


「ヨウスケ!何かあったのか?」

 ヨウスケの怒鳴り声を聞きつけて、中山、カラン、アキオが部屋に入ってきた。

ヨウスケの側にいる銀色の髪の女性――アムルを見て言葉を詰まらせる。


「こんにちは。皆さん。あたしはアムル。アナンの代わりちょっと意識に出てるの。あなた達に危害は加えないから安心して」


  アムルの笑顔はアナンのものとはまったく異なり、妖艶な、人を惑わしそうな魅力的な笑顔だった。



 馬鹿ね。

 ヒトミは中山たちが部屋に走りこむのを見ると、出入り口に目を向けた。出入り口を抜け、自分達が落ちてきた穴を這い出れば、外に出られるはずだった。

 ヒトミは出入り口から出て行こうとして、ふと遺伝子注入システムに目を留めた。


 これを使って、ハナムラの遺伝子を取り除くですって?

 あれだけの人を犠牲にして、ノゾムを不幸のどん底に叩き込んでおいて、

 自分達だけ幸せになろうなんて許せないわ。

 ノゾムがどれだけ苦しんだかわからせてやるわ。


 ヒトミは遺伝子注入システムを抱えると出入り口から逃げ出した。



「ヒトミ?!」


 穴から出てきた人物を見て、シュンイチは声を上げた。

 ヒトミは穴の周辺にシュンイチ他二人の影を認めると舌打ちをした。

 予想外のことだった。


 でもここで捕まるわけにはいかないわ。


 ヒトミは覚悟を決めると車の停めてある場所へ走りだした。


「東守、マコとここに残ってくれ。私はヒトミを追う」


 シュンイチはヒトミを追った。

 真っ暗な山の中を彼女は草をかき分け、木々を避けながら走っていた。

 闇に慣れてきたのか、シュンイチはヒトミの背中を見ることができた。その逃げ足は速く追いつけそうもなく、拳銃を取り出すとその足に向けて銃弾を放った。


「いっつ!」


 ヒトミは声を漏らして倒れた。


「すまない。逃がすわけにはいかないんだ」


 シュンイチヒトミの側に立ったが、彼女は遺伝子注入システムを抱えて足から血を流しながらシュンイチを睨みつける。


「北守はやっぱり違うわね。息子といい迷いがないわ」


 ヒトミの言葉にシュンイチは何も答えず、ヒトミに側に腰を下ろす。銃を持ってないか確認し、連れていくつもりだった。


「北守さん」


 ふと、ぞっとするような冷たい声がして、頭に冷たいものが突きつけられたのがわかった。


「ノゾム!」


 ヒトミはノゾムの姿を見ると笑顔を見せた。


「野中くん、歩ける?先に車のところへ歩いていって」

「わかったわ」


 ヒトミはよろよろを立ち上がると、撃たれた足を引き擦りながら先へ歩き始めた。


「どうするつもりだ。殺すか?」

「どうしましょうか。とりあえず、野中くんがやられた分は返しますね」


 ノゾムはそう言うとシュンイチの背中を蹴りつけ、その背中に銃弾を2発叩き込んだ。


「くっつ」


 シュンイチは痛みで顔をゆがめた。


「じゃ、僕はこれで。南守さんによろしくお伝えください」


 地面にうずくまるシュンイチを見ながらそう言うと、ノゾムは踵を返しヒトミを追った。


「青井!」


 シュンイチがそう叫んだがノゾムが振り向くことはなかった。

 銃声に驚いた鳥達が山に再び戻ってきて、鳴いているのが聞こえた。

 闇の中で鳥の声が頭の中で木霊して意識が遠のくのがわかった。

 どれくらい時間が経過したのか、ふいに自分を呼ぶ声がした。


「シュンイチさん!シュンイチさん!」 


 それは愛しいマコの声だった。


「ごめんなさい」


 マコは地面に倒れるシュンイチを抱き起こすとそう言った。その瞳から涙が溢れているのが見える。


「マコ、お前はまったく」


 マコを追ってきたのかタカノリが息を切らせて後からやってきたが、シュンイチの傷を見ると息を呑む。


「大丈夫だ。傷は深くはない」


 シュンイチは血に濡れた手でマコの頬を優しく撫でた。



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