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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第六章 作り出される運命
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少年の正体は?

「大野ぉ?」


 出版社に掛け記者のことを聞くと電話番の男はそう言った。


「あいつは今いないぜ。あんた誰?なんか用?」


 電話対応がなってないなあと中山を思いながら、あのような売れなさそうなオカルト雑誌を出している出版社だからしょうがないかもなと苦笑した。


「俺の名前は中山ノボル。大野さんが書いた銀色の髪で亡くなった少女の記事について興味あるので戻ってきたら電話を折り返しくれるように伝えてください」


 中山は携帯電話の番号を残し、電話を切った。

 腕時計を見ると時間は7時を回っていた。

 周りを見渡すと山はすっかり夜を迎え、虫の鳴く声が聞こえ始めていた。

 電話を待つ気がなかった。あの調子では伝言もきちんと伝わるか定かではなかった。

 中山は車に乗り込むとエンジンを掛けた。静かな山の中で中山の車のエンジン音が響く。ヘッドライトが山道を照らし、中山はハンドルを両手で握るとアクセルを踏み、車を走らせた。

 シュンイチたちを追って病院へ向かうつもりだった。



「青井さん?」


 駐車場に停めてある車に乗り込もうとしたところ、そう声を掛けられた。アキオが声をかけてきた男を睨みつけ、野中ヒトミは青井ノゾムの前に立った。ノゾムはその細い目をますます細くして男を見た。


「俺は大野だ。記者をやってる。4日前に送った記事読んでくれたか?」

「記事?」


 ノゾムはふと4日前に大学に届けられた封筒を思い出した。送り主が書いておらず、時間もなくそのまま放置していたような覚えがあった。どこにおいたのか記憶にないくらいだった。


「やっぱり読んでないんだな。あんたなら絶対に興味あるはずだ。神隠しにあった後、数年後に銀色の髪で死ぬ少女の記事だ。しかもその1件だけじゃない。数十年前も同じことがあった。確かあんたの姉も神隠しにあって、その数年後に行方不明になっているよな」


 大野の言葉にノゾムだけでなく、アキオもヒトミも動きを止め、大野を見た。

 銀色の髪で死ぬ。それは運命の女の特徴だった。


「どうだ?俺の情報を買わないか?あんたら金はあるんだろう?」


 大野は無精ひげを生やした口元ににやけた笑みを浮かべた。


「おもしろそうだね。いくら?どんな情報を他にもってるんだ?」

「ノゾム!」

「しっ」


 ヒトミが口を挟もうとするのをノゾムがその口元に指を触れ、止めた。


「俺の持ってる情報はその死んだ少女の村の住所と神隠しにあった場所だ。どうだ?」

 

大野はそんな二人の様子をみながらも言葉を続けた。


「……わかった。買ってあげるよ」

「ノゾム!」

「野中くんは南守さんと町田アナンのことをよろしく。僕はこっちのほうを探してみる。また面白ことがわかりそうだ」

「でも!」

「大丈夫」


 ヒトミにノゾムはそう笑いかけると大野のほうを見た。


「さあ、取引と行こう。君、車持ってるんだろう?」

「ああ」


 心配そうなヒトミに手を振り、ノゾムは大野と共に駐車場の奥へ入って行った。


「ヒトミ、行くぞ」


 アキオはノゾムの背中を見送った後、車に乗り込んだ。ヒトミはしばらく二人の消えた駐車場の奥を見つめたが、ため息をつくと助手席に座った。


「伯父さん。急ぎましょう。ヒトシとマサシさんが動かないからってアナンがまだそこにいるとは限らないわ」


 アキオはヒトミの言葉にうなずくと車を出した。



「ほらね?」


 唖然としてるアナンの前でカランは腕を外してニッコリと笑った。

 腕は簡単に外れた。外れた腕の付け根から灰色の内部が見えた。

 アナンは気絶しそうになりながらも冷静になろうと頭を左右に振って、目を閉じた。

 頭がパンクしそうだった。


「アムル。落ち着いて。僕は君に危害を加えるつもりはないんだ。ただ君にしかできないことをお願いしたいんだ。」

「な、なに?」


 ヒトシによく似た笑顔を向けられ、アナンは警戒をしながらもカランを見た。


「君の先祖が僕に命じたこと、それを解除してほしいんだ。カムルの子孫の君にならできるはずだ。僕はカムルによって作られた。そして1000年以上もアムルを作りつづけた。僕はこの作業から解放されて、静かに眠りたい」


 アナンはカランの言葉をじっと聞いていた。

 アムルというのが運命の女性であることはなんとなくわかった。そして自分がカムルというものの子孫であることも。

 でも理解できないことが多かった。

 信じられないことも多かった。

 アナンは深呼吸をした。


「あなたの願い、わかったわ。でも色々納得できないことがあるの。まず私はアムルっていう名じゃないわ。そしてアムル作りって何?カムルってなんなのよ?!」

 カランは自分を睨みつけるアナンをじっと見つめた。そして微笑を浮かべると口を開いた。


「アナンか。君はそういう名前なんだね。じゃ、アナン。今から君には僕が知ってるすべてのことを話すよ」


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