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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第五章 憎しみを抱く者たち
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親子対決

「父さん!?」


 木々を切り倒す音がして、人が宙から降り立った。

 それは父のマサシだった。


「父さん?!なんでここに?」


 いつもと雰囲気が違うマサシに疑問を持ちながらそう聞いた。


「お前1人か。アナンの気配も感じたんだけどな」


 マサシはヒトシの問いに答えずそう言った。


「なんだ。お前は元に戻ったのか。つまらないな。地球人の意識のままのお前じゃ私の相手にはならないな。もっともハナムラになったところで昔の記憶もない半端者じゃ、しょうがないがな」


 ヒトシは父が言うことが理解できなかった。言っていることはわかった。しかし、地球人という言い方が理解できなかった。


「覚えてないのか。どうしようもないな。まあ、お前は延命できないでここで死ぬからいいがな。私がアナンを貰い受ける。楽しませてもらうよ」


 マサシはヒトシに背を向けると森の中へ歩き出した。解放された力によって、マサシは島以外でも気を探れるようになっていた。アナンの気配はすぐ近くに感じられた。


「父さん!」


 ヒトシはそう叫ぶと父の前に飛び、その前に立ちふさがった。


「町田先生を殺させるわけにはいかない。父さん!目を覚ましてよ。花村に支配されないで!」


 ヒトシはマサシの腕を掴むとそう叫んだ。


「うざいな」


 マサシは自分を掴むヒトシの手を引きはがすと投げ飛ばした。ヒトシの体が木にぶつかり、木が折れる。


「父さん!」


 ヒトシはよろよろと立ち上がりマサシを睨んだ。


「面倒だな。今ここで殺してやる」


 マサシはそう言うとヒトシに手の平を向けた。

 止めろ!

 ヒトシは殺させない!

 ふいにマサシの脳裏に声が響いた。


「まだ残っていのか」


 マサシは舌打ちをした。しかし体は言うことを聞かなくなっていた。


「ヒトシ、私に向かって力を放て」


 マサシはそう言った。


「父さん?!」

「黙れ!」


 マサシは首を横に振ると力を込めて、下げられた手を再びヒトシに向けた。


「ヒトシ、打て。そうじゃないと町田先生が、黙れ!」


 マサシは汗をびっしょりとかいていた。歯を食いしばり、辛そうに眉を寄せる。


「ヒトシ、お願いだ。私も町田先生を守りたい。殺したくないんだ。だから……黙れ!」


 マサシが咆哮を上げた。するとマサシの表情から苦しみが消えた。


「ふん、消えたか……」


 マサシは舌打ちをするとヒトシを見つめた。


 ヒトシ!力を放て!お願いだ!

 そんな父マサシの声がヒトシに届いた気がした。ヒトシは唇を噛むと両手をマサシに向けた。

 父さん!頼む。死なないで!


「!」


 眩しい光がヒトシの両手から放たれた。その光はマサシに向かって一直線に伸びる。


「うおお!」


 マサシの声が上がる。

 森の中で爆発音が響き渡った。森で休んでいた鳥達が一斉に飛び立つ。

 数秒後、光が消え、砂埃がゆっくりと風に流される。

 視界が回復し、ヒトシから少し離れたところに父マサシが地面に倒れているのが見えた。

 微動すらしなかった。


「父さん!」


 ヒトシがマサシに駆け寄ろうとすると吐き気がこみ上げてきた。


「ごほっつ」


 ヒトシは自分の口から血が量に吐き出されるのがわかった。しかし、ヒトシはどうすることもできなかった。意識が遠のいた。体に力が入らなかった。そしてそのまま血の塊の中に倒れこんだ。


 森の中に静けさが戻る。

 夜を迎えようとする森に、二人の体は静かに、ただ横たわっていた。

 


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