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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第五章 憎しみを抱く者たち
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ノゾムの別のプラン

「野中くん!」

「ヒトミ!」


 青井ノゾムと南守アキオが研究施設に戻ってくると1階で倒れているヒトミを見つけた。

ノゾムはヒトミを抱き起こし呼びかける。するとゆっくりだが目を開けた。


「ノゾム……」


 ヒトミは自分を抱くのがノゾムであることを確認し、嬉しそうに微笑えむ。


「何があったんだ?」


 アキオは1階ロビーに当たる場所を見渡しながらそう聞いた。倒れていたヒトミ、床に落ちた衝撃で壊れたと思われる電話以外は何もおかしなことはなかった。


「ヒトシが、ヒトシが町田アナンを連れて逃げたわ」


 ヒトミは悔しそうに顔を歪めてそう答え、ノゾムは彼女から手を放すと立ち上がる。

 細い目をますます細くした。


「野中くん、町田アナンとヒトシくんに発信機はつけているかい?」

「ええ、それはね」


 ヒトミの言葉にノゾムは笑った。


「じゃあ、後を追うことは簡単だよね」

「それはそうだけど。力があるから面倒なことになるわね」

「僕はいいことを思いついたんだ。あの薬を使おう。花村は運命の女性に固執するらしいから、今度は 甥っ子にそれを使って覚醒させればおもしろいことになるかもしれない。花村同士で殺し合ってくれれば手間が省ける。もうヒトシの精子は保存してある。花村は用なしだからね。運命の女性さえこちらに戻ってくればそれでことは済むからね」


 楽しげに笑うノゾムに狂気を感じ、ヒトミは顔を強張らせた。しかし、ヒトミはノゾムが例え何をしようとも最後まで一緒にいるつもりだった。


「それでどうするんだ?マサシはヒトシと違って賢いぞ」


 アキオがノゾムの自信満々の態度に釘を打つように言い募る。


「マサシくんは今橘総合病院に入院しているんですよ。かなり重症で寝たままらしいです。意識のない 花村は普通の人間と同じ、簡単に薬を注入できるでしょう」

「病院には北守達もいるはずだ。そう簡単ではないと思うが」


 アキオの言葉にノゾムは口元を歪めた。


「それは大丈夫ですよ。多分彼らはここに向かってくるはずですから」

「どういうことだ?」


 アキオが眉をひそめると、ノゾムは手を大げさに広げ落胆したようなポーズを見せた。


「中山くんですよ。今日のミーティングをぶち壊した中山くんがこの場所もすぐに突き止めるはずです。彼は宮川教授と親しいみたいですから。この場所も多分宮川教授の線ですぐに見つけられるはずです」

「それじゃあ、すぐに出発したほうがよさそうね」


 ヒトミが小さく息を吐き、ノゾムは天井を仰ぐ。


「でもその前にいくつか持ち出さないといけないものがあるけどね」




「ここで車を拾おう」


 ヒトシはそう言って山道を下り、舗装された道路にアナンを連れてきた。

 二人はその道をひたすら歩き、何も話さなかった。

 アナンは何を話していいかわからなかった。

 ただつながれた手から温もりが伝わった。

 秋を迎えた山は花の島と違いすこし肌寒かった。

 だからその温もりが余計アナンを暖めた。



 病院の近くのホテルにマコとヨウスケは部屋を取っていた。

 マコは病院から戻ったが寝つけず、マサシの部屋から持ってきた青井メグミの日記を手に取った。ヨウスケ達の姿が部屋から消えた時、ものが散乱してる部屋の中で見つけたものだった。

 メグミが日記をつけていたのは知っていた。しかしメグミが亡くなってバタバタしているうちに見つけられなくなっていた。

 タケシが自殺して、マコは長い間その存在を忘れていた。

 どうしてマサシの部屋と思ったが、マコは気になって持ってきてしまった。故人のものとはいえ、タケシの唯一愛した女性、運命の女性の心理を知りたくなり、日記を広げ読み始めた。




 おかしいな。


 青井ノゾムたちが潜伏しているはずの研究施設に中山が到着したのは、それから1時間ほどしてからだった。

 中山は車の姿がないことに疑問をもった。山奥である。車以外に移動手段はないはずだった。


 いないのか?


 ふと携帯電話を取り出し北守シュンイチにこのことを伝えようと思ったが、まだいないと決まったわけではないとポケットに再び戻した。


 確認するか。


 中山は少し離れたところに車を停めると車を降り、施設に向かって歩き始めた。


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