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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第四章 目覚め
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守家の会合

 アナンは花村家の玄関の前で躊躇していた。

 2日前ヒトシにさらわれそうになり、マサシとヨウスケに助けてもらったようだった。しかしヒトシは青井メグミの弟のノゾムとヒトミ達に連れ去られたと聞いていた。


 様子のおかしかった花村くん。

 薬のせいだとは聞いたけど……。


 アナン……。

 自分をそう呼ぶヒトシの声が脳裏から離れなかった。

 青井メグミの日記はあれから怖くて読めてなかった。

 メグミが花村タケシに惹かれていくのがわかり、自分もそのうちヒトシやマサシなど花村家に囚われるかもしれないと怖かった。


 アナンはため息をついて抱えているお盆を見た。お盆の上で温かそうなご飯やみそ汁が湯気を出している。用事で出るから代わりにマサシに昼食を持って行ってとマコに頼まれたものだった。


 このままここにいたらご飯が冷めちゃうわ。

 中には中山っていうお医者さんもいるみたいだし……。


 再度ため息とつくとアナンはドアベルを押した。

 しかし誰も出て来る様子はなかった。

 再度押したがドアは閉まったままだった。


 ドアノブに手をかけると玄関が開いた。


 しょうがないか。

 マコさんも誰も出なかったら勝手に家に入って台所に置いておくようにと言ってたし。


 アナンは再度ため息をつくとお盆を抱え家に入った。




 西守タダオの家で南守を除く守家が集まり会合を開いていた。その目的はヒトシが青井ノゾムに奪われ、これからどう対策をとるかであった。


「ヒトシは切り捨てたほうがいいんじゃないか。北守」


 東守タカノリはふいに北守シュンイチにそう提案した。シュンイチは眉をひそめるとタカノリを見つめた。


「青井ノゾムが医学界でも変人として名が通ってるらしいじゃないか。だから奴が何をしても無駄だろう。しかもヒトシはあと3カ月の命だ。それよりも町田アナンにマサシの子供を産ませたほうが合理的じゃないか」

「東守。なかなかいい提案だな。俺は賛成だ。町田アナンが島にいるんだ。そうしたほうがいい。北守もそう思わないか」


 シュンイチは東守タカノリの提案に満足そうに頷く西守タダオを睨みつけた。


「私は守家の頭として反対する。青井ノゾムが変人と言われていても確かな研究結果を発表すれば医学界も黙っていないはずだ。そうなると島はおしまいだ。そして守家のやってきたことはすべて明るみに出る。そうなると困るのは私達だ。東守、西守。わかってるな?」


 シュンイチがそう言うと西守タダオは俯き、東守タカノリは皮肉気な笑みを浮かべた。


「南守のことはどうするんだ?奴がマスコミに話すことも考えられるぞ。そうなるとヒトシなどに構っていられない。すべておしまいだ。」

「それはありえない」


 シュンイチが切るように返すとタカノリは黙りこくった。


「西守は警察方面から、東守は港方面から引き続き青井ノゾムの行方を捜索してくれ。私はヨウスケと再度青井の家に向かう」


 二人に指示を飛ばしシュンイチは畳から腰を上げる。二人に背を向けると、襖を開け座敷を出た。


「あれ、北守さん。もう帰られるんですか?」


 お盆にお酒の入った徳利を乗せたノリコが玄関へ歩いていくシュンイチを呼びとめた。


「ああ。急ぎの用があるんだ。ノリコさんのおいしいお酒はまた今度いただくよ」

「おいしいなんて。ふふ」


 年は取ったが息子と同じで整った顔のシュンイチに微笑まれてノリコが年外にもなくその顔を少し赤らめた。


「おい、ノリコ!」


 座敷の外でノリコとシュンイチの会話を聞いたのか、不機嫌そうな西守タダオの声がノリコを呼んだ。


「はい、はい~」


 ノリコは慌てて返事をするとシュンイチにぺこりと頭を下げて座敷に入っていった。

 シュンイチは表情を笑顔から厳しいものに変えると西守家の玄関を出て、息子ヨウスケが待っているはずの場所へ向かった。


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