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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第三章 過去の因縁
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ヒトシ奪還2

「マサシくん、初めて会う叔父に挨拶もないのかい?」


 青井ノゾムは穏やかな笑みを浮かべていたが、その目は鋭く笑っていなかった。


「ヒトシに何をしたんだ?」


 マサシはノゾムを睨み付けたまま再度聞いた。

 白衣の血はヒトシの血に違いなく、母の弟だろうがなんだろうか息子を傷つけるものは許せなかった。


「あっちに寝てるわ。自分で確認したら?」


 ヒトミは手にはめてる血のついた手袋を脱ぎながら部屋の奥を指差す。そこには手術台のようなものがあり、そこにヒトシが横になってる姿が見えた。


「ヒトシ!」


 マサシは手術台に駆け寄る。シュンイチはじっとアキオを見つめたまま動かなかった。何か罠が仕掛けられてる予感がし、下手に動きたくなかったからだ。


「勘がいいな」


 アキオはシュンイチを見つめ返し、ヒトミは着ている白衣を脱ぎ捨てると壁に設置されてるボタンを押した。壁が音と立てて閉まり始めた。


「マサシ!」


 シュンイチが慌てて壁に走り、ボタンを押すが壁が閉まったままで動かなかった。


「じゃ、北守さん」


 ノゾムはシュンイチに笑いかけると、すばやく別の壁を叩き、現れた入り口に飛び込んだ。ヒトミはその後を追い、アキオは床に落ちた拳銃を拾うと銃口をシュンイチに向けた。


「北守。またな」


 アキオは引き金を引いた。銃声がしてシュンイチの腕から血が流れる。


「っつ」

「しばらくゆっくり休むがいい」


 血を流す腕を強く掴みその場にうずくまるシュンイチを一瞥すると、アキオはヒトミの後を追った。


「南守!」


 咆哮するシュンイチの前で入り口が閉められる。




 自分を呼ぶ声が聞こえた。

 目を開けるとそれは父親のマサシだった。


「よかった……」


 マサシは安堵の息をつくとヒトシを抱きしめる。


 どういうことだ?

 何で俺はここに?

 父さんがなんで?

 

 呆然としているヒトシの耳に、銃声とシュンイチの声が届いた。


「シュンイチさん!」


 マサシはヒトシを抱いたまま、シュンイチの元に飛んだ。


「マサシか、ヒトシも無事だったか」


 目の前に現われたマサシとヒトシを見てシュンイチはほっとした声を出す。


「アキオさんに撃たれたんですね?」


 マサシの問いにシュンイチは出血する腕を押さえながらうなずいた。


 ここは?

 そうか。ばあちゃんの弟という奴の家か……。

 ヒトミに注射を打たれて眠ったのか。


 ひどい頭痛がする。

 腕には注射の痕が見えた。


「ヒトシ、自分で移動できる?」


 ぼうっとしてるヒトシにマサシは声をかけ、シュンイチに肩を貸し立ち上がる。この状況でヒトシまで連れて飛ぶのは難しかった。


「大丈夫」


 ヒトシはマサシの問いに頷く。


 とりあえず意識ははっきりしていた。体に違和感もない。

 ただひどい頭痛がした。


「じゃ、飛ぶよ」


 マサシはそう言うとシュンイチと共に姿を消した。ヒトシはノゾムの家を思い浮かべて飛ぶ。

 1階のノゾムの家は来たときと同じ様子だった。マサシは追ってきたヒトシの姿を見てほっとした。


「マサシ、南守たちがまだ外にいるかもしれない」


 シュンイチの言葉を聞き、マサシは家の外へ飛び出し、確認しようと宙に浮く。しかしアキオたちの姿は見えなかった。


「ヒトシ!」


 ふいに家の中からシュンイチの声が聞こえ、マサシは捜索するのを中断し、家の中に戻った。

 倒れたヒトシをシュンイチが抱き起こしていた。マサシはシュンイチからヒトシを預かると呼吸を確認する。

 規則的な呼吸が聞こえた。体にも注射の痕以外は傷は見当たらなかった。


「マサシ、島に戻ろう。中山にヒトシを見てもらえばいい。私の傷も見てもらう必要があるしな。これからのことを考えるのはそれからだ」


 シュンイチは腕の傷をハンカチで止血しながらそう言った。


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