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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第三章 過去の因縁
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逃亡

「おい、町田。いるのか?」


 返事はなかった。しかしヨウスケは部屋の中で何かが壁にぶつかる音を聞いた。


「いるのか?入るぞ」


 異変を感じてヨウスケは襖を開けた。すると部屋は真っ暗で窓が開け放たれていた。そこから入り込む風で部屋の物が飛ばされ壁にぶつかったようだった。


「あの馬鹿……」


 ヨウスケは窓の外を見ながらつぶやいた。

 昼間何かあったに違いない。


(ヒトシに抱かれたのか?それで怖くなって逃げたのか?)


 ヨウスケは舌打ちするとアナンを探すべく車を出した。


「はっ、はっ」


 アナンは走っていた。桟橋を目指して走っていた。

 船にさえ乗れば追って来られないはずだった。


(追ってきたとしても警察所に駆け込めば……)


 桟橋が見え、本土に帰る船が見えた。

 それはアナンが2週間前に乗ってきた船だった。


 アナンが安堵のため立ち止まり、息を整えていると車のクラクションが鳴る。


「町田!」


 そして自分を呼ぶ声がした。


(北守だわ)


 アナンは怖くなって走り出した。

 つかまったら最後だと思ったからだ。

 ヨウスケは舌打ちして車を降りるとアナンを追い、その腕を掴む。


「離して!お願い。私は死にたくないの。お願い、北守」


 アナンは手足をばたつかせながらそう叫んだ。

 暗闇の中、島の人はすでに家に帰っているのが通りすがる人はいなかった。しかしヨウスケはアナンの口を押さえ、声を出せないようにすると無理やり抱きかかえて車に乗せた。


「北守!いや。お願い!」

「落ち着け!」


 ヨウスケは後部座席で暴れるアナンを抱きしめた。


「大丈夫だ。俺がなんとかする」


 アナンはヨウスケの体の温かさを感じ、その声に優しさを覚え、暴れるのをやめた。


「俺に話してみろ。何があった?」


 ヨウスケはアナンの顔を見つめるとそう聞いた。それはアナンが島に来て始めてみるヨウスケの優しい顔だった。



「……」


 暗闇の中、桟橋近くの建物の屋根にマサシは立っていた。

 ヒトシの気がふいに島から消えた。

 島以外では気を探れない。

 だからヒトシが島を出たのは確実だった。


(どうやって?飛んだのか?)


 そう思っていたらアナンの気がふいに高まり、島の端へ動いた。

 関連があると思って飛んできたら二人の姿をみた。

 安堵とともに胸がざわつくのがわかった。


 しかしマサシはそんな自分の気持ちを冷笑すると、ヒトシが島から消えた真相を知ってると思われる人物、北守シュンイチに問い詰めるべく飛んだ。



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