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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
二章 届かぬ思い
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試み

 アナンがヨウスケと共に、花村家に行くとマサシが出迎えた。

 そしてヒトシを呼ぶと不機嫌そうな顔で降りてくる。


「ヒトシ、お前、今日またサボっただろう?単位足りなくて卒業できなくなるぞ」

「……お前には関係ない」


 ヒトシはヨウスケにそう答えるとそっぽと向いた。


(どうしたのかしら?数日前までは仲良かったのに)


 彼の様子にアナンは違和感を覚えており、ヨウスケもそれは同様らしく肩をすくめている。

 だが、用事があって来たのだからと、彼に気を使うことなく、ヨウスケはマサシに勧められるまま、玄関をあがった。アナンは不機嫌そうなヒトシを気にしながらも、ヨウスケの後を追って家に上がりこんだ。


「町田先生の血を舐める?!」


 ヨウスケの言葉にヒトシは素っ頓狂な声を上げた。


「そうなの。私の血を舐めればきっと十八歳を超えても大丈夫のはずよ」

「ほら、血で感染するっていうだろう。多分ヒトシの体に町田の遺伝子情報っていうかウイルスっていうか、それをを入れると、寝るのと同じ効果が得られると思うんだ」


 ヨウスケとアナンの説明をヒトシは黙っていた。十八歳を超えて生きていくつもりがなかったから考えたこともないことだった。


「試す価値はあるかもしれないね」


 マサシはそう口にした。


「ヒトシ、試してみたら?」

「花村くん、セックスは嫌だけど、血ならいくらでも提供するわよ」


 生々しくそう言われ、ヒトシは少しだけ引いてしまった。するとアナンも言い過ぎたかとちょっとだけ頬を赤らめた。それがなんだか可愛く思えて、ヒトシはアナンの顔を注視する。だがアナンは慌てて視線を逸らした。

 それが銀の目に囚われるのが嫌だから、と理由はわかっていたが、ヒトシはアナンをもっと見つめたくて残念に思えた。


「ほら、ヒトシ。やろうぜ。俺、包丁とってくる」

「包丁?!そんなに切るの?ナイフにしてよ」


 ヨウスケとアナンのやり取りにマサシは苦笑した。ヨウスケは小さめのナイフを台所から持ってくるとアナンに渡す。


「別に今日じゃなくてもいいんじゃないか」


 思わずヒトシはそう言った。

 ヒトシはアナンと離れたくなかった。これが成功すればアナンが島を出て行くのはわかっていた。


「ううん。せっかくだから今日試してみましょう」


 アナンはそう答え、深呼吸すると手の平を上に向け、人差し指をナイフの先で少し切った。赤い血が流れ始める。


「いっつ。早く花村くん」


 アナンの白い指から真っ赤な血で出ていた。しかしアナンは痛みで眉をひそめながらもヒトシに指を差し出した。ヒトシは戸惑いながらも指を口の中に入れる。

 アナンの鼓動が聞こえてくるようだった。

 口の中に鉄の味が広がる。

 鉄なのに甘い味だった。


「花村くん、もういいと思うけど」


 そんなに長く舐めていた気がしないけど、アナンが顔を赤くしてそう言った。ヒトシも自然に顔が赤らみ、指から口を離した。


「絆創膏とってきますね」


 マサシはそんな二人に笑いかけ、救急箱のある部屋の奥へと消えた。


「成功すればいいけど。でもどうやってわかるんだ?やっぱり誕生日まで待たないといけないか……」


 ヨウスケの言葉にアナンの顔が曇る。


(考えてなかった。そうか、結果は十八歳を迎えたときに死ななかったら成功したってことだもんね。もし失敗してたら死んでしまう)


 アナンはそっとヒトシを窺うとヒトシは笑い返した。

 かわいらしい笑顔だった。

 アナンは思わず顔を逸らしてしまう。


(だからといって、どうすればいいの。犠牲にならないといけないの?)


 アナンの自身に問いかけ、泥沼に引き込まれるような気持ちに陥った。


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