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花の島の秘密  作者: ありま氷炎
第一章 波乱の赴任日
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仕方ない選択

 北守シュンイチが南守家につくと明かりは消え、人の気配がしなかった。呼び鈴を何度も押すが誰も出てこず、携帯電話も自宅電話も通じなくなっていた。


(やはり逃げた後か……)


 北守シュンイチは車に戻りながら、これから色々と根回しする必要を感じていた。



「信じられない!!」


 聞き終わってアナンがもらした言葉がそれだった。

 

(信じられなかった。そんな一族がいるなんて、しかも自分が関わっているなんて。だからあの銀色の瞳に囚われたのね)


 けれども、彼女はヒトシとそういう関係になるつもりは毛頭なかった。


(子供を生んで死ぬなんて、虫とかじゃないんだから!)


「私は明日島を出て行きます。秘密は他言しません。だから私に近づかないでください!」

「島を出るのはやめたほうがいいです。というか反対です」

「なぜですか?」


 アナンはマサシを睨み付ける。


「まだ南守家が狙ってるかもしれません。外ならあなたを守れません。ここなら私が力を使って守れます」

「俺も守ってやれる」


 マサシの言葉に同調してヒトシもそう言った。


(守るって、いや、余計危ない気がするんだけど……)


 銀色の目を持つ花村家はアナンにはとってある意味危険だった。


「そうだな。町田。この島のほうが安全だ。南守の様子が分からない今、下手に動かないほうがいい。攫われたらきっと解剖とかされるそ」

「か、解剖?!」


 ヨウスケの言葉にアナンはぎょっとして目を開いた。


「そうかもしれませんね。きっと南守の人は科学者と通じてるはすですし」

「でもその前に子供がいるか確認するだろう?」


 アナンの目の前でそんな会話がされるのをアナンは呆然として聞いていた。


(科学者とか、解剖とか。SFですか???っていうかこの花村家の存在自体がSFか……)


 結局こうしてアナンは島に残ることになった。


「じゃ、先生。明日!」


 ヒトシは明るく手を振る。

 アナンは引きつった笑いを浮かべながら手を振り返した。


「じゃあ、お前は一階の客間な」


 ヨウスケが面倒くさそうに玄関から見える奥の部屋を指す。

 今日は一人じゃ危ないということでヨウスケの家に泊まることになった。始めはヒトシが自分の家にと言っていたが、先ほどのこともあり断った。


(花村家のふたりがいる家に泊ったらどうなるかわからないわ。本当寝ちゃったら子供ができて、出産後に死ぬなんて信じられない)


 それでもアナンはあの銀色の瞳に見つめられた時の感覚は覚えており、身震いする。


(もしあの時、北守が花村くんに電話しなかったら……)


 そう思うとアナンはぞっとした。

 彼女はまだ死にたくなかった。


「お前……風呂入る?風呂は客間の右手にあるから」


 ヨウスケはとんとんと階段を昇っていく。


「ああ、そう。タオルとかも風呂場にあるから」


 言い忘れていたのかニ階からヨウスケは顔をひょいと顔を覗かせた。


「あ、ありがとう」


 アナンはそう答えながら部屋に入った。ヨウスケの両親は出かけているようだった。

 部屋に入るとはそこは六畳くらいの座敷部屋だった。家具はなく、襖を開けるとそこは押入れで布団一式が置かれていた。


 アナンは布団を引く気力もなく、お風呂にいく元気もなく、壁に背をもたれさせるとそのまま、すとんと座り込んだ。

 体中が疲れていた。



「父さん」


 風呂上りに父マサシが居間でコーヒーを飲んでるのを見て、ヒトシは声をかけた。


「もし父さんが町田先生に手を出すくらいだったら、俺が貰うから。俺でも父さんでも結果は同じだろう?」


 マサシはヒトシの言葉に一瞬びっくりしたが笑い出す。


「そんなことはありえないよ」

「そうかな?町田先生の近くにいたら多分父さんも抑えられなくなる。だから気をつけて」

「分かってるよ」


 息子の頭をくしゃくしゃ撫でながらマサシは笑った。


(確かに危険だった。あの時、ヒトシたちが来なかったら自分も囚われていたかもしれない。アナンを抱きとめたとき、その唇とシャツから覗く白い肌に目が奪われた。キスくらいはしていたかもしれない)


「父さん?」

「もう一度お風呂に入るかな。今日はめずらしく力を結構使って、汗かいたし」


 マサシは自分の考えに苦笑しながら風呂場に向かって歩き出した。


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