一軒家の縁側にて〜1〜
「ただいまー」
年季の入った住宅、玄関の引き戸をガラガラっと音を立てて開けながら、女性が家の中に声をかける。
だが、家の中からは返事はない。
女性の名前は雛形ゆき(ヒナガタユキ)、大学3年生。
(そっか、今日は私が1番早い日か…)
ふと、今朝家族が言っていたことを思い出す。
(お父さんはいつも通りだし、お母さんはパート、雅樹は部活の子たちと勉強会だったっけ)
(しょうがないなぁ、冷たくなっちゃう前に洗濯物取り込んじゃおう。あとご飯も炊かなきゃねー)
ゆきはあまり独り言は言わないようだ。
持っていた荷物をリビングの隅に置き、洗濯物を干してある庭へ向かう。
「ふむ、なかなか勤勉じゃないか。」
!?
突然縁側から聞きなれない男の声が聞こえてきた。
ゆきは驚きながらも、声の元に目を移す。
「だ、誰?」
そこには、袴姿の少年が座っていた。
「俺か?俺は神さまだ!よろしくな、雛形ゆきさん!」
ゆきはあまりにもおかしな返答にキョトンとするばかりだ。
「神…さま?ていうか、私の名前…」
ゆきは不審に思いスマホを取り出した。
「警察…」
その様子を見て自らを神だと称した少年は慌てふためく。
「わぁっ!待て待て!話を聞けぇ!!」
こうして、ゆきと自称神さまと言う少年のドタバタ劇の始まるのであった。
続く。