第四話 雲とオカマの波乱の予感
全身に悪寒が走る。夢香ちゃんが・・・
ただ出雲は突っ立っていることしかできなかった。走馬灯のように夢香との思い出が次々と浮かんでくる。―だめだ、ここでたってるだけじゃだめだ。自分が助ければ!死んだわけじゃない!
自分に問い、自分で答え、意識を強く保つ。
―このままではだめだ!
そう思うと同時に出雲は走り出した。ひたすら走る。出雲は陸上部でもなかなかいい成績をもっている。走りには自信があった。
目の前に黒のワゴン車が出てきた。出雲は一瞬立ち止まったが夢香らしきシルエットを発見したためただ、ひたすらに走っていた。―我を忘れて。
どんどん車との差は広まっていく。車は大通りに出た。
―だめだ、追いつかない...見失うな!俺!
自分の足にムチを打ち、ただ走る。必死に。フォームが崩れようも靴がぬげようも気にせずにひたすら走った。しかし、現実はドラマのように追い付けるわけでもない。夜でもたくさんいる人々に邪魔され見失った。
* * * * * *
―ミズめええ!
かつこは怒りに怒っていた。ミズのメールをクラッキングし見た内容が想像を大きく越すものだった。
メールの相手は松平築造――と、表示されていた。
<おい、ミズ。貴様のところの団体があの忌々しきアババー教を管理しているんだな?>
松平から来ていた。
<すいません。しかしいい収入を得られてるのです。いまさらアババー教とは縁切れませんよ>
<なら、裁判をおこそうか?トンケがしていることはどこまで非道なのか!>
<それは、やめて下さい。電話で少し話しましょう。>
しかし、松平は肯定の返事はしなかった。
<わかりました。あなたたちアババー教撲滅委員会・・・・・・・・・・がアババー教から得ていた収入分を今後継続的に支払ってくれるのならアババー教を潰してもいいでしょう。>
ミズは金との交渉を持ちかけた。
<本当か!!ならよろこんで呑もう。いくらだ?>
<まずはじめに。トンケを殺害しろ。そうすることで傘下から強制的に排除させれる。俺がうまく立ち回って隠蔽する。金か?そうだな1000万くらいはどうだ>
<1000万払えと?そんな金なんか......――トンケを殺せばいいんだな?分かった。金は麻薬取引でなんとかする。>
<さすがにいきなりは無理だろうから時間を与える。トンケ殺害後毎ヶ月1000万払え。いいな?>
いつの間にかミズと松平の立場が逆転していた。
<築造。君はなぜそこまでしてアババー教を憎む?>
ミズは松平のみではなくアババー教撲滅委員会全体のことをさしていただろう。
<俺たちの団体は、アババー教によって悲惨な運命にあったものがほとんどだ。あんなカルト宗教がなぜ、あこまで勢力をもったんだ?>
かつこはここまでしか読めなかった。正確には見えなかった。目にはいつの間にか涙がたまっていた。何に対する涙なのかはわからない。しかしかつこはこのまま一生トンケを殺した犯人といい、関連性といいすべてが闇に葬られたままになるのは嫌だった。
―このままではだめねぃ...アタクシがすべてを変えてやるわ!!
かつこはアババー教信仰者ネットワークにて今見たこのやり取りの画像をすべて投稿した。
ミズの電話に盗聴器をつけそこできいたことを細かく説明した。
案の定、アババー教信仰者ネットワークの更新率が急上昇した。
しかし、誰も警察に提示しようとは言わなかった。それは自分たちの手でトンケを殺したものを殺そうと企んでいたからだ。
するとそこのネットワークに、現状アババー教リーダー、火煉が現れた。
* * * * * *
とある日の夜。ミケネコ連合重工建造広報省の前に一匹の三毛猫がいた。
そこに通りかかった白衣の男はポケットから注射器をとりだし、すばやい動きで迷うことなく三毛猫の首に刺した。猫はいやがらずただその場で耐えていた。いや、注射されるのをしっていたかのように落ち着いていた。
「よし、いい子だ。これから君は獣人へと変化できる。良かったな。これから起こる戦いで大きな役割を果たせ。」
白衣の男がいうと、猫はその言葉に反応するように獣人変化をした。
「ニャー。ん?にゃ、ああ、がぁ.......ああ、俺は喋れるのか。俺はマイケルだ。お前、名前は?」
片言であったが確かに喋った。その猫は、人のような猫のような姿で、顔は人の顔に目は猫の鋭い眼、ひげが生えていて違和感のない姿であった。
「なかなか話せてる。頭がいいな。俺は、政府の科学者、Dr.Hellgunだ。以後、お見知りおきを」
男は名を、ヘルガンと言った。