第二話 標的
教室についた。教室にはほとんど人がいて時間には間に合ってるのに遅れた感じがした。
今まで同じクラスになったことがあるのは、時空、月夜、夢香の3人だけ。できるたけ3人とちゃんと関わりをもっておいた方がよかったのかもしれないが月夜とは残念だが無理だ。
クラスに入るともう誕生したのか一部の男子グループが騒ぎ出した。
「フォォーーー!!!!イケメンが来たぁ~!!」
なんでもかんでも騒ぎ立てる、俺の苦手なタイプの人間だ。
見たところバスケ部にいそうな高身長で体格もなかなかいい奴が言った。
「こいつは出雲だ、焔はまだだ。」
言ったのは月夜だった。
もしかすると男が入ってくるたびにそう言ってるのかもしれない。月夜の考えてることが全く読めない。
そんな月夜の右目には黒色のカラコンが入っており、黄金に輝く月の眼は隠されていた。
「なんだ。お前の言う時空ってさ、―」
そこから先は聞き取れなかったがよからぬことを話していると一瞬で悟った。
座席についてしばらくすると眠そうにあくびをしながら時空が入ってきた。教室がざわつく。
時空は一番遅く着たからおそらく俺をああいう風に言った奴も気付いてるだろう。
なんでざわついてるのだろうか。時空はイケメンだしな、女子がキャーキャー言うのも無理はない。が、初日でそんなことなんてあるのか?
ざわついてる声のなかから声を聞き取る。
「あいつが焔ってやつか、ターゲットにするぞ。」
まさか。 ―声の聞こえたほうを見る。
そこには長身のあの男がいた。奴め...
すると隣の席にいた奴が話しかけてきた。
「なんか創斗ってやつが最後に来た奴をいじめようとかなんとかいっとったよ。ちなみに俺のデコは120平方cmやよ。宜しく。」
なれなれしく声をかけてきたが馴染みやすいキャラなのかいじられキャラなのか知らないがすぐに溶け込むことができた。こいつがデデコミズか。ハーフというから金髪を期待したが間違っていたな。
「おい。それは本当か!!?」
肩を揺さぶりながら言う。
「おう、そうだよ...強いな~。ちなみにおれのデコは120平方cmや。」
「ああ、すまねえ。――ところでお前ハーフじゃねえのか?渡辺デデコミズって。」
「あぁ、そうや。アババー星の父さんとここの母のハーフや。ちなみに俺のデコは120平方cmや」
アババー星?なんだその幼稚園児がつけそうな名前は。
「アババー星ってなんだ?空想上の星か?」
俺は笑いながら問いかけた。
「地球生まれの爺ちゃん婆ちゃんが好奇心でアババー星に行ってそこでトンケを産んだらしい。それでアババー教・・・・・とかいう宗教つくったみたいやけどそのトンケの息子や。別に凄い宗教なのかは分からんけど。父さん母さんはその後この然球に来てFLAME国に来たわけや。父さんのことは良くは思ってないけど...ちなみに俺のデコは120平方cm」
いちいちでこ自慢のうるさいやつだ。後こいつ説明が下手だな。まあまとめればアババー教開祖の息子ってわけか。しかしアババー星なんて惑星聞いたことがない。
そしてデコが100平方cmということか?
デデコミズは心を読んだのか「120平方cmだ!」と言う。
はいはい、分かりましたよ。
そうしていると担任教師が入ってきた。名を、"オズベルド"と言った。
「はじめまして、私はオズベルドと言います。これから一年間よろしくお願いします。では早速、おはようございます。」
一同がおはようございます。と、返す。しかしずいぶん短い挨拶だな。大抵はながながと挨拶をするのだがな。厳しそうだな。
一時間目は集会やら入学式やなんやらで終わった。そして休み時間も与えられずに先生が話し始めた。面倒くさいな。
「これから皆さんは世間でいう高校生です。大人に近づいています。日々の行動を高校生としての自覚を持ち、大人になるということを踏まえて過ごしましょう。」
あぁあぁ、面倒くさい。キレたら怖そうだなと思いながら右から左へ受け流していた。
「おいっ!そこ!何ぼーっとしている!!しっかり話を聞け!!今私は、なんと言った!!!」
いきなり怒鳴るもんだからさすがに驚いた。
どうやら時空に怒っているようだ。教室内が一瞬で静まり返る。オズベルドの怒鳴りといい形相といい今までとは比にならず高校生でも怖いと思うほどだった。
「しっかり人の話を聴く・・ということを守りましょう。初日でこんなこと言いたくなかったのですがね...誰かさんが外を眺めているからね...」
切り替えがうまい。しかし、当の時空は何食わぬ顔でいる。
―チャイムがなった。
休み時間俺は時空のところへ行った。
「おう、同じクラスになれてよかったな。改めてよろしくな。時空。」
なぜか緊張した。数年間顔あわせてないだけでこんなにも。
時空が口を開きかけたところであいつがきた。
「やあ白雲君。これが焔君かな?宜しく!!ちなみにでこは120平方...」
「まあデコッパゲだ。」俺がデデコミズの後を引き継ぐようにして言った。デデコミズは露骨に嫌な顔をしている。
「僕はいつから出雲の友達と友達にならなければいけなくなったのだ?」
皮肉交じりに言う。
「友達になれってことではないけど...」
「俺の名前はデデコミズ!宜しく!焔君!!」
珍しくデコ自慢しない。面倒臭くなったか? デコッパゲに限ってそんなことはない。
「出雲、少し一人にさせてくれ。」
「お、おう」
反射的に返事をしてしまった。デコッパゲの性格が苦手なのか?なんにしろ嫌な予感がする。
「白雲君~。焔君は挨拶どころか目を合わせることすらできないのか~?」
ああもう。このハゲはああいうタイプの奴も理解出来ないのか?
脳天に一発拳骨を見舞ってやった。「うわああぁぁ」と情けない声を出す。面白い奴だな。まさか高校生活始めての友達がこのデコッパゲとはな。ここのクラスのほとんどは中学校Lvからそのまま上がったが他の中学校から受験してきた人もいる。だから比較的クラス内では知人は多い。
他愛もない会話をデコッパゲとしていたら時空の席からドンッ!と音が鳴った。
「おい!お前確か左目に赤い傷あるんだよなぁ??見せてくれや」
あの長身の奴だ。長身の奴を中心格としてまわりに4,5人程度いる。あいつは別からの推薦で来た奴だ。推薦で来たのになぜあんなわかりやすい不良的なやつなんだ?
それであいつの名前は確か...
「誰から聞いた?そして人に物を頼む態度ではない。後君は誰だ?」
時空は続けざまに質問をする。時空の表情から心情は読めないが、余裕そうに見えた。
「おい!調子乗ってんじゃねえぞ?俺は辰本創斗。今日からクラスのリーダーだぁ!よろしくなぁ。」
そうだ。紅玉中学校バスケ部のキャプテンだった奴だ。バスケには興味はないが一応全国一位、世界大会へ導き準優勝へと導いた奴だ。成績も意外といいらしく焔月大都学園から推薦を受け見事入学。クラスのリーダー格としていろいろやっていたらしい。今日も早速リーダーっぽく振舞っていた。しかしそんな奴がどうしていじめっぽいことをしてるんだ?
「はあ。誰が君をリーダーと認めた。しかし初日から大群つれてるな。獲物でも見つけたか?」
この状況下でも皮肉を言う。それが創斗を怒らせた。
「おぉおぉ!!お前が獲物だぁ!!俺らの圧力にひれ伏すか言うこときけよなぁ!!」
机を思いっきり叩く。教室内が静まる。良いのか悪いのかオズベルド教諭はそこにはいなかった。
「なんなんだ君は。そんなに大声をださなくても聞こえる。」
時空が分かりやすく耳に指を突っ込む。
「チッ、第一印象最悪だな。おーい月夜~!!やっぱ生意気な餓鬼だなこいつ」
!? こいつら月夜と組んでいたのか。
「.....十六夜。何年ぶりの再開だ...?」
時空が言う。
「おう、焔。2年ぶりくらいか?久しぶりに焔の皮肉がきけて嬉しいよ。これからお互いがんばろうな」
この会話の後の沈黙がとても重く、長く感じた。まるで、近づいてはいけない何かがあるように。が休み時間の終了を知らすチャイムがなったことで沈黙は破られた。
時空はなにかいいたげだったがこらえて自席についた。