第九話 音速、現る。
約五か月ぶりの投稿です。文章能力が落ちてると思います。
すぐにあげたくて簡単に書きました。後々、改稿したいなと思ってます。
「今、どんな気持ちだ?」
白と黒の毛色に変化し、全身から蒸気を出しているマイケルは勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「ククク…たった一撃だ…それだけで勝ったと油断しない方がいいよ。まずは、僕の速さを超えないとね」
リックが言い終えるか否かの所で背後に強烈な殺気を感じた。マイケルだ。
マイケルは先刻同様、手刀を繰り出した。当然の如くリックはしゃがんで回避する。そのまましゃがんだバネを利用し、前方へと跳んだ。着地と同時にマイケルの方へターンし、走った。その間、1秒未満。
リックがマイケルの眼と鼻の先まで一瞬で移動する。ナイフを両目一直線に走らせた。
――が、切った感触はなかった。
「残像だ!」
マイケルはそう叫ぶと、リックの背後から首を絞め、地面に倒した。そして蹴りを入れる。追撃。リックは蹴られた衝撃で回転する。体制を整え、起立しようとしたときにはすでに背後にマイケルが立っていた。
「君…速くな――」
「話している暇などない。」
リックの背中に強烈な殴打が入る。リック全身に振動が起き、胃液を吐いた。リックは殴打の衝撃に耐えきれず、膝をつく。
「降参か?」
マイケルが笑みを浮かべながら問う。
リックがゆっくり口を開いた。
「里の中では…僕が一番速かった……実際、里を抜けても周りは遅く、僕が世界で一番速いんだと思っていた……しかし、そうじゃなかった…君は、僕より…今は速い……」
リックは意味深なワードを最後に、ゆっくりと腰につけられていた50kgの重りを外した。
マイケルの顔からは余裕が消える。表情に動揺が走った。本能が言った。逃げなければならない――と。
しかし行動に移す暇は存在しなかった。棒立ちのマイケルの背後にはリックがナイフを構えて立っていた。ナイフを振るう。痛みを感じる暇も与えずマイケルの前方に移動する。ナイフによる追撃。
少し退いて回し蹴りを腹にお見舞いした。1秒以内の攻撃。衝撃波と、攻撃のダメージが一斉にマイケルを襲う。
「ぐぉおおおおお!!!!」
マイケルの背中、腹、口から真っ赤な血が吐かれる。マイケルは蹴り飛ばされてオレンジのコンテナに埋まる。
「僕はもうリックじゃない…これが本当の速さ…修行を積むことで達成した音速を超える速さ…僕は、亜音だ。」
リック改め、亜音は忍者その物だった。黒ずくめの衣装がいつの間にか忍者衣装に変わっていた。一見、動きにくそうに見えるが服は肌に密着していて空気抵抗を最小限に抑えられていた。
瓦礫と共にマイケルが立ち上がる。両肩を交互に二回転させた。骨が鳴る。
――1秒。
マイケルの拳が亜音の顔面を捉える。しかし殴り切れることなく亜音はマイケルの背中にナイフをあてがう。マイケルが後ろ蹴りをお見舞いする。亜音の腹に直撃する。
――1.5秒。
亜音は衝撃を耐え、ナイフを上斜め後ろへ飛ばす。次行動する前にマイケルに腹パンチを食らう。外すことなく完璧に入った。
――1.7秒。
亜音が吹き飛ばされた方向はまさかの上斜め後ろだった。投げたナイフに一気に接近する。直後、マイケルが亜音の背後に移動する。ナイフがマイケルの腹にしっかりと突き刺さった。亜音がマイケルに直撃し、腹のナイフをさらに押し込む。マイケルの腹からはナイフの柄だけが出ていた。
――2秒。
勝負はついた。亜音は着地、マイケルは吹き飛ばされて教徒対連合軍の戦闘の中。
亜音はゆっくりと重りの元へ歩みを進める。その顔は、無感情だった。何も感じてはいなかった。
――爆音
マイケルが落下した方向から土煙が上がる。亜音が振り返る。表情に興奮が走り回り、目が赤く充血した。
「これじゃあないとおお!!!」
亜音にマイケルが突撃した。亜音はマイケルと共に海へ落下する。マイケルは強靭な脚力で水中を蹴り、水面に上がってくる。亜音も同じだった。トンケの加護を受け、水面に上がる。小刻みに足踏みをして水面に立つ。水面を踏み台にし、空中のマイケルに突進する。激しい水しぶきが上がった。
「これで決める。」
マイケルは丸薬を口に含んだ。途端、周囲に超高熱の蒸気がマイケルから噴き放たれた。その蒸気は海をも蒸発させ、ありとあらゆる瓦礫を吹き飛ばし、紛争によってボロボロになったコンテナは溶かされた。
亜音も例外なく、吹き飛ばされ岸壁に打ち付けられる。
マイケルの身長は3mになっていた。大量の蒸気を放出し、周囲の地盤を巨大化で破壊していた。
マイケルは全身赤くなっており、白と黒の毛を確認することはできなかった。丸薬3つ目。躰への負担は最大限になっていた。自我を失い、暴走状態と等しくなる。岸壁に打ち上げられた亜音に一歩ずつ、接近する。
進む度に蒸発した空間に流れ込む海が蒸発していく。亜音が見上げるとそこには、第三形態とは変わり果てた姿のマイケルがいた。亜音はマイケルのうなじに飛び込む。が、この図体なのに動きは俊敏なままで、うなじに飛び込んだ亜音はもう、マイケルと向き合っていた。
「うぉおおおおおお!!!!」
亜音は空を蹴り、体制を整え跳び蹴りの体制になる。同時にマイケルが拳を突き出す。
互いに衝突した。勝負は一瞬だった。亜音は地面に叩き付けられ埋まりこんだ。即死だ。
しかし、自我を失ったマイケルが追撃をやめることはなかった。埋まっている亜音に連続殴打をお見舞いする。地面はバキバキに破壊され、亜音からは血が噴水のように噴き出していた。次第に原型を留めないほどまでにつぶされた。港全体の地面に亀裂が走る。マイケルはなおも殴打を止めない。振動があちこちに伝わるため戦闘どころではなくなった。
マイケルが大きく拳を上げる。そして振り下ろした。が、亜音に当たることどころか、地面に当たることすらなかった。拳は空中で止まっていた。拳を止めていたのは、
血だらけになった、ミズだった。
手のひらに仕組まれた強力な鎮静剤が突き刺さり、一瞬で効力を発揮し、マイケルは元の猫の状態へと、退化した。
「暴れすぎだ。少し、休め」
ミズの表情は、勇ましく、極限の集中をしていたように見えた。
主と主の、戦闘の合図の鐘が鳴らされようとしていた。
久しぶりなのでいろいろつじつまがあわないところがあったらすみません、報告願います。




