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第98話




 クックと王牙が馬車に揺られて領主邸に到着するが、当然ながら領主は忙しい為に面会は無理だと、門にいる護衛の騎士から説明を受ける。

 そんな事は判っているので、クックが重要な案件があると言ってその騎士と共に、一旦領主邸に入って行った。

 王牙は馬車の中で神楽と共に待機し、領主をクックが説得して許可が出れば領主邸に入る事になる。

 許可が取れるまで、王牙は周囲を見回す事にした。




 騎士に案内され、クックが一際丈夫な扉をノックして開けた。

 その部屋では、大量の書類が積み上げられ、その書類の向こう側で領主が必死にその書類を処理していた。

 この書類全てが今回の件に関する物だけであり、本来なら通常決済の書類が別に存在するのだが、流石に緊急という事で後回しにされている。


「……忙しい所スマンの」


「クックか……見ての通り、コレは就任以来初めての仕事量だよ……」


 ゲオルグがそう言いながら、目の前に積み上がっていた書類を退ける。

 以前、帝国が攻めて来たのを撃退した際も書類の山が出来たが、今回程ではなかった。

 そもそも、撃退した際は城壁を越えられる事も無く、街への被害は殆どなかった。

 だが、今回は街中に被害があり、更に人的被害も多く出てしまっている。


「それで、手伝ってくれるのか?」


「流石に領主の仕事は手伝えんのぅ……それより、例の冒険者なんじゃが……」


 クックが、ゲオルグに王牙の屋敷で話した事を説明する。

 内容的には、『神楽は天使では無く、それに似た魔道具を使用していた』事と、『何か良からぬ事が起きる可能性がある』と言う事。

 そして、王牙自身が面会を希望しており、詳しく話を聞くチャンスである事も説明した。

 それを聞いて、少々ゲオルグが考え込む。


 ゲオルグ個人としては、面会するのに抵抗は無い。

 寧ろ、会って礼も言いたいし、今後の為にも繋がりを持っておきたい。

 だが、領主としては一個人だけを優遇するのはかなり不味い。

 個人だけを優遇していると、その個人との癒着を疑われたり、他の所から不満が出て来る。


「……時間的な余裕が無い……な……」


 ゲオルグが言いながら、椅子に座り直す。

 そもそも、目の前で積み上がっている決済待ちの書類は、こうしている間にもどんどん増えているのだ。

 碌な休憩も取らずに処理しているが、積み上がっていくスピードの方が速い。


「儂が言うのもなんじゃが、少しは休憩した方が良いぞ、どうせ直ぐには終わらんのじゃし」


 それに、休憩した方が仕事量は多く片付けられる、とクックが説明する。

 ほぼ毎日、冒険者達の依頼達成や、評価に関する書類を片付けているクックの言葉には説得力がある。

 無理に続けるより、適度に休憩を挟んで片付けた方が結果的には進みが良いのだ。


「……休憩している間だけなら……」


 ゲオルグの呟きに、クックが頷いた。




 クックが馬車に戻り、領主の休憩時間に面会を取り付けたので、直ぐに行く事となった。

 馬車は領主邸内の指定された場所に止めて、クックが近くにいた騎士に警固を頼んでおく。

 そうして、クックに連れられて王牙と神楽が領主邸の中を進む。

 その際、すれ違うメイドや騎士の一部が神楽を見て驚いたり、頭を下げたりしている。

 やはり、領主邸内で暗殺者と戦闘を行い、尖塔で能力を開放したのを随分と目撃されている。

 後々、余計に面倒な事になりそうだと思いながら、王牙が若干溜息を吐いた。


「ここが領主の部屋なんじゃが、まぁ多少礼儀が悪かろうが問題無いぞ」


 クックがそう言って、王牙が頷いたのを確認してから扉をノックする。

 白金級クラスの冒険者であれば、貴族関連の依頼も多い為、礼儀をちゃんと学んでいる場合が多いが、サガナにいる冒険者の中で、ちゃんと礼儀を知っているのは、リョウとシシーくらいである。


「君がクックの言っていた冒険者か」


「御初に御眼に掛かる。 俺の名は狼=王牙、そして、後ろにいるのがうちのメイドである神楽」


 王牙が名乗って、神楽と共に綺麗に一礼する。

 付け焼刃程度ではあるが、地球で多少の礼節は学んでいる。

 多分問題は無いだろうと、王牙が考えて実行したのだが、それを見ていたクックは内心驚いていた。

 その後、ゲオルグも自己紹介をし、暗殺者撃退とサガナを救ってくれた事について礼を言った。


「さて、一応クックからも聞いてはいるのだが、一体何が起こるのかね?」


 ゲオルグがメイドの入れた紅茶に角砂糖を一つ投入し、啜りながら王牙に尋ねる。

 対面に座っている王牙は紅茶には手を付けず、室内を軽く見回していた。


「うちのメイドが此処に嫌な気配が近付いている、って話しているのだが……この部屋は密談向けになっているのですかね?」


 王牙の言葉にゲオルグの眉がピクリと反応する。

 代々の領主にしか伝えられていない事だが、この部屋は壁の中にいくつもの魔法陣が刻まれ、外部から盗聴したりは出来ないようになっている。

 そして、今の今まで見破られた事は無かったのである。


「……何故、そう思うのか聞いても? あぁ、言葉遣いは普段通りで良い、互いに疲れるだろう」


「………そういう事なら……まず入った後から一切、外の音が聞こえなくなった事、次に壁から魔力が漏れているのを感じる事、最後に神楽が魔法陣がある事を知らせてくれた事だな」


 王牙の言葉に、ゲオルグとクックが唖然となる。

 音が聞こえなくなっただけなら、遮音性が高い素材を使っているだけと誤魔化せるが、それ以外に見破られているのでは、誤魔化しようがない。


「其方の言う通り、この部屋は外部からの盗聴が出来ない様、何代も前の領主が設えた特別な部屋だ」


「では、これから話す事は他言無用、この場にいる3人のみの秘密という事で……」


 王牙の言葉に、ゲオルグとクックが頷く。

 それを確認し、王牙が神楽の方を向いた。


「まず、神楽は天使族ではないと説明したな?」


「うむ、確かに聞いたの」


「そういえば、天使族に見える魔道具を使っていたと聞いたが……どんな魔道具なのだ?」


「いや、そんな魔道具が存在するはずないだろ」


 王牙の言葉に部屋が静まり返る。


「……では、彼女はやはり天使族なのか?」


 ゲオルグの言葉を受け、神楽が首を横に振った。

 そして、神楽が王牙の方を見た後、神楽の全身が光り出した。

 ゲオルグとクックが、あまりの眩しさに視界を手で遮る。

 やがて光が収まり、そこにいたのは先程と同じメイド服だが、背中に6枚の翼を広げた神楽の姿。


「神楽は天使じゃない、大天使、もしくは熾天使とも呼ばれる存在だな」


 ゲオルグとクックの耳に、王牙の言葉が届いたが、それを理解するのに暫しの時間が必要だった。

 そして、それを理解出来た時、両名の驚愕の声が部屋に響いたが、魔法陣の効果によってそれが部屋の外に漏れる事は無かった。




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