表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/105

第95話




 サガナと聖王国を繋ぐ道の近くには、巨大な湖があり、そこはサガナに流れる川に繋がっている

 この湖は、近くにある村々の生活用水ともなっている。

 だが、最近では魔獣被害が多くなり、湖に近付く村人はいなくなっていた。




 その暗い部屋にあった水晶玉が、赤く点滅をしていた。

 それを見て、慌てて一人の男が水晶玉の下にあった別の水晶玉に触れる。


「こちらイプシロン、何があった? 定時連絡にはまだ早いだろう?」


『緊急事態に付き御容赦を……領主と聖女の暗殺に失敗、即席迷宮インスタントダンジョンを使用していますので、直ぐに部隊を送ってください……繰り返します』


 その言葉を聞いて、男が壁際にいた別の男に顔を向けた。 

 それを受け、その男が壁際にあった筒の蓋を開けると、それに何か話す。

 しばらくして、その筒とは別の筒に耳を傾け、頷いた。


「司令部からの返答は救出する、との事だ」


「了解した。 こちらから部隊を送る。 それまでそこで待機出来るか?」


『それと、メイド姿の化物がいますので、注意してください』


 男がそう返答を伝えると、向こうから意味不明な返答が返って来た。

 それを聞いた二人が顔を見合わせる。


「帝国が誇る秘密兵器が負ける筈がない。 そもそも、ロクな魔術が無い以上、此方が負ける事は無い」


 男がそう言って水晶から手を放す。

 そして、先程と同じように筒の蓋を開けると、意味不明だったが先程の言葉を伝える。

 筒の向こうでも、意味不明だったようで困惑しているようだが、やる事は変わらないだろう。


『イプシロン、迷彩解除、発艦!』


 部屋にそう声が響き渡る。

 しばらくすると、地鳴りのような音が響き、脚に振動が伝わってきた。


「やっと出番か……」


「機密任務なのは判ってたが、随分待たされたな……」


「お前はまだ外で狩り出来たから良いじゃねぇか、俺なんてずっとこの部屋で定時連絡待ちだったんだぞ」


「狩りったって、そこ等の村にいる奴等じゃ強くもねぇし、雑魚ばっかりだったんだぞ」


 そして、湖の湖畔に巨大な船が現れた。

 だが、それに気が付いたのは、湖の近くにいた野生動物や魔獣だけだった。




 サガナでは、破壊された家屋を除去して怪我人を運び出し、死亡者を教会で祈りを捧げた後に埋葬されていく。

 本来はシーラが執り行う予定だったのだが、暗殺騒ぎがあったのと、予想以上の被害者への治療作業により、大半が動けない程に消耗してしまったので、急遽別の教会に所属していた冒険者が行う事になった。



 そして、王牙は屋敷で今回の件を含めての報告を炎尚と神楽から受けていた。

 炎尚とジーナ達に関しては屋敷の周囲を殲滅した後、冒険者ギルドのクックと行動を共にして避難民を護衛、周囲の安全を確保していたという。

 神威は魔術師ギルド方面にある広場で、オーガソルジャーを含む魔獣達をリルと共に殲滅。

 マドゥーラは大門でゴーレムを使用し、逃げてきた魔獣を兵達と協力して討伐。

 その中で一番王牙の頭を痛めたのが、神楽の報告だった。


 別に能力を開放したのは問題ではない。

 問題なのは、それを領主の目の前で行ったという事だ。

 これは確実に、この後直ぐに領主側から接触がある。

 目立てば目立っただけ、厄介事がやってくる。

 お話の主人公なら、どんな難題でもどんどん解決して昇進街道まっしぐら、最終的には権力のトップにでもなるのが王道なのだろう。

 だが、王牙自身はそんな事は考えてもいない。

 むしろ、そんな厄介事とは無縁の生活をしたいと思っている。

 これは、見た目は若く見えるが、実年齢が40を過ぎている王牙にとって、本当なら静かに余生を過ごしていたいと思っているからだ。

 だが、この異世界では、生活基盤所か自身の身分も存在しない。

 その為、静かに暮らすとなると、誰も来ない森の奥深くで、誰にも接触せずに生活するしかないのだが、基本的にそんな事は不可能だ。

 なので、どうにかしてはっきりとした身分を手に入れ、生活基盤を盤石にしなければならない。

 そうして、手に入れた冒険者カードだが、ゆっくりのんびり生活するにはまだまだ遠い。


 領主から何かしらの接触がある事は間違いないだろうが、これに付いてはどうしても後回しにするしかない。

 そして、神楽の話はシーラ暗殺の際に現れた、謎の暗殺者に付いての報告になった。


「領主と聖女を狙った暗殺者……か」


「仕留めきれず、現在は迷宮に籠っているようです」


 神楽の報告では、見た目は別人だったが使用していた武器や技から、二人が同一人物である事を伝えられる。

 だが、その変身方法が判らない。

 子供から大人に変身するのであれば、まだ義手義足で延長すれば良いので可能だ。

 しかし、実際に相手は大人から子供に変身をしている。

 その報告に全員が首を傾げる。


「それと、その暗殺者に付いてですが、一つ気になる事が」


 最後に神楽が気になる事と言って、報告に付け加えた。

 その暗殺者は、最後に神楽の投げた槍が腹部を貫通、地面に縫い留められた状態になったにも関わらず、血を流していなかった(・・・・・・・・・・)らしい。

 その報告で、王牙の頭にいくつかの可能性が浮かんでいた。



 一つは、その暗殺者が人形であり、本当の暗殺者は別の場所にいる可能性。

 これなら、大人だろうが子供だろうが自由に姿を変える事は出来る。

 だが、人形であればスキルを使用するのは不可能である為、この可能性は無い。


 もう一つは、貫通した際、傷口が収縮して隙間を塞いだ為、流れなかったという可能性。

 だが、体内に流れている血液と言うのはかなり圧が高い為、腹部を貫通するような大怪我であれば、確実に血が流れるだろう。



 そうして、いくつかの可能性を思い浮かべては、否定して可能性を絞っていく。

 そうすると、あり得ない可能性が残った。


 それが、その暗殺者がユーザーである可能性。

 ユーザーであれば、大ダメージを受けたとしても瞬時に回復する事が可能だ。

 しかし、それでも不可解な点がある。

 使用したスキルの内約だ。


 神楽の説明では、暗殺者が使用したスキルは『ダブル』『コピー』『ドッペル』と言う、ゲームでは割と簡単に覚えられていた初期コンボである。

 簡単であるが故に威力は乏しいのだが、汎用性が高いので多用され、あっという間にユーザーによって対策が取られた。

 それが、神楽のやったように、到達前に爆破に巻き込み、判定を消去するというもの。

 これにより、この初期コンボは廃れたが、運営によってこのスキルの上位互換が実装された。

 そのスキルこそ、神楽が一気に槍を増やしたスキルである『ミラージュ』と言うスキル。


 スキル『ミラージュ』は、MPを一気に消費する事で、『ダブル』の効果を同時に発動させる事が出来るというぶっ壊れスキル。

 実装当時、一気に武器を増やすだけのスキルであると思われていた事で、習得者は少なかった。

 習得方法は単純で、『ダブル』を熟練度最大まで使用し、特定のNPCのクエストをクリアする事で習得出来る。

 しかし、あるユーザーがその状況を文字通り吹き飛ばした。

 何とこの『ミラージュ』、増やせる対象は武器だけではなく、魔法を対象にする事が出来たのだ。

 そして、そのユーザーが同時使用した『隕石(メテオ)』と言う魔法により、当時、最強を誇っていたイベントボスモンスターが文字通り消し飛ばされた。


 そのユーザーが使用した『隕石』は10個が同時に召喚され、相手に対して落とすと言う最上級魔法スキルなのだが、『ミラージュ』を同時に使用した場合、その召喚される『隕石』の数は、桁が二つ程増えていた。

 その結果、凄まじい破壊力を生み出し、あっさりとイベントを終了させてしまった。


 それを受け、運営は『ミラージュ』スキルの習得方法を変更した。

 熟練度最大は同じだが、NPCのクエストを複数に変更し、難易度を上方修正した。

 そして、これを突破したユーザーはそれほど多くない。


 もし、その暗殺者がユーザーであったならば、『ダブル』を利用したコンボの弱点も知っていたはずだ。

 それを知らなかったという事は、ユーザーである可能性は限りなく低い。

 だが、そうなるとこの暗殺者の正体が謎である。


「スタンピードモドキに暗殺者に迷宮と、問題が山積みだな……」


 思わず、王牙が呟いて溜息を吐いた。




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ