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第85話

大変長らくお待たせいたしました

本日より再開となります~




 サガナの裏街。

 住民達からは、スラムとも言われている場所。

 ただ、サガナのスラムは住居はしっかりした物ばかりであり、あばら屋が並んでいる様なスラムとは随分とイメージが違うだろう。

 しかし、過去には犯罪組織や帝国の間者や扇動者が隠れ住んでいたりと、かなり危険な場所でもあった。

 何故過去系なのかと言うと、盗賊ギルドがやって来た後、そう言った犯罪組織や間者等は軒並み放逐され、今では裏街を完全に支配している。

 ただし、盗賊ギルドが犯罪行為をしているのかと言われると、そんな事は無い。

 あくまでも、名称が『盗賊ギルド』と言われているだけで、その実態は正規の手段で出来ない事をやったり、情報を集めて権力者に報告したりすると言う、諜報関連の仕事も請け負ったりしている。

 その為、多くの国や権力者は、盗賊ギルドを黙認している。

 勿論、認めなかった国や権力者もいたのだが、諜報活動に長けた彼等の協力を受けられず、大半が滅亡している。


 そんな場所にある古びた一軒家。

 中では男達が煙草を吸い、酒を飲み、古びたテーブルでカードゲームをしている。

 そんな一軒家の扉がギイイイと音を立てて開き、その場にいた全員の視線が扉に向いた。

 だが、そこには誰もおらず、男の一人が扉の周囲を確認し、舌打ちしながら扉を閉じてゲームに戻った。



 音も無く、二階にある一室の扉が開いて行く。

 部屋には誰かがいる様な気配は無く、灯りも無く薄暗い。

 そんな中に神楽が足を踏み入れ、目を閉じる。


「……まだ続けますか?」


 しばらく待ってから、何も言ってこないので、此方側から声を掛ける。

 それでも返答は無い。

 このままだと話が進まないので、向かって左側の壁際に進む。

 そして、懐から素早く何かを取り出すと、壁に向かって投擲したが、壁に当たる寸前、何かに弾かれる。


「…………危険……」


 そう言って、投擲された物を弾いた短剣をしまう人物。

 全身がダボついた服装をしており、顔もローブで見えない。

 声も、マスクのような物でくぐもっており、性別は判断出来ない。


「天下の盗賊ギルドであれば、此方の事情は把握しているのでしょう? 手間を省いているだけです」


「……確かに把握はしている……だが、我々に利が無い……」


 この人物の言う通り、ここでジャシム達の弱みや情報を話したとしても、利益があるのは自分達だけで、盗賊ギルド側には利益が無い。

 此処で言う利益と言うのは、報酬と言う意味では無く、特権階級からの庇護や、一定の独自権利と言う意味だ。

 王国に存在する盗賊ギルドは、既に王国内であれば、自由に動けるように水面下で許可が出ている。

 つまり、王国側から裏切らない限り、王国には協力するが、個人の為に動く事など無いのだ。


「利があれば、協力して貰えるのですね?」


「………否定はしない」


 その人物がそう言うと、神楽が先程弾かれた物とは別の物を取り出し、机に置いた。

 そして、机から離れる。

 離れた神楽を警戒しながら、その置かれた物を手に取る。

 それは綺麗に折り畳まれた紙。

 警戒しつつ、人物がそれを開いて中を確認する。


「……これ……は……!?」


 そこに書かれていたのは、王国の盗賊ギルドに所属している数人の名前。

 そして、『帝国から送り込まれた間者』であると言う情報と、その証拠となる物証が隠されている場所だった。

 元々、盗賊ギルドは過去に何をしていたのかは不問にし、所属する盗賊ギルドのギルドマスターに従う事を徹底させる。

 強制的に従わせる為の魔道具も存在しているが、その強制力を防御する為の魔道具もある。

 そして、ここに書かれているメンバーは、盗賊ギルド内でも行動が怪しいと睨んでいたのだが、証拠が無い為、ワザと泳がせていたのだ。

 もし、この情報が正しければ、即座に粛清する事が出来る。


「……これを何処で……?」


「此方の手の内をタダで教えると?」


 神楽が答える事は無い。

 言葉通り、そうホイホイ此方の手の内を明かす馬鹿はいない。

 しばし、考え込んでから、人物が協力する事を承諾した。 

 報酬はこのリスト。

 更に、情報通りに粛清が終われば、以降も協力をしていくことになった。


 ちなみに、あのリストと証拠は、ジーナ達が放ったネズミゴーレムから入手した物である。

 当然、ジーナ達には許可を取り、今回の件が終わった後に、神楽からは個別に報酬が出ると言う。

 取り敢えず、ジャシム大臣と徴収隊の情報を得る事に成功した。



 情報によると、運輸ギルドのギルドマスターであるキリガンは、今回の件には賛同していないが、ギルドとして拒否が出来ないと言う事で止む無く協力している。

 ジャシム大臣だが、ここ数年、強引なやり方で冒険者が手に入れた物品を取り上げたり、優れた技術が確立すると、その技術者諸共連れて行ってしまう。

 そして、それを拒否するとその冒険者や技術者が謎の失踪を遂げたり、依頼中に強力な魔獣に襲われたりして死亡したりしている。

 此処では謎と言っているが、その全てが徴収隊の手による物。

 失踪にしろ死亡にしろ、そうなる数日前に徴収隊の隊員と思われる人物が、近くにいたのだ。

 失踪者については、ジャシム大臣が個人所有している強固な建物で監禁しているらしく、生きてはいるらしいが、詳細は盗賊ギルドでも把握出来ていないと言う。


 そして、徴収隊はそんなジャシム大臣の命令で動く、騎士団から出た問題児の集まり。

 所属している全員が実力はあるが、命令違反は当然として、暴力沙汰や物資の横流し等の犯罪行為をした為、除名処分を受けている。

 そんな団員達を集め、嫌われる事が多い徴収や物資確保の為に一団を形成させたモノが、徴収隊の始まりだと言う。

 結果的に全員がジャシム大臣に救われているのと、そう言った作業は好きにさせて貰っている為、所属している団員は全員ジャシム大臣の命令には絶対服従している。

 団員の練度と言う意味では低いが、個人個人の実力は高いので、そこら辺の冒険者程度では少々勝ち目は薄い。

 特に、サガナはそこまで強い魔獣が現れない為、所属している冒険者では余計だろう。

 ただ、徴収隊に戦闘魔法が使える団員はいないと言う。

 と言うのも、この異世界では生活用の魔法は簡単だが、戦闘用魔法となると非常に難しくなる。

 その為、問題行為をした団員であっても、ある程度は大目に見て貰えることが多く、所属している騎士団からも追い出されにくい。

 

 これ等を考えれば、彼等の次の行動は直ぐに予想が出来る。

 彼等の中で有効な手立てが無いのであれば、外部に委託するだけだ。

 つまり、サガナの冒険者か、魔術師ギルドにジャシム大臣の権力で協力を要請する。

 彼等は権力を振り翳して強引に事を進めようとするだろう。

 だが、サガナ魔術師ギルドのギルドマスターは、そう言った権力を嫌っている。

 過去に何かあったらしいが、その情報は関係無いので、盗賊ギルドでは聞く事はしなかった。

 取り敢えず、ジーナ達とは別のネズミ型ゴーレムを放ち、更に情報を集める事にした。




 その部屋は調度品が整えられ、壁にある巨大な魔方陣には、いくつもの線が引かれて考察が書かれている。

 それも、『高威力にする為にはこの魔数字を増加させる』、『省略しても問題無い部分』、『書き損じれば暴走する場所』等、結構危ない内容だ。

 そんな部屋に、複数の人物がいた。

 そのうち二人は、ジャシム大臣と徴収隊の隊長であり、その向かいにはこの場所を支配している人物が座っている。

 魔術師ギルド、ギルドマスターであるフィーテル=リズ=ウィンバッハ。

 金髪金眼に黒いローブを身に纏っている。

 そして、その隣には彼が愛用する魔法の発動補助体である白銀のロッドが立て掛けられていた。

 その後ろに立つのが、魔術師ギルドのサブマスターである女性だが、この場では一言も口を開いていない。


「何度も言っているが、今の我々は協力出来ない」


「大臣からの要請であるぞ! その所を良く考えるのだな」


 フィーテルの言葉に、隊長が被せる様に脅しを掛ける。

 それを受けて、フィーテルが溜息を吐いた。

 先程から、今は別の用件で立て込んでおり、協力は出来ないと説明をしているのに、この男達は一向に引く気配が無い。

 それ所か、権力を振り翳して脅してくる始末だ。


「何度も説明はしたはずだ。 今魔術師ギルド(うち)では、早々出回らない希少素材をやっと手に入れる事が出来て、その実験を行う予定だと」


「そんな実験など、後でやれば良いではないか!」


「その希少素材は時間と共に勢い良く劣化していく。 今回は最高の状態で入手出来たが、もし、そちらに協力した場合、確実に取り返しのつかない事態になる。 それとも、今回払った額と手間分を払ってくれるのかい?」


「フン! 何故そんな怪しげな物の為に予算を出さねばならんのだ!」


 この希少素材は、今回の件で協力する代わりに冒険者ギルドが放出した品のうちの一つだ。

 冒険者ギルドに偶然持ち込まれた物で、錬金術師ギルドにあった時間を極端に遅くすると言う貴重な魔道具を使用していた。

 その為、オークションでは錬金術師ギルドと一騎打ちのような形になり、結果的に勝利はしたのだが、ギルドの予算だけでは足らず、フィーテル自身の資産の一部を売却しているのだ。

 もし、実験が出来ずに希少素材が劣化してしまえば大損だ。


「そうか、怪しげか」


「あぁ怪しげだな」


「ならば、説明してやろう。 この希少素材は『ユニコーンの角』や『セイレーンの鱗』と言った回復効果を底上げする素材と同じではあるが、唯一違う点が一つだけ存在する。 それは、どんな物の触媒にも使えると言うとても希少性の高い物だ」


 通常、ユニコーンの角であれ、セイレーンの鱗であれ、元々のポーションに加える事でその効果を高めると言うのが普通だ。

 だが、当然の事ながら、効果を高める効果はちゃんとした組み合わせが存在し、それ以外の組み合わせでは効果が半減したり、下手をすれば効果が得られない事もある。

 今回魔術師ギルドが予算オーバーをしてまで入手したコレは、どんな素材と組み合わせても、様々な効果を発揮させる事が出来ると言う破格の性能を持っている。

 ユニコーンの角と組み合わせれば、死んで僅かな時間であれば蘇生し、セイレーンの鱗と組み合わせれば、一週間全力で活動して問題が無い、とまで言われている。

 だが、その希少素材を入手する為には、白金級の冒険者が複数人いなければならないような、特に強い魔獣を相手にしなければならない為、早々、出回る事が無いのだ。

 サガナ付近では入手する事は不可能に近いのだが、持ち込んだ冒険者によると、偶然、入手する事が出来たらしい。

 何より、劣化スピードがかなり早く、錬金術師ギルドが使用した魔道具が無ければ、どんなに急いで運んだとしても、王都に着く頃には効力を失ってしまう程だ。

 なので、絶対に無駄には出来ない。

 フィーテルが後ろにいたサブマスターの女性に手を振る。

 それを受け、その女性が一礼してから部屋を出て行った。


「そんな希少価値の高い素材を入手するのに、本年度の予算を使い切った上、私の資産の一部も使ってしまったのだから、無駄には出来ないのだよ」


 ギルドの予算を使い切ったと言った所で、ジャシムと隊長の顔が引き攣る。

 特定のギルドには、拠点を置いている国に協力する代わりに、一定額の特別予算が毎年支払われる。

 普通なら、使い切るなんて事は殆ど無く、余った予算は来年度に引き継がれるのだが、大抵は施設の修繕費用等に当てられたり、所属しているギルド員のボーナスとして払われる。

 唯一の例外が盗賊ギルドであり、国からの依頼で諜報活動をしている以外では、国内で不正をしている商人や貴族をターゲットにし盗みをしたり、盗賊ギルドの所属を隠して冒険者に交じって活動して独自に稼いでいるのだ。

 寧ろ、国が特別予算を組んでバックアップしてます、なんて他国にバレたら一大事なので、盗賊ギルドだけは独自に稼いでいると言う訳だ。



 そうしていると、サブマスターの女性が、籠に入った赤い厚手の布で覆われた物を持って戻って来る。

 その籠をフィーテルの目の前にゆっくりと置くと、再びフィーテルの後に戻って行く。

 フィーテルが慎重に布を外すと、六角柱の透明な水晶体が現れる。

 そして、その水晶体の中には小さな小瓶が入っており、その小瓶の中には何かの液体が入っていた。


「これがこの希少素材、『バンシーの涙』だ」


 フィーテルがそう言うと、水晶体を指で弾いた。




なお、神楽の所有しているネズミさん達ですが、主人公が自重無しで製作した特別製です

性能的には、ゴブリンくらいなら単独で倒せるくらいの強さとなります


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります


 ᘛ⁐̤ᕐᐷ チゥ♪

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