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第76話

あけましておめでとうございます!

本年も本作品を宜しくお願い致します~





 コア思想。

 昔、某ロボットゲームから端を発した思想であり、元となるボディ(コア)パーツに様々なパーツを組み合わせる事で、どんな状況でも対応出来るようにするモノだ。

 特徴は何と言っても、その組み合わせが何万通りもあり、一つとして同じ機体が出来上がる事は無く、目的に合わせてカスタマイズ出来る。

 そして、現実となれば他にも利点がある。

 それは、もしもどこかが破損した場合、そのパーツを丸ごと交換すればすぐに復帰させる事が可能だという点だ。

 今のゴーレムは、何処かが破損した場合、修復する為には、素材と長い時間が必要になる。



 ゴーレムは、全身が一つのユニットだ。

 これにコア思想を取り入れた場合、その汎用性は群を抜くだろう。

 だが、その構造、制御システムは難解、困難を極めるだろう。 

 元々ゴーレムは、ゴーレムコアを制御ユニットとして動いている。

 だが、コア思想でパーツを分割した場合、視界を制御するシステム、腕を動かすシステム、脚を動かすシステムとバラバラに作り上げなければならない。

 マドゥーラはそれをどうやって解消するのか、とても気になる。

 設計図にはそこら辺は書いていなかった。

 まぁ、行き詰ったらアイデアは教えようとは思っているが。



 それから一週間。

 マドゥーラはずっと部屋に篭り、ゴーレムを作り続けている。

 と言っても、食事や風呂などの際は出て来るのだが、かなり苦労しているようだ。

 ちなみに、屋敷隣の小屋の方は無事完成。

 以後、名称を工房と決め、今は中の備品を俺が用意して揃えている。

 零式の様なゴーレムを自立させられる様に、壁には梯子の様な固定台を用意する。

 見た目はただの鉄製に見えるが、これも中心部分と土台部分にアダマンタイトを仕込み、表面を鉄で覆っている。

 その為、異常に頑丈だ。

 試しに零式を固定してみたのだが、その重量でも柱は歪む事は無かった。

 これと同じ固定台を3つ用意してあり、一つは零式専用、残りはマドゥーラが使うだろう。

 さて、取り敢えず、俺も作り掛けのゴーレムを組み立てておくか。

 まだゴーレムコアが無いから、起動は出来ないがな。



 マドゥーラがゴーレムコアに魔方陣を刻む。

 貰ったコアのサイズは子供の握り拳ほどで、出力(パワー)もそこまで高い訳では無い。

 それに必要な魔方陣を刻む作業は、集中していてもかなりキツイ作業だ。

 一つ一つの魔法文字のサイズは1ミリ程度しかなく、それをこの小さいコアの中に刻んでいく。

 しかも、刻み始めたら途中で止められない為、最後まで一気にやらなくてはならない。

 作業を始める前に夕食を済ませ、作業する事は伝えた為、部屋に誰かが来る事は無い。

 更に、この作業は内包魔力をごっそり削るので、魔力回復ポーションで回復しておく。


「さて、やりますか」


 机に置いたコアに向かって両手を翳すと、集中して作業を開始する。

 そして、コアが薄く光り出し、机に魔方陣が現れ、コアの表面に四角い小さなボードの様なものが浮かび上がる。

 コレで刻む準備は完了。

 すぐに鉛筆の先に針を付けた様な道具を取り出すと、魔力を籠めてコアに浮かんだボードに制御用の魔方陣を刻み込む。

 この魔法文字を刻む作業は、間違えてしまうと修正が出来ない。

 もし間違えた場合、コアがゴミになる。

 一瞬も気が抜けない作業だ。

 丸い魔方陣に止まる事無く、特殊な文字を刻んでいく。

 

 そうして刻み続ける事数時間。

 最後の文字を刻み終えて、鉛筆を机に置いた。

 マドゥーラは、緊張の糸が切れてそのまま机に突っ伏してしまった。

 その机の上には、白い珠の中に金色の文字が刻まれた魔方陣が浮かんでいる。

 これでゴーレムコアが完成した。

 後は、完成しているボディパーツに組み込んで、起動テストになる。

 この起動テストで問題が起きなければ、残っている四肢パーツを装着出来る。

 だが、魔法文字を刻む作業で精神的にも、魔力的にも疲弊している状態なので、流石に休憩しようとふらつきながらベッドに倒れ込んだ。



 目覚めた後、机の上にあるゴーレムコアを手に取って、別の机に置かれていたボディパーツの中心部分に納める。

 今回はテストでもある為、形状は全身鎧(フルプレートメイル)を参考にしている。


「テストゴーレム、起動(ウェイクアップ)


 マドゥーラの声を受けて、鎧の中央に付いている青い宝石が光を放つ。

 そして、その状態でしばらく待つが、その宝石の色は変わらずに光っている。

 もし、何らかのトラブルがあった場合、この宝石が色を失うか、光が消える様になっている。

 つまり、テストは成功と言う事だ。


「……よしっ……テストゴーレム、停止(ウェイクダウン)


 合図(キーワード)でテストゴーレムを停止させると、そのボディパーツと他のパーツを全て台車に乗せた。

 コレからの作業は、流石に部屋でやるには狭過ぎるのだ。

 なので、完成した工房で組み立てる。


 台車を押して工房に向かい、工房内のクレーンでボディパーツを引き上げる。

 そして、最初に下半身パーツを接続し、次に腕パーツ、最後に頭部を接続する。

 接続が全て終わると、クレーンを操作してゆっくりとゴーレムを立たせた。

 見た目は鈍い鉛色の全身鎧の兵士。

 それを王牙とマドゥーラが見ている。




「さて、どうなったかな?」


「……起動はしたので多分、大丈夫だとは思います……」


 俺の言葉にマドゥーラが自信無さ気に答える。

 まぁ、初めての試みになるからな。

 マドゥーラが深呼吸をして、ゴーレムを起動させた。


 ゆっくりと震える様にしてゴーレムが起動すると、ゆっくりと歩き出そうとした瞬間、つんのめってその場で転倒した。

 そして、起き上がろうともがき、置き上がった瞬間、今度はそのまま後ろに倒れた。

 それを唖然と見ているマドゥーラの肩を叩くと、慌ててマドゥーラがゴーレムを停止させた。


「……どうして、歩く事すら出来なかったんでしょうか……」


 マドゥーラが、クレーンで吊り下げられたゴーレムを見て呟く。

 原因はいくつかあるだろうが、一番の問題はやはり、個々のパーツ制御が出来ていないのだろう。

 つまり、ボディにあるコアから、『歩く』と言う指令が下半身パーツに伝わった瞬間、下半身パーツはその指令を受けて歩こうとするが、パワー制御が効かずに余計なパワーを流して動こうとしてしまう。

 結果、バランスを崩して転倒し、起き上がってもバランスが保てずに倒れてしまったのだろう。

 これは、現状のゴーレムコア技術の先を行く必要がある。


「取り敢えず、このゴーレムのコアを見て見るか……」


 マドゥーラに指示を出し、ゴーレムコアを取り外して様子を見る。

 コアには白い珠に金文字の魔方陣が内包されているが、確かにコレではこのゴーレムは制御し切れないだろう。

 この魔方陣の仕組みは、基本的なゴーレムの物だ。

 普通のゴーレムなら、この魔方陣で何の問題も無いのだが、今回のゴーレムは普通では無い。

 故に、この魔方陣だけでは色々と不足している。


「成程、魔方陣が一つだけか……」


「? だけって……どういう意味ですか?」


 俺の呟きに、マドゥーラが不思議そうな表情を浮かべる。

 コアを片手に、マドゥーラに説明する。



 この異世界のゴーレムは、基本的に一つの魔方陣で動き全てを制御している。

 だが、複雑な動きや素早い対応速度、微妙な制御を必要とする場合、一つの魔方陣だけでは制御し切れない。

 人間は普段何気なく歩いているが、実はこの『歩く』と言う行為も、全身を活用した複雑な動きになっている。

 バランス、重心移動、衝撃の分散等、実は結構高度な行動なのだ。


 そして、ゴーレムコアには通常、魔方陣を一つしか刻み込む事しか出来ない。

 だが、実はこれには裏ワザが存在する。

 丸い円であれば、最大3つまで組み合わせる事が出来るのだ。

 ただ、コレをやるには現状の作り方では対応出来ない。

 なので、それ専用の道具をマドゥーラに見せる事にする。

 と言っても、これもシステムから呼び出した道具なのだが……


 工房の片隅に、ガラス張りの小箱の様な物が設置されている。

 底面が白い台になっており、その横には青と赤のスイッチがある。

 上部は蓋になっていて、その中央に未記入のゴーレムコアを設置して蓋を閉じる。

 今回はテストも兼ねているので、俺が作業する事にするが、成功したらマドゥーラにも使わせよう。

 そして、下の方にある青いスイッチを押すと、コアの置かれた中央の下の部分に魔方陣が現れた。

 これで準備は完了。


「さて、良く見ていろ」


 そう言ってマドゥーラを見ると、彼女は食い入るようにコアを見ていた。

 苦笑しつつ、赤いスイッチを押すと、その底面部分がスライドして迫り出てきた。

 スライドしてきた部分を完全に引き出すと、それは白い縁に全面が黒い面、その中央に白い線で円が引かれている。

 まるで小さい黒板だ。

 だが、コレが今回の作業で一番大事な物だ。

 マドゥーラも使っていた針鉛筆で、手早く魔方陣を白い円に書き込んでいく。

 そして、書き終ったらその円を指で横にスライドすると、魔方陣がまるで回転する様に横に回転した。

 ある程度回転させると、完全に消え去る部分があり、そこで新しい魔方陣を書き込んでいく。

 それを書き終ると、今度は上にスライドさせ、魔方陣を上方向に回転させ、同じように消える部分まで回転させる。

 そして、同じように魔方陣を書き込んでいく。

 完全に書き終ったら、ミニ黒板を台座に戻すと、コアを囲むように四方から、ニョキニョキと細い柱が白い台座から伸びる。

 そして、その先端からレーザーのような光がコアに向かって伸び、コアの中に複雑な魔方陣を刻んでいく。

 この作業を手作業でやる事は、ほぼ不可能だ。

 魔方陣同士の角度をぴったり90度に維持し、完全な平面で描き上げなければならない。

 その手の達人とかなら出来るのだろうが、凡人には無理。

 なので、この道具を使う。

 そうして、しばらく待っていると、光が消えて伸びていた柱が台座に戻る。

 そして、ピーッと音が鳴ると、蓋が開いたので、皮手袋を嵌めて台座に乗せたゴーレムコアを取り出す。

 そこには、しっかりと魔方陣が刻み込まれている。


「これが複数の魔方陣を刻み込む方法と言うか、道具だな」


「は、初めて見ました……」


「さて、それじゃ使い方は判るだろうから、刻む魔方陣の授業をするか」


 マドゥーラに出来上がったゴーレムコアを渡し、インベントリから数枚の紙を取り出す。

 この魔方陣に刻む文字、俺は普通に日本語で書いたつもりだったが、何故か魔法文字になっていた。

 どうやら、俺の意思に関わらず、こっちの世界の文字として書く事が出来るようだ。

 そんな事を考えながら、マドゥーラにゴーレムコアに刻む魔方陣を順々に説明し、必要な事を教え込んで行く。

 それぞれの魔方陣は、微妙な違いがあるが、一部は同じ部分も存在する。

 その同じ部分を、魔方陣同士が繋がる部分に重ねる事で、初めて3つの魔方陣が機能して問題が起きなくなる。

 まぁ、時間はあるんだし、じっくり教えて行けば良いだろう。




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