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第72話




 その日、屋敷に冒険者ギルドからの使いと名乗る男がやってきて、すぐにギルドに来るようにと言われた。

 まぁ色々とやらかしている自覚はあるので、何かしら問題が起きたのかと思って冒険者ギルドに向かう。

 異世界(こちら)に来た当初は、下手に目立たない様に行動していたが、最近は自重をしないで行動している。

 しかし、それにしても呼び出しとはただ事ではない。



 冒険者ギルドに到着すると、アイナにギルマスの部屋に案内された。

 ギルマスに呼ばれるような内容だとすると、逆さ迷宮の件か?


「おぅ、茶とかは良いから、しばらく誰も通すな」


 クックの言葉にアイナが頷いて部屋から出て行く。

 そして、俺の方を見ると、手元の紙を俺の方に差し出した。


「コイツはお前さんへの指名依頼なんだが……」


「ん? 指名依頼で呼び出されたのか?」


「普通はんなこたぁしないんだが……コイツはどうもキナ臭い」


 渡された紙を手にして目を通す。

 内容は鉱山の麓にある村からの依頼であり、鉱夫の数人が飛竜(ワイバーン)らしき姿を見たと言う。

 村の戦力では不安もあり、飛んでいる相手と言う事もあり、それなりに強い冒険者に依頼を出したいと考えていた所に、俺の事が伝わった。

 今の所被害は出ていないが、このままでは仕事が出来ない。

 そこで、今回の件の討伐と解決を依頼したいと言う内容だった。


 ふむ、クックの言う通り、キナ臭い依頼だ。

 ワイバーンがいると言う話だが、ワイバーンは亜竜の一種であり、単体では行動しない。

 基本的に群れで行動し、危険に対しては群れ全体で対処する為、舐めてちょっかいを掛けると酷い目に合う。

 そして雑食であり、普通の人程度なら軽く餌にされてしまう。


 しかし、ワイバーンが現れる場合、そのワイバーン達は巣別れした若い個体達だ。

 その為、その近くでもワイバーンが確認出来るはずなのだが、サガナではワイバーンの討伐依頼が出た事は無い。

 つまり、このワイバーンらしきモンスターは、いきなりこの鉱山に現れた事になる。

 一応、そう言った事が無い訳では無いが、大抵は大きな嵐によって流されてきたりした場合だけだ。


 他にも、今回の依頼が『討伐』と『解決』になっている点だ。

 こう言った依頼の場合、通常なら『調査』と『討伐』だ。

 解決となると、どれだけ時間が掛かるか分からず、ワイバーンを討伐して依頼完了とした後、残された巣で新たなワイバーンが現れた場合、依頼は未解決となって失敗扱いとなり、違約金を払う事になる。


「出たのは本当にワイバーンなのか?」


「見た鉱夫達の話だがな」


「数は?」


「見たのは1匹だけらしい」


 必要な情報をクックから確認する。

 確かにキナ臭い依頼だが、受領せずに放置する訳にもいかない。


「それにだ、この鉱山は国が管理しているから、騎士団が常駐している筈だ」


 クックが言うには、国が管理する鉱山や森林の近くにある村や町には、実力がある騎士団が派遣され、防衛の為に常駐している。

 騎士団が派遣された村や町は、騎士団の生活費等を負担する代わりに、モンスターや盗賊が現れた場合対処する事になっている。

 派遣される騎士団は、ワイバーンクラスでも倒す事は可能なくらいの実力はあると言う。

 つまり、今回の事であれば、俺に依頼する前に騎士団の方で対処するのが普通らしい。

 それを無視し、何故か俺に指名依頼を出している。


「確かに、キナ臭いな」


「個人的には受けない事を勧めたい所だが……」


 クックの言う通り、本当なら受けずにいた方が得策なのだろう。

 だが、この鉱山の村は冬の間、サガナの冒険者達が利用する村だ。

 その村がこのままだと閉鎖される可能性もある。


「いくつか確認したい事がある」


 キナ臭い指名依頼だが、もしかしたら何らかの理由があるのかもしれない。

 それを確認してから判断しても良いだろう。


 まずは、その村に派遣されている騎士団のレベル。

 本来ならワイバーン程度、充分対処出来るはずだが、何か問題があるのかもしれない。

 『数年前の冬に異動があり、現在は第八騎士団が派遣されているが、実力は十分のはず』と言うのが、クックの答えだった。

 つまり、実力的な問題では無いと。

 次に、周囲にいるモンスターの分布。

 もしかしたら、ワイバーン並に厄介なモンスターがいるのかもしれない。

 だが、『そんな厄介な魔獣がポンポンいたら、採掘など出来ん』と言われた。

 まぁ確かにそうだわな。


 そうなると、普通なら騎士団案件だ。

 んーそうなると、やはり実際に行かないと判らんな。

 だが、行くとなると誰を連れて行くかだ。


 まず、よく利用すると言う点でマキーシャ達を誘いたいが、ハスタの訓練がある為に同行する事は出来ない。

 そうなると、神威達とジーナ達か。

 実力的には神威とリルは問題無い。

 日々神楽に鍛えられて、実力も斥候(せっこう)の能力もジーナ達はメキメキと腕を上げている。

 マドゥーラに関しては、置いて行くにしては期間が長過ぎるので、連れて行く事にする。

 実際の零式の戦闘も見せたいしな。


 取り敢えず、受領は保留にして実際に村に行ってから判断する、とクックには伝えて冒険者ギルドから出る。

 さて、まずは一番情報を持っているであろうマキーシャに話を聞いてみよう。

 実際に村に行っているし、冒険者の目線で何か判るかもしれない。



 アイナに、マキーシャ達はギルドの訓練場でハスタの訓練をしていると教えて貰った。

 最近のマキーシャ達は、ハスタの訓練をし、簡単な依頼にハスタを同行させて、冒険者に必要な心構えを教えている。

 ハスタの実力はジリジリと上がり、最初の頃の様な傲慢さは無くなっている。

 訓練場に入ると、リョウとハスタが向かい合って模造武器を構えている。

 壁際では、マキーシャとシシーが座って両者を見ている。


「順調か?」


「ん? アンタか」


 声を掛けつつマキーシャ達の方へと向かうと、シシーが頭を下げる。

 ハスタの訓練を見ながら、先程の指名依頼の事を話し、どんな村なのか聞く。


「村の名前は『デリラオサ』、住民は皆気の良い奴等だけど……」


 マキーシャがそう言って言葉を切る。


「第八騎士団に関しては気を付けた方が良いね」 


「どう言う意味だ?」


「第八騎士団の団長が変わったんだが、新しい団長はプライドだけは高くて、裏じゃ金で団長の座を手に入れたって言われてるのさ」


「それ以外にも、色々と噂の絶えない人物らしいです」


 マキーシャとシシーの言葉に、俺の眉間に皺が寄る。

 どう考えても、厄介事になる未来しか見えない。


「一応聞いておくが、どんな噂なんだ?」


「貴族の女性と関係を持ったらしいのですが、その……」


 そこまで言ってシシーが口籠る。

 貴族関係での問題なのか?

 だが、その続きをマキーシャが溜息を吐きながら話してくれた。


 ぶっちゃけると、その女性以外にも関係を持った女性がいたのだ。

 それも、少なくとも5人。

 しかも、強引に関係を迫り、問題になりそうになると実家の権力で揉み消していたらしい。

 そしてこの人数だが、貴族関係だけであり、平民にも相当数の被害があっただろう。

 実家の権力が相当強いようで、泣き寝入りするしかないのだと言う。

 その実家だが、王都でも有名な騎士や魔術師を輩出した一族であり、当主自身も嘗ては騎士団を率いて、帝国軍に奇襲を仕掛けて大打撃を与えたと言う実績がある。

 前のあのゲルィンの様な架空の実績では無く、何人も証人が存在し、結果的に帝国軍を引かせている。


 これ以外にも、気に入った武具や宝石、アクセサリーがあれば強引に値引きさせて購入したり、自分を批判した相手を失脚させたりしている、と、噂になっていると言う。

 そして、実力に関してだが、強い事は強いが前の騎士団長には及ばず、まともに戦った場合では副団長の方が強いらしい。

 だが、副団長の家がその騎士団長の家よりも(くらい)が下らしく、事ある事にソレを持ち出して従わせている。


 典型的な屑じゃねーか。

 行く気がどんどん失われていくが、依頼は騎士団では無く村長からだ。

 さっさと行って、さっさと終わらせよう。


 マキーシャ達に礼を言って、屋敷に戻る。

 取り敢えず、今回の件で連れて行くメンバーを改めて考えるが、ジーナ達だけにした。

 神威とマドゥーラはその騎士団長に会わせたくは無いし、リルに至っては見せればトラブルになるだろう。

 問題点は、例の騎士団長とワイバーンに通用する攻撃力を有しているかだ。

 騎士団長に関しては関わらない事を第一にするとして、ワイバーンにはどうするか。

 相手はほぼ常に飛んでおり、剣は届かず弓程度ではダメージらしいダメージは与えられない。

 定石では、魔法で弱らせてから近接スキルでトドメを刺すのだが、俺自身が完璧に使える魔法は中級が限度だ。

 炎尚と神楽は上級まで使えるが、留守の屋敷を任せたい。

 神威とマドゥーラには、俺がいない間に課題を出しておく。

 神威には鬼神装具の練度上げ、マドゥーラには新しいゴーレムを製作して貰う。

 鬼神装具は武神装具と同じで、訓練する事で練度を上げられ、上げきる事で制限されている能力の一部が解放される。

 神威の練度は大凡半分程度と言った所だが、コレはサポートNPCであった事も関係している。

 サポートNPCは、一部の強力な装備品に制限が掛かる。

 これは、その制限が無い場合、サポートNPCをボスに特攻させるだけの作業ゲーになってしまうからだ。

 勿論、それも遊びの範疇ではあるのだろうが、流石に運営もそれは容認できなかったらしい。

 故に、一部の強力な装備品に関してはサポートNPCに装備させると、能力にロックが掛かる様になった。

 だが、ここは現実。

 神威もサポートNPCでは無く、一人の人間として存在しているのだから、その制限は無くなっている筈だ。

 なので、訓練すれば鬼神装具の能力を十全に使いこなす事が出来るだろう。

 マドゥーラに関しては、今のゴーレムを改造して運用しているが、元々のゴーレムコアでは、上手く運用出来ない。

 これは、従来のゴーレムの動きをコアが記録しており、ゴーレムの方式を変更した為に、従来の動きが参考にならなくなった為だ。

 それに、マドゥーラ自身の現在の技術力を確認する為でもある。

 使用するであろう材料は用意してあり、全て炎尚に預けてある。

 新しいゴーレムコアも、錬金術ギルドから購入済みだ。

 一応、予定として、まずは設計図を描かせてからと言う約束にしておく。

 ゴーレムはイメージだけで作るのと、設計図を描いてから作るのとで出来栄えが変わる。

 イメージだけで作った場合、相当なイメージ力が無いと、どこかチグハグな出来になるのだ。


 神威とマドゥーラに俺がいない間の課題を話し、ジーナ達には同行を頼む。

 今回、追加で確認したい事もある。

 その為に、俺は自室でシステムを呼び出し、その操作を行った後、必要な物を準備した。



 そして、朝。

 荷物を背負い、ジーナ達を連れてサガナを出発した。

 目指すは鉱山の村『デリラオサ』。

 若干憂鬱だが、依頼であるのだから仕方がない。




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります


そして、誤字報告なる機能が追加されているのを知りました

投稿する際には一応何度か確認しているのですが、どうしても漏れてしまう事はあります

御気軽にご利用くださいませー

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