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第68話




 マドゥーラ自身の戦闘能力は低い。

 それを補う為にゴーレムを使っているが、そのゴーレムを突破された場合、かなり危険だ。

 なので、ハスタの指導をしつつ、同時にマドゥーラの方も自衛出来る程度には鍛える必要がある。


 マドゥーラに持たせたのは中盾(ミドルシールド)とメイスだ。

 中盾でガードし、相手の隙にメイスの一撃を繰り出す。

 打撃武器であるメイスであれば、身体の何処かに叩き付けるだけでダメージが与えられる。

 マドゥーラの戦闘スタイルは、耐える事を主体とし、そうして耐えている間にゴーレムを呼び戻す。

 勿論、ゴーレムが呼び戻せない場合もあるだろうが、そう言う場合でも耐えられるだけで生存率は高くなる。


 現在はマドゥーラとハスタで戦う事で、ハスタは基本を学び、マドゥーラは防御を学ぶ。

 そして俺は、神威や炎尚とリルを交えて組手。

 神楽はジーナ達と訓練。

 これを最近は庭先で行っているのだが、それぞれでやっている事のレベルが違う。


 特徴的なのが神楽の訓練だ。

 神楽の頭の上にはその日の朝に採取された産みたての卵。

 それをただ乗せているだけだが、その状態でジーナ達三人を相手取って動いている。

 その卵をどんな方法でも良いので、訓練中に手に入れる事がジーナ達の訓練内容だ。

 神楽は一切の攻撃はしていないが、卵は未だに取られた事も無く、落ちて割れた事も無い。

 ちなみに、その卵はちゃんと調理されて食卓に並ぶ。


 そうして過ごし、休日には地下で色々とゴーレムのパーツを作っていく。

 一気に作る事は出来ないが、小分けにして作っておけば、小屋が出来た後で組み立てるだけだ。

 今作っているのはゴーレムの頭部。

 一昔前に流行った狩猟ゲームのモンスターをモデルにしているが、流石にそのままにする気は無い。

 額の中央部分から真っ直ぐに角を伸ばす。

 ただし、その角自体はとある武具を利用しているが。

 そうやって作り続けたパーツは、既にゴーレムの大部分が完成している。

 ただ、唯一の心配事が残っており、それがこのゴーレムの一番大切なユニットパーツが、未だにテストしていないのだ。

 理由としては単純で、手持ちのゴーレムコアのパワーが不足している為にテストが出来ないのだ。

 このユニットは零式を参考にしてはいるが、出力が桁違いなのだ。

 実は、向こう(ゲーム)で入手した手持ちの魔石でテストしてみた事がある。

 だが、高エネルギーを内包している筈なのに、此方では一切使う事が出来なかったのだ。

 前にレイから『使う事が出来ない』と言われていたのを思い出す。

 つまり、向こうで手に入れた魔石達は、何らかの理由で此方では使う事が出来ないという事だ。

 こうなれば、逆さ迷宮に行ってブラックドラゴンゾンビを倒し、魔石を入手するしかない。


 冒険者ギルドに行き、アイナに逆さ迷宮の入場許可証の件を聞くと、渋々といった感じでそれを取り出して来た。

 見た目は小さな金縁のカードで、中央にサガナ冒険者ギルドのマークが打刻されている。

 そして、裏には発行者としてギルドマスターであるクックの名が刻まれていた。

 早速迷宮に向かいたいが、アイナとクックから条件として、マキーシャ達とジーナ達を同行させる事になった。

 元々、同行させるのは予定していたので、マキーシャ達に連絡を取り、後日に細かい計画を立てる。

 結果、迷宮に向かうのは3日後。

 マキーシャ達の防具の修理が終わるのが明後日であり、一日はその具合を見てから出発となる。

 そして、迷宮を攻略した後、ハスタの指導役をマキーシャ達に移譲する。

 その話をした当初は、マキーシャ達も渋い顔をしていたが、ハスタが素直に謝罪し、以後はちゃんと指示に従う事を約束した事で、引き受けてくれた。


 そうしてマドゥーラとハスタの訓練をしつつ、夜の少ない時間でゴーレムのパーツを作っていく。

 問題としては、やはりテストしていないユニットパーツだが、逆さ迷宮から戻ったらテストするとしよう。

 神威の持ってる魔石を借りれば、一応テストは出来るのだが、もしもミスで魔石が破損したらそれこそ取り返しがつかない。

 なので、今回の逆さ迷宮で何としても魔石を手に入れなければならない。



「さて、それじゃ行くが、何か質問はあるか?」


「ま、王牙がいれば多分何の問題も無いだろうさ」


「聞いた説明通りなら、私達も問題有りません」


 マキーシャ達とジーナ達を連れて平原迷宮の朽ちかけた教会の前に立つ。

 マキーシャ達が前に攻略した際の反省として、カロリーメ○トのような簡単に摂取出来る食料を用意し、更に予備の武具をいくつか用意して置く。

 まぁこのカロリーメ○トだが、こっちでは保存食に近い物で味は非常に悪い。

 一度口にした事があったのだが、余りの不味さに飲み込むのに飲み物を要し、それ以来、インベントリには大量に食料を保管してある。

 今回もその保存食を食べる前に、インベントリの食事を出すつもりだ。


「それじゃ、攻略……いや、再攻略するか」


 教会の中で全員が並ぶ。

 マキーシャの話だと、教会から出ようとした瞬間、逆さ迷宮に飛ばされたという話なので、試しにラナが出ようとした瞬間、足元が光り輝く、足が床に貼り付いた様に動かなくなり、俺達の意識は暗転した。



 一番最初に気が付いたのは、やはり俺だった。

 あの暗転する感覚は、何度もゲームにログインする際に味わっている物と似ていた。

 周囲を見回せば、全員が気絶した状態で倒れている。

 説明を受けた際に、ここは部屋で唯一の安全地帯(セーフゾーン)と言うらしいので、取り敢えず周囲を確認し、神威が言っていたここのルールの書かれた壁を見る。

 聞いた通りの内容だが、読めば読む程、明らかにユーザーの手が入っている事が判る。

 ゲームの逆さ迷宮は、どれだけ冒険者が嫌がる内容にするか、開発陣の鬼畜さが滲み出ていた。

 この迷宮もそれがコンセプトになっているのだろう。

 だが、バグか何かで階段部分には適応されなかったらしく、安全地帯になっている。


 そうやって考察していると、全員が頭を振りながら起き上り始める。

 体に異常がない事は判っているが、一応各々で確認してから逆さ迷宮攻略を開始する。


 と言っても、出て来るリビングメイルと死霊騎士(デュラハン)を倒すだけの作業だけどな。



 最初の部屋で出て来たのは、十数体の冒険者の成れの果て(ゾンビ)とリビングメイル、そして最奥に死霊騎士。

 ゾンビ達の方を鑑定眼で見ると、それぞれが名前を持っていたので、迷宮が生み出した魔獣(モンスター)では無い。

 リビングメイルの方は、全部が名前無し。

 魔獣の中にはたまに、『名前付き(ネームド)』と呼ばれる非常に強い個体が出る事があるが、こっちに来てからは今まで出会った事は無い。



 『-シシマル=ゲン-』

 クラス:死霊騎士



 そうそう、名前付きの場合はこんな感じで……

 その名前を見て、思わず死霊騎士の方を見る。

 いや、こんな名前の名前付きがいる筈がない。

 こんな名前、明らかに地球側でしか見た事が無い名前だ。


「ボーっとしてないで行くよ!」


 マキーシャがそう言って、ゾンビとリビングメイルに向かって駆け出す。

 他のメンバー達もそれに続いて戦闘を始めた。

 戸惑いこそあるが、もしかして、ただの偶然なのかもしれない。

 そう無理矢理納得させ、目の前の事に集中する。


 目の前にいる死霊騎士(シシマル)の武器は、小盾(スモールシールド)に片刃のロングソード。

 間合いに入った瞬間、それが勢い良く突き込まれる。

 それを最小限の動きで回避し、さらに踏み込む。

 それに合わせて、死霊騎士が足捌きを駆使して更に追撃を掛けてくる。

 だが、全てが見える。

 深く入り込んだ瞬間、死霊騎士の小盾が繰り出された。

 予備動作無しのシールドバッシュ。

 あちら(ゲーム)では初心者のソードマンでも使用可能な基本技だが、予備動作を必要とせずに繰り出せるのは、中級者以上だけだ。

 不用意に当たれば、体勢を崩されて一気に斬り込まれる。

 そのシールドバッシュに合わせ、小盾に拳を叩き込んだ。

 通常なら、俺の方が吹き飛ばされるのだが、素の能力差で死霊騎士を押し返す。

 ギャリギャリと音を響かせ、死霊騎士が踏ん張る。

 その瞬間、身体を回す様にして死霊騎士の横手に回り込み、ガラ空きの胴体部目掛けて棍を振り抜いた。

 その一撃で死霊騎士が上半身と下半身に千切れ飛ぶ。

 予想はしていたが、漆黒の鎧の中身は何も無く、ただの空洞がそこに広がっていた。

 床に倒れ伏した死霊騎士が溶ける様に消えて行き、そこには小さな魔石が一つ残された。


 死霊騎士を倒した後は、残っているゾンビとリビングメイルを殲滅した。

 残った素材はある程度回収し、毒煙が充満する前にさっさと次に向かった。


 そうやってどんどん階層を攻略し、その度に現れるリビングメイルと死霊騎士を倒す。



 あぁ、とんでもなく最悪な気分だ。

 今まで倒した死霊騎士の数は4体。

 どれもこれも『名前付き』だった。


 『-シシマル=ゲン-』

 『-ユウコ=ミナミ-』

 『-ラム=アブデュラ-』

 『-アレックス=ミュラー-』


 間違いない。

 彼等は、ユーザーだった(・・・・・・・)存在だ。

 何らかの理由で迷宮に捕らえられたのか、迷宮で死んで取り込まれたのかまでは判らない。

 だが、この異世界に俺以外のユーザーがいる事が判明した。

 先程戦った死霊騎士に、戦いつつも小声で問い掛けてみたが反応は無かった。

 つまり、彼等には最早自我と言う物は消滅している。

 神威が言っていた『嫌な感じ』の正体はコレだろう。

 神威はサポートNPCだ。

 その為に、ユーザーであれば本能的に察知出来る。

 一体、誰が何の為にこんな事をしたのか。

 謎は深まるが、此処で悩んでも仕方ないので気持ちを切り替える。


 そうしてやって来たのは最後の扉。

 聞いた話では重厚な扉で、閂が設置されているという話だったが……


「……小さい?」


「閂は?」


 ラナとミナキがそう言って目の前の扉を見ている。

 二人が言う様に、目の前の扉は道中の扉を多少豪華にした感じではあるが、別に重厚でも無く、閂も無い。

 聞いた話と違うんじゃないか?


「こんな扉じゃなかったよね?」


「アタシ等の時は馬鹿デカかったね」


「それに……神威さんが言っていた文字もありません」


 マキーシャ達が扉を調べつつ、そう言う。

 ……嫌な予感がしてきたぞ。


「取り敢えず、開けてみましょう」


 ジーナが扉に手を掛けると、ゆっくりと扉が開いて行く。

 そして、見えて来たのは道中の部屋と同じような部屋だった。

 ただし、リビングメイルはおらず、その部屋の中央には一つの赤黒い鎧が複数の篝火に照らされて佇んでいた。

 その鎧を鑑定眼で確認する。



 『-シロウ=ミツヒデ-』

 クラス:怨霊武者(テラーサムライ)



「見た事無い鎧だけど……」


 ジーナがそう言っている通り、この異世界には存在しないだろう。

 あれは嘗て、あちら(ゲーム)で起きた特殊イベントをクリアする事で入手できる鎧であり、その見た目から某人種には称えられ、別の某人種には叩かれまくった曰く付きの防具。

 イベント報酬と言う事で、最初はそれなりの能力しか得られないが、強化する事で化け物染みた能力に昇華する。

 最終強化時の名は『日輪(ニチリン)』と呼ばれ、上位ユーザーの中に好んで使い続ける者がいた。

 そして、その名は数少ない俺の知り合いでもあった。 

 怨霊武者がゆっくりと腰に据えた片刃の剣を抜いて構える。


「……アンタ程の腕で何があったんだよ……」


 その剣の柄には、小さな鳥の人形が紐で繋がれ、揺れていた。




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