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第65話




 マドゥーラに教えつつ、色々と準備をしながら日々を過ごす。

 たまに息抜きとして、冒険者ギルドで依頼を受けるのだが、サガナではそこまで強い魔獣はいない。

 なので、最近は平原迷宮に行く事が多い。

 と言うより、ギルドの依頼も平原迷宮関連が増えている。

 だが、森の方でも依頼が無い訳では無く、駆け出し冒険者には森での依頼が推奨される。


 そんな駆け出し冒険者の中には、自分の実力に絶対の自信を持っていて人の話を聞かない冒険者もいる。

 その為、正規の依頼を受けずに無謀な魔獣に挑んで返り討ちにあう事が多い。

 そう言う無謀な事を仕出かす危険性がある駆け出し冒険者には、ギルドマスターと受付嬢によって監視兼指導役を付ける事がある。


 アイナからそう説明されたのだが、早い話、俺にその監視兼指導役をして欲しいと言う事なのだろう。

 そこまで無謀な駆け出し冒険者がいるのかと思ったが、アイナ達の疲れた表情を見る限り、いるんだろうな。

 だが、今のサガナには俺以外にも有能な冒険者がいる筈なのに、何故俺なのだろうか。


「マキーシャ達は?」


「そのマキーシャさん達が手に負えないと……」


 どういう事だよ。

 詳しく話を聞くと、アイナが知っている限りでは、その駆け出し冒険者は、冒険者登録をする前に単独でオークを倒した事があるらしく、それで調子に乗って、無謀な行動をしている。

 マキーシャ達に頼んだ際、最初は『女の言う事なんて聞けるか!』と大騒ぎし、森林での調査依頼を受けて出発した後、帰ってきたらボロボロになっていた。

 その際、その冒険者がマキーシャ達が邪魔しなければ~と騒いだらしく、マキーシャが激怒。

 手に負えないとしてリョウが指導役を降りる事を伝えたらしい。

 その冒険者は現在、サガナの武器屋を回っているらしい。


「と言っても、俺も忙しいんだが……」


「そこを何とかお願いしたいんです」


 正直、手伝えるなら手伝っても良いんだが、今の俺の優先順位は、新型ゴーレムの製作、マドゥーラの教育、資金稼ぎとなっている。

 だが、ギルドとアイナからの依頼だと無下にも出来ないしなぁ……


「それじゃ、受けても良いが、交換条件でちょっと頼みがある」


 その言葉でアイナの表情が曇る。

 別に無茶な事を頼むつもりはない。

 少々、とある事情があってどうしても欲しい物があるのだ。


「平原迷宮にある逆さ迷宮の入場許可証」


「いくらなんでもそれは……」


 現在、逆さ迷宮への入場には、ギルドが許可証を発行している。

 まぁそれを無視して入ってる冒険者もいるけどな。


「何も俺一人で行こうって訳じゃないから大丈夫だ」


 予定ではマキーシャ達とジーナ達を連れて行く予定だ。

 戦うのは俺一人の予定だが、そこを言うつもりは無い。

 言えば確実に許可証くれないだろうし。


「ギルドマスターと相談しますが……何が目的なんですか?」


「最深部にいるドラゴンゾンビの魔石」


「手に入れたとしても、高価すぎてギルドでは買い取れませんが……」


「そこは神威から聞いてる。 使いたいから必要なだけだ」


 実は新型ゴーレムの出力計算をした際、手持ちの既存ゴーレムコアでは出力が足りない事が判った。

 使う予定のゴーレムコアは、零式達と同じコアなのだが、考えている機能を全て搭載した場合、圧倒的に出力不足なのだ。

 だが、このコアに補助としてドラゴンゾンビの魔石使用すれば、出力不足は解決する可能性がある。

 システムから呼び出せるコアは、同じゴーレムには同時に装着する事は出来ないので、こうするしかない。

 この方法、実はマドゥーラの授業中に発見した事だ。

 システムの方のコアに刻まれている魔方陣が、魔石に刻まれている魔方陣と微妙に違ったのだ。

 なので、互いに干渉してしまう同一のコアでは無く、別々のコアならば干渉せずに相乗効果を狙う事が出来る。

 現在は、システムのコアに刻まれている魔方陣を、この世界の魔石に刻む実験をしている。

 まぁ、結果は(かんば)しくないが……

 神威がドラゴンゾンビの魔石を持っているが、娘の物を取り上げる事はしない。

 くれるとは言っていたが、どうせなら自分で手に入れたい。


「その内包魔力は王都クラスの街でも、100年は供給出来ると言う魔石を何に使うというのですか……」


「まぁ悪事には使わないって事は約束するさ」


 俺の言葉でアイナの視線が若干冷たくなるが、本当に悪事に使う予定なんて無いんだがなぁ……

 この時の俺は知る由もないが、王都の冒険者ギルドから俺の行動に対し、特に注意する様に指示が出た事をクックが伝えたばかりだったらしい。


「取り敢えず、相談はしますが、指導役を受けて頂かないと……」


 アイナの言う通り、ギルドからこの指導役を受けなければ話にならない。

 一応、引き受ける事は伝え、明日にもう一度来る事にした。



 次の日、神威とマドゥーラとリルを連れてギルドにやってくる。

 リルは入口で待機させ、二人と共に入って見回すと、額に手を当てているアイナと、何か騒いでいる少年がいる。

 少年は中肉中背、青髪で身長は神威より大きいが、ブラウよりは小さく、175くらい。

 背丈ほどもある幅広のグレートソードを背負っている。


 多分、あの少年が今回の件の少年なんだろう。

 しかし、話に聞いている『オークを単独で倒した』と言うには少々疑問が残る。


「アイナ、この坊主がそうなのか?」


「あ、王牙さん、この子が今回依頼した……」


「ハスタだ! 将来、白金級冒険者になる俺様に付いて来れるのを光栄に思うんだなオッサン!」


 少年が胸を張ってそう言うが、断じてオッサンでは無い。

 後ろにいる神威は呆れ、マドゥーラも唖然としている。


「まぁそれはお前の努力次第だが……」


「オークを単独で倒せた俺様が、努力とか笑わせるな!」


 アイナが頭を抱え、マキーシャ達が匙を投げる訳だ。

 しかし、オークを単独で倒した、か。

 そこら辺が気になるので、しばらく神威達にその場を任せ、アイナと共に奥の会議室に向かう。


「今回は申し訳ありません……」


「まぁアレじゃ頭を抱えるな」


 会議室でアイナと話し、ハスタが過去に本当にオークを単独で倒したのかを聞くと、ギルドの方でも確認が出来ているという。

 彼が住んでいた『リヴァイツ村』はサガナから2日くらいの距離にあり、そこにオークが現れてハスタが討伐した。

 それから、ハスタは自信を付けて冒険者になると言って王都に行き、そこからサガナにやって来たのだという。

 現在のランクは銅級で、依頼中に無謀な行動を繰り返した為に、他の冒険者に嫌われて単独で行動している。

 使用武器は見た通りのグレートソードであり、一撃の威力を重視している。

 どれだけ無謀な事をしているのか聞いてみると、マキーシャ達と行動を共にした時の事を聞かされた。


 その時の依頼は、森の調査とゴブリンの討伐。

 基本的に森の中を散策し、ゴブリンと出会った場合のみ討伐を行う。

 この調査は、今年の薬草や食材の分布、魔獣の生息域を調べるのが主な目的だ。

 だというのに、ハスタは碌に調べもせずに森の奥へと進み、注意しても聞きもしない。

 そして、ゴブリンでは無く、コボルドの集団に遭遇。

 しかも、大型のブル型コボルドで、マキーシャが止めたにも関わらず、ハスタが突っ込んで行った。

 放置する訳にもいかず、マキーシャ達も交戦し、ボロボロになりつつ撃退。

 それでも殲滅する事は出来ず、何匹かは森の奥へと逃げたという。

 更に突っ込んで行こうとしたハスタを、マキーシャが物理的に止めてサガナに引き返し、現在は足の速い冒険者と柴隊の一部が詳しく調査を続けている。


 その話を聞いた後、疑問が湧く。

 オークを単独で倒せる腕があるのに、すばしっこくて数は多いが、弱いコボルドを殲滅し切れなかった。

 そうなると、腕自体を疑う訳だが、ギルドで確認している以上、疑う事も出来ない。


「アイナ、少し確認したい事があるんだが」


「判る事であるなら……」


「リヴァイツ村にギルドは?」


「村としても規模が小さく、冒険者を引き留める事が出来ないという事でありません」


 まぁ普通はそうだろう。

 冒険者ギルドがあるような場所は、大抵は魔獣被害があり、更に、冒険者を受け入れて引き留めるだけの力がある。

 村と言う規模でも可能な所はあるが、ある場所はかなり稀だ。


「何か依頼がある場合は、サガナで受けるのか?」


「そうなります」


「……ハスタがオークを倒す前に、村の近くでオークの大規模討伐作戦があったか確認出来るか?」


「覚えている中では無いとは思いますが……直ぐに調べれば多分判りますが、それが?」


「まぁ少しな」


 そう話しながら、受付に戻ってくると、問題のハスタがマドゥーラと受付嬢の一人と言い合っている最中だった。

 受付嬢の方は猫獣人らしく、頭の上に三角の耳が付いている。


「だーかーらー、銅級じゃこの依頼は受けさせられないにゃ!」


「オークだって倒せたんだ! ランクを上げてコイツに挑んでも問題無いだろ!」


「オークを倒せたからって、コレは無理だって言われてるでしょ!」


 待ってる間に何か依頼を受けようとして、皆から却下されているようだ。

 何を受けるつもりだったんだ?

 そんな様子を見ながら歩いて行く。


「あ、父様お帰り」


 神威が気が付いて手を振るが、その表情は呆れている。


「随分と白熱してるが、何を受けようとしてるんだ?」


「平原迷宮のオーガ討伐」


「そりゃまた……」


 オーガとは、マキーシャ達が戦ったギュガスオーガの進化前の魔獣だ。

 赤い肌を持ち、その膂力は人など簡単に襤褸切れの如く吹き飛ばせる。

 駆け出し冒険者が挑むような相手では無いのだが、ハスタは説明されても納得せずに受けるの一点張り。


「先輩、どうするにゃ?」


「ミーニャは他の冒険者の対応をお願い」


 アイナがミーニャと言う受付嬢と交代するが、説明しようが変わらない。

 仕舞いには『自分が有名になる事をサガナの冒険者ギルドは僻んでいる』、『オーガ程度に怯えるサガナの冒険者達のレベルは見た目だけ』と言う風に言い始め、周囲にいた冒険者達の眼に殺気が篭り始めた。

 こりゃ勘違いも良い所だな。


「アイナ、その依頼を俺が受けて坊主を同行させりゃ良いだろう」


「それは構いませんが……大丈夫なんですか?」


 アイナの心配も判るが、ここは一度、徹底的に天狗になった鼻を圧し折った方が良い。

 問題無いと答えつつ、オーガ討伐依頼を受注する。


 期間は一週間。

 その間に『オーガの大牙』を10本納品する、と言うのが今回の依頼。

 オーガの大牙と言うのは、オーガ種の下顎から生える巨大な犬歯で、堅いが様々な所で使われる素材だ。

 今回は錬金術師からの依頼になる為、多少は砕けても良いという。


 依頼を受注し、さっそく平原迷宮に行くのだが、ハスタの装備を見て心配になる。

 しかし、ハスタ自身は何の準備もせずにどんどん進んで行く。

 一応、今回はPTリーダーとして方針を決めるのはハスタなのだが……

 それを見ながら、俺達は溜息を吐いた。


 こりゃ、鼻を圧し折る以前の問題だな……




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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