表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/105

第64話




 マドゥーラが弟子になり、屋敷の一室に引っ越してから一日目。

 勉強部屋として地下の鍛冶場兼錬金室を考えたが、色々と危ないので別の部屋を利用する。

 ジーナ達の部屋の隣を勉強部屋と決め、机と椅子、黒板代わりにショップから黒の一枚板を購入。

 他にも必要な素材を買ったり作ったりして、勉強を始めるとしよう。



「さて、それで始めようと思うんだが……」


 俺がそう言いながら目の前の光景を見る。

 マドゥーラが座ってるのは判る。

 だが、何故かその隣に神威とジーナ、ミナキ、ラナの4人が座っている。


「何でいるんだ?」


「色々な知識を持つのは良い事です」


「……損は無いです……」


 ミナキとラナは、もしもの時の為に覚えたいという事だろう。

 まぁこういう知識は確かに覚えておいて損は無い。


「メイド長から御嬢様の監視を……」


 ジーナは神楽から言われて、神威の監視か。

 と言うより、神楽はメイド長なのは判るが、神威を御嬢様と言うのは、神楽の教育の賜物か……

 一応、外では言わないように言われているらしいが、このままだと普通に専属になりそうだ。

 まぁそこら辺は後々考えるとしよう。


「それじゃまずはマドゥーラ、どんなゴーレムを作りたいんだ?」


「え、えっと……夢は城級(キャッスル)ゴーレムを越えるゴーレムを作る事……です」


 この夢を知る事は大事だ。

 もし、『小さいゴーレムを大量に作って操作したい』と言う夢なのに、教える内容が『巨大ゴーレムを作る方法』とかだと意味が無い。

 そして、マドゥーラの夢は城級ゴーレムを越えるゴーレムを作る事。

 よし、把握した。


「それじゃ、それを目標に色々と教えるとするか」


「お願いします!」


 マドゥーラが頭を下げる。

 では、授業開始だ。


「まず、ゴーレムとはって基本だが……これは必要無いからな、バッサリカットする」


 此処にいる全員知ってる事だろうしな。


「それで、等級に関してだが、これは使用した素材とゴーレムコアによって決まる」


 例えば、素材に青銅や鉄を使った場合、等級は兵士級(ソルジャー)騎士級(ナイト)が精々だ。

 これには、ゴーレムコアが関係する。

 コアは、基本的に魔獣の魔石が利用される。

 魔石を加工し、ゴーレムを動かすエネルギーを取り出し、周囲のマナを吸収して変換する。

 言うなれば、ゴーレムコアは燃料とエンジンだ。

 もし、コアを強力な魔獣の魔石で作った場合、フレームを青銅で作った場合、起動した瞬間フレームが耐えられずに自壊する。

 強力なエンジンを支えるのに、貧弱なフレームでは耐えられないのだ。

 逆に、オリハルコンでフレームを作り、コアにオーガの魔石を使った場合、今度は起動すらしない。

 これは、オリハルコンを動かすのに必要なエネルギーを、オーガの魔石程度では賄えないからだ。 

 故に、等級さえ判れば、素材にもある程度予想が付く。


「これがゴーレムの等級だな」


「あの、師匠のゴーレムの等級っていくつなんですか?」


 マドゥーラに聞かれるが、正直な話をすれば、俺の零式の等級は不明だ。

 まず作り方が違うからなぁ……


「それを説明するには、ゴーレムの製作方法が関係してくるな。 マドゥーラ、22号を召喚して貰えるか?」


 これを説明するには、実際に召喚して違いを見せた方が早い。

 22号が部屋の中に召喚され、その隣に零式を召喚する。

 ただ、零式の身長では立った状態にはなれないので、片膝を突いた状態だが。


「調べれば、零式と22号の違いが良く判るだろう」


 全員が2体を前にしてその違いを確認しようとするが、見た目には気が付かない。

 そうしていると、答えを知っている神威が、零式の腕部装甲を外した。

 そして、その内部構造を見て、マドゥーラが気が付いたようだ。


「もしかして、内部と外部で別々の素材が使われているんですか?」


「正解だ」


 神威が外した装甲を元に戻し、説明する。

 ここで、この世界との差異を感じるが、問題は無いだろう。

 フレームとマナマッスル、アーマーにコア、そしてマナタンク。

 人体を模して組み立てる事により、より複雑で柔軟な動きを実現出来る。

 唯一の難点が、複雑になる事で整備し難いと言う事だが、パーツをユニット毎に分割する事で丸ごと交換すれば問題無い。


「本当なら、実際に作ってみたい所なんだが……まだ作業場が完成してないんでな、小さいのから作ってみるとしよう」


 そう言って取り出したのは、小さい魔石。

 これはゴブリンの魔石で、比較的安価で手に入る物だ。

 それに青銅と、マッドシュリンプと言うエビの魔物の素材。

 これ等を全員の目の前に置く。


「これ等でネズミ型ゴーレムを作ってもらう」


 黒板に必要な情報を書き込んで行く。

 まず、フレームに青銅を、マナマッスルにマッドシュリンプを使用する。

 アーマーも青銅を使うようにする。


 神威とマドゥーラは説明通り、青銅を錬金スキルの『変形』で作り上げて行く。

 ラナとミナキは二人して、紙に設計図の様な物を描いているようだ。

 ジーナはコアを手にし、そこに刻まれている制御システムを見ているようだ。

 個人個人で始める事が違うなぁ……



 しばらくして、最初に完成させたのは神威。

 まぁ予想通りだな。

 作られたのは手のひらサイズの小さなネズミ。

 基本に忠実で、毛皮を付ければ見ただけでは判らないだろう。

 次に完成させたのはジーナ。

 若干サイズは大きいが、此方もネズミの形になっている。

 マドゥーラが作ったのは神威とほぼ同じサイズだが、耳が少し大きく、尻尾が短い。

 ラナとミナキが作ったのは、耳が大きく、尻尾も長いが、サイズ的には一抱えほどあるネズミ型。

 完成したネズミ型ゴーレムが机の上に並ぶ。


「それぞれ個性が出てるな」


 だが、ラナ達が作ったネズミ型ゴーレムは若干動きが鈍い。

 それもその筈で、ゴブリンの魔石ではこのサイズのゴーレムを動かすのに出力が足りないのだ。

 その事を指摘すると、マドゥーラがそれを聞いて感心している。

 この世界のゴーレム技術は、使用する素材を形作ってコアを埋め込むだけだった。

 だが、俺のゴーレム技術は掛け離れている。

 これが後々、どういう影響が出るかは判らないが、俺の弟子である以上、最高のゴーレム技師になって欲しいものだ。


 ネズミ型ゴーレムはコアを外し、一旦回収する。

 その後は道具箱に収納して、暇な時に解体する予定だ。

 もちろん、欲しければ後々で譲る予定ではあるが。

 すると、ジーナ達が欲しいと言う事なので、後で渡す事にした。

 聞けば、もう少し小さく作り直して、潜入用のゴーレムにする予定なのだと言う。

 その為には、ゴーレムにも記録装置を付ける必要があるのだが、それについては別途相談と言う事になった。

 まぁこの記録装置は悪用も出来るので、教えるかは炎尚と神楽に彼女達の働きぶりを聞いてからになる。

 問題無いだろうけどな。


 次に教えるのは、フレームについて。

 つまりは骨格になるのだが、実はコレについては答えが簡単なのだ。

 それは、『人型であるなら人の骨格を模倣する』と言うのが正解。

 マドゥーラからどうしてなのか、と聞かれたが、骨格は全身を支える為に、バランス良く成り立っている。

 その為、生物によってその形状は様々であり、その骨格形状こそが、その生物の形を形作る上で最適な形になっているのだ。

 故に、人型ならば人の骨格を模倣するのが最適解なのだ。

 その骨格に関しても、どういう形状にすればいいのか、材質は、構造は、と質問を受けて答えていく。


 そうして授業をしていると、扉がノックされ、炎尚が夕飯であることを伝えてきた。

 窓から外を見れば、既に日が沈み始め、空が赤くなり始めている。

 取り敢えず、今日はここまでにし、続きは次回と言う事になった。

 予定としては、冒険者ギルドで依頼が無い時に授業をし、依頼中は自習とする。


 夕飯を食べ終えた後は、ジーナ達の希望通り、ネズミ型ゴーレムをカスタマイズするのだが、マドゥーラを同席させる。

 これは、見る事も大事な事だからだ。


 まず、全体を軽くする為に、フレームをマナメタルと言う超軽量金属で作る。

 そこにマナマッスルとしてマッドシュリンプを繋いでいく。

 これ以上の素材を使うと、コアがかなり高価になってしまうのだ。

 そして、マナタンクにルビーメタルと言う宝石の様な魔法金属を使う。

 このルビーメタルは、周囲のマナを吸収して保管すると言う能力を持っているが、その容量は少ないので、比較的安価で手に入る。

 だが、このネズミ型ゴーレムを動かすには充分な容量だ。

 それを腹部に埋め込み、特殊な記録装置を胸部に納める。

 最後に、背の部分にコアを埋め込んで俺の作業は終了。

 後は3人に希望する外装となる毛皮を取り付ける事で完成となる。

 このネズミゴーレムが記録した映像は、ジーナ達が設定する『合言葉』で確認する事が出来る様になる。



 3匹のネズミゴーレムが出来上がったのを見て、マドゥーラが溜息を吐く。

 作業を見ていただけだが、その技術は自分よりも遥かに高く、最高峰とも思えた。

 何より、自身の持つ技術を簡単に他人に教えると言うのは、技術者としてはあり得ない事だ。

 大抵は弟子と言えども秘匿し、見て盗むか、対価を要求される。

 その対価も、莫大な金額だったり、下手をすれば肉体関係を強要してくる場合もある。

 それが、あっさりと明かした上に、その技術で作ったゴーレムをメイドに渡すなど……

 若干眩暈がする気がするが、それが師匠であるこの男なんだと納得させる。


「さて、見て分かったと思うが、これが俺の作るゴーレム技術の基本になるが、気になる事があったか?」


 聞かれて、質問をしていく。

 フレームの作り方で気になる所がある。

 それが摩耗の問題。

 人間でも、負荷の掛かる関節と言うのは擦り減っていく。

 それ以上の負荷を受けるゴーレムの関節が耐えられるとは思えないのだ。

 その答えは単純な物だった。

 摩耗に強い素材を関節に使うだけ。

 今回の場合は、関節部分にアダマンタイトの粉末をコーティングしていると言う。

 アダマンタイトはオリハルコン並に高価だが、粉末ならばそれ程多くは使わない。

 次に『マナタンク』と言う聞いた事の無い機能。

 コレに関しては、単純な機能で、ゴーレムの稼働時間を延ばす為の物。

 付けるのと付けないのでは倍くらい違うと言う。

 最後に、胸部に付けた謎の物体だが、これは何なのかは教えて貰えなかった。

 師匠曰く、今は知らなくて良い事だ、と言われた。

 後で教えてくれるのでしょう。



 完成したネズミ型ゴーレムを持ってジーナ達に会いに行き、アーマー代わりの毛皮を選んでもらう。

 ジーナは焦げ茶色、ラナとミナキは灰色の毛皮を選んだ。

 その毛皮を加工し、3体のネズミ型ゴーレムが完成したのだが、これにはオマケを付けておいた。

 諜報するなら、狙った場所に侵入しなければならないので、ジーナのゴーレムにだけ、彼女と視界を共有して遠隔操作が出来る様になっている。

 最も、そのままでは出来ないので、その機能を付けた指輪を渡して操作方法を教える。

 ラナとミナキのゴーレムにも、何れは同じ機能を付ける予定ではあるが、テストと言う事でジーナのゴーレムに先行して搭載したのだ。

 それに、二人には『サンドイーグル』がいるしな。

 悪用しない事を再度忠告し、ゴーレムをジーナ達に譲渡した。


 それじゃ、設計図の細かい部分を完成させて、今日は寝るとしようかね。




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ