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第58話




 最初の部屋を突破した後、階段をゆっくりと登って3階層を突破。

 突破した部屋で出て来たのは、全てリビングメイルと死霊騎士(デュラハン)のみ。

 最初の部屋にいたゾンビは、やはり迷い込んだ冒険者だったのだろう。

 そして、部屋の中でいた敵を全て倒してしばらくすると、壁から毒煙がゆっくりと噴き出して来たのだ。

 これでは確かに休む暇が無い。

 逆に倒さずに敵を残してみたが、やはり一定時間経つと毒煙が噴き出した。

 攻略するまで、休む事が出来ないと言うのは精神的にも体力的にも厳しい事だ。

 しかし、階段は含んでいないのか、階段でなら何とか休憩が取れる。

 なので、部屋を突破した後は階段で何とか休憩する事にした。



「一体、この迷宮は何処まで深いんだろうな……」


 ブラウが焼き固めた携帯食料を齧りながら呟く。

 此処を最後に調査する事にした事で、手持ちの食料が心許無くなってきている。

 水は魔法で出す事が出来るので問題は無いのだが、食料は手持ちの分しかない。

 普通の迷宮なら可食可能な魔獣がいるので多少はどうにかなるのだが、この逆さ迷宮に出て来る魔獣は全てリビングメイルと死霊騎士である為、食べる事も出来ない。

 最悪、このままだと餓死する可能性もある。


「話には聞いてるけど、逆さ迷宮ってのは厄介だね……」


「情報も何も無いと、後どれくらいなのか判らないのも辛いですね……」


 マキーシャとリョウが呟く。

 シシーと神威は階段に座って仮眠中。

 二人が仮眠を終えた後、攻略を再開する。


「出来たばかりだから、そこまで深くは無いんだろうけどね……」


「もし、10階層とかだったら確実に体力が尽きるな……」


 短く休憩を取っているが、疲労度はかなり蓄積している。

 特に前線で戦うブラウとマキーシャ、そして回復魔法を使うシシーの疲労度はかなり高い。


「しかし、神威はまだまだ大丈夫そうだね」


 リョウがそう言って、仮眠している神威の方を見る。

 この中で平然と暴れているのは神威だけだ。

 今の所、神威をブラウ、マキーシャ、リョウと交代で組ませ、前線を維持している。

 神威のスタミナ頼みの作戦だが、現時点では問題無い。

 と言うより、神威自身の戦闘力が高い為、放置していても勝手に殲滅していく。

 だが、それでも無限に体力がある訳でも無いので、こうやって多少でも休息を取っている。



 そうして、休憩を終えた後、再び攻略を再開する。

 部屋の中にいたリビングメイルに対して、ブラウと神威が突撃する。

 今回も、リビングメイルは倒しても倒しても壁からどんどん補充されていく。

 だが、これまでの戦闘で判った事もある。


「おりゃぁ!」


 マキーシャがリョウに援護されながら、リビングメイルが現れる壁の一部を破壊する。

 すると、先程までそこから現れていたリビングメイルが出現しなくなった。

 これは出現する場所を破壊すると、どういう仕組みかは不明だが補充できなくなるのだ。

 なので、神威とペアを組まない二人は、リビングメイルの追加を防ぐ為に壁を破壊する事になった。

 もちろん、リビングメイル達がそれを黙って見ている事は無いのだが、妨害しようにも神威達が大暴れしている為にそれすらままならない。

 シシーは魔力を温存する為、必要最低限の魔法を使うだけに留めている。

 死霊騎士も攻撃を仕掛けてくるのだが、神威にはカウンターで吹き飛ばされ、ブラウには盾で防がれた後、横から神威が攻撃して吹っ飛ばしている。

 確かに死霊騎士は強いのだが、リビングメイルはそこまで強い訳では無い。

 連携を取ろうにも、それを理解するだけの知能も無い為、敵である神威達に策も無く殺到するだけだ。

 数は確かに力になるが、それは同じ程度の力関係の時だけだ。

 実力が圧倒的に掛け離れている相手に対しては何の意味も無い。

 そうして追加のリビングメイルが出なくなれば、後は残ったリビングメイルと死霊騎士だけになる。


 あっさりとリビングメイル達を処理し、死霊騎士は神威、ブラウ、マキーシャが囲んで袋叩きにすると言う方法で倒し、ドロップした魔石と僅かな素材を回収して扉を潜る。

 流石に倒しながらドロップを回収するのは、人数的に不可能なので倒した後、毒煙が出るまでの僅かな時間でリョウとシシーが回収している。

 特に、魔石と武具を優先し、装具や金属片等のドロップは拾えれば拾う。

 そして集めた素材は一時、神威が預かっておく。

 今の所、魔石はかなりの数が溜まり、リビングメイルからは剣が数本と鎧の一部が数ヵ所、死霊騎士からは剣が1本と盾が2枚。

 マキーシャ達には判らない事だが、剣はそれ程強くは無いが魔剣となっており、盾に関しても強固になっていたり、重量を軽減する等の効果が付いていた。

 ただし、どれもが『呪い』を受けており、教会などで『祝福』を受けて解呪しない限り、所有者が危なくて使う事は出来ないのだが。



 僅かに休憩出来ているとはいえ、流石に階段での休憩で疲れが完全に取れる訳では無い。

 流石に4人の顔には疲れが見え始めている。


「これで最後だと良いんだけどねぇ……」


 マキーシャが随分とボロボロになった斧を担ぎ、扉の前に立った。

 その扉は今までの扉とは違い、一段と重厚な造りになっていた。

 しかも、何故か此方側に巨大な(かんぬき)が設置してあり、内側から開けられない様になっている。


「どういう事なんでしょう?」


「まるで、中から出さないようにしてるって感じですね」


 ブラウが一応扉を調べて見るが、別段罠がある事も無く、ただ単に閂で閉ざされているだけのようだ。

 そこに、神威が一歩近付いて、扉に向かって呟いた。


「『全てを恨みし黒き存在(モノ)を封印す、何人たりとも開けるなかれ』って書いてあるね」


「……何処に?」


「あそこ」


 リョウが聞くと、神威が閂の一部分を指差した。

 そこには何かの文字が彫り込まれていたが、その文字は誰も読む事が出来なかった。


「一応、書き写して記録しておこう」


 ブラウがそう言うと、シシーが頷いてその文字を書き写し始める。

 それを見ながらマキーシャが改めて扉を見上げる。


「となれば……この扉の向こうに迷宮の主がいるって事かね?」


「恐らく、ただ『黒き存在』って言うのはどういう事なんでしょうね」


「今までの相手から察するに、『暗黒騎士(ダークネスナイト)』か『悪魔騎士(イビルナイト)』ではないか?」


 暗黒騎士も悪魔騎士も死霊騎士の到達点だと言われている。

 確かに、今まで出て来た相手からすれば、そう考えて間違いないのだろう。

 書き写し終えたシシーが下がり、ブラウとマキーシャが閂を外す。

 此処を突破しなければ地上に帰る事が出来無い為、どの道進むしかないのだ。



 ゆっくりを扉が開かれていくと、それまでに感じた事の無い異臭が漂ってくる。

 思わず、リョウとシシーが顔を顰めた。

 金属が放つ異臭とは違う、どちらかと言えば生物が腐敗した際に放つような異臭だ。


「……この悪臭は……」


 ブラウが手で口元を覆って部屋の中を見回す。

 これまでの部屋と違い、中には一切の灯りが無かった。

 だが、長い冒険者の勘が、明らかに何かがいる事を強く感じ取っている。


「シシー灯りを」


「はい」


 シシーが灯りの魔法を作って部屋の中に放った。

 そして、照らされた部屋の様相は明らかな『異常』を示していた。


 まず、部屋全体が酷いと言う程に破壊され、壁から天井に至るまで巨大な亀裂が入っている。

 他にも、灯りだったはずの松明の様な物が粉々に砕かれ、そこら中に散らばっている。


「これは……」


「いくつか見た事あるけど、こんなのは初めてだね」


 ブラウとマキーシャが警戒しながら先に部屋に入り、全員がその後に続いて入った。

 瞬間、部屋の扉が勢い良く閉まった。

 シシーが慌てて扉を引いてみるが、ビクともしない。


「逃亡は出来ないって事かね」


「まぁ当然だろう」


 マキーシャの呟きにブラウが答える。

 そして、シシーに再び灯りの魔法を使って貰い、光源を増やしていく。

 この部屋は、未だに奥が見えない程長い。

 だが、この破壊跡から、明らかに超好戦的な相手である事は間違いないだろう。



 この時、全員連戦によって疲弊し、普段なら気が付く事が出来たであろう事を見逃していた。

 それは、暗黒騎士や悪魔騎士にここまでの破壊が出来るであろうか?と。



 そして、それはブラウ達を照らしている灯りに向かって、暗闇からゆっくりと現れた。

 全身を闇とも言うべき漆黒の鱗に包み、3つの赤い眼を持ち、巨大な翼と尾を持った存在。

 ただし、その全身を覆っている筈の鱗は半分以上が剥がれ落ち、所々の肉が腐り落ち、両翼もボロボロに朽ちている。


「……あ、アンデッドドラゴン……」


「しかも、ブラックドラゴンだと……」


 シシーとブラウが驚きの余りに呟く。

 ブラックドラゴンゾンビがその濁った赤い目で全員を見下ろす。

 そして、凄まじい咆哮が部屋に響き渡った。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


「ぉぉぉぉっ五月蠅いっ!」


 神威がそう言いながら両耳を塞ぐ。

 ブラウ達も耳を塞いでいるが、アンデッドになってはいても、そこは龍種。

 その咆哮は凄まじい音だけでは無く、あるバッドステータスを与えてくる。


 それが『恐怖(テラー)』と言う物で、耐えられなかった場合、魔法やスキルの使用が一時的に不可能になり、更に身体能力も低下する。

 通常、ゾンビ系等のアンデッドはどうしても生前よりも弱くなる。

 当然の事ながら、その肉体は朽ち果て、腐り落ちて強靱さを失い、攻防共に能力が落ちるからだ。

 しかし、元々が尋常では無い力を持つ龍種は例外とも言える。

 そして、龍種の中でもっとも厄介なのが、目の前にいる『黒龍(ブラックドラゴン)』だ。


 ブラックドラゴンは凄まじい生命力と、全てを朽ち果てさせるブレスを使い、空を自在に飛ぶ事が出来る。

 更に、龍種自体が高い防御能力を持っているのだが、ブラックドラゴンはそれが飛び抜けて高い。

 通常、ブラックドラゴンを倒す場合、白金級冒険者だけでは無く、兵士も大量に動員して大半を犠牲にしてやっと、と言う程だ。

 その大半の理由が、空を飛ばれた場合、殆どの攻撃が通用しなくなることだ。

 空を飛ぶ騎乗魔獣を使用しても、そもそもの『格』が違う為、殆どの騎乗魔獣は逃げ出すか、戦意を喪失して動けなくなる。

 故に、普通は奇襲を仕掛けて飛べ無くした後、犠牲を前提にする作戦が取られる。

 アンデッド化した事で空を飛ぶ事は出来なくなったが、そのアンデッド化をした事で全てを朽ちさせるブレスの威力は非常に強力になっている。

 通常、対魔性能の強いミスリルやオリハルコンは、ブラックドラゴンのブレスを受け止める事が出来る。

 だが、これがアンデッド化した状態になると、ミスリルは短時間で、オリハルコンもある程度は耐えるが朽ちてしまうのだ。


 ゆっくりとブラックドラゴンゾンビが息を吸っていく。

 咄嗟に神威がブラウ達の方を見る。

 先程の『恐怖』の効果でほとんど動けていないブラウ達。

 これまでの疲労を考えると、やはり、全員耐え切れなかったようだ。

 ならば、どうすれば良いか。

 瞬時に神威の思考が、これまでから切り替わった。




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