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第56話

※今回はストレア視点となります




 迷宮(ダンジョン)に入ってから四日が経過したが、出て来る魔獣(モンスター)は相変わらず統一性が無い。

 まず、ギュガスオーガがいた事から予想はしていたが、通常のオーガがいた。

 ただし、オーガの上位種であるソルジャーやソーサラー、果てはキングまでいた。

 他にも、クリスタルディアと言う水晶の鹿や、クラウンバイターと言う黄金の大蛇、蠢く樹木と呼ばれるトレントが確認出来た。

 平原迷宮でここまでバラバラに出て来るのは逆に珍しい。

 しかし、中級から上位に当る魔獣が多く、もしこの迷宮が資源となるなら、サガナにとってはかなり重要度の高い迷宮になるだろう。




 オーガキング率いるオーガの群れを発見した私達は、そのまま戦闘に突入しました。

 キングはブラウとマキーシャが倒していましたが、実は単体で見るならキングはギュガスオーガより弱いのです。

 ギュガスオーガはキングと力は互角なのですが、皮膚が硬い為、キングよりかなり倒しにくいんです。

 しかし、群れになるとキングが持つ固有能力である『統率』で、仲間の行動が統一された軍の如く行動を始めます。

 その為、危険度で言えばキングの方が上となるんです。

 しかし、このキング達にとって災難だったのは、襲い掛かった相手が悪過ぎた事ですね。



 神威さんがオーガの群れを蹴散らし、縦横無尽に暴れ回っています。

 その後ろではフェンリルのリルさんが、オーガに対して攻撃して少なくない傷を与え続けていますね。

 その一番後ろでは、キングが巨大な斧を振り回し、ブラウと戦っています。 

 マキーシャさん達も周囲を囲むようにして、どんどんオーガを倒しています。

 逃げ出そうとしたオーガに向かって、私の魔法で足止めした瞬間、神威さんが投げた短剣がその首筋に突き刺さってオーガが倒れました。

 神威さんは、そのまま再び群れの中を縦横無尽に駆け回ってオーガ達を混乱させていますね。


 神威さんは銅級と聞いていましたが、この四日間で判った事があります。

 まず、その見た目とは違って恐ろしく強い。

 ギュガスオーガを倒した一撃と言い、誰よりも早く魔獣を察知しています。

 そして知識量が異常です。

 例えば、クリスタルディアを相手にした時、普通なら首を斬り飛ばせばそれで終わりなのですが、意外と硬く、斬り飛ばす事が出来るのは力が強い冒険者か、強力な魔法で倒す以外にありません。

 ですが、神威さんが言うにはそんな事しなくても倒せると言う事で、その方法を実践してもらいました。

 その方法ですが、クリスタルディアの突進を回避した際、その前足を斬り飛ばすだけ。

 すると、片足を失ったクリスタルディアは勢いをそのままに、地面を転がるのですが、クリスタルディアは普通の鹿と違って体表は水晶ですので硬いんです。

 その為、勢いをそのままに地面を転がれば全身に(ひび)が入るか、そのまま倒す事が出来るのだそうです。

 この方法なら、力の弱い冒険者でも回避出来れば簡単に倒す事が出来る様になるでしょう。

 他にも、見た事無い素材を言い当てる等、本当に銅級なのか怪しく見えてきます。



 オーガの群れを殲滅し終わり、残った素材をリルさんの鞄に収納した後、これからどうするか相談します。

 流石に四日も調査をしているので、そろそろ一旦戻らないと鞄の中が溢れてしまいます。

 ただ、気になる事もあります。


「さて、戻るのは良いとして、最後にアレの確認だけしていく?」


 マキーシャさんがそう言って見ているのは、少し離れた所にある建造物。

 見た目は教会の様な建造物で、この平原迷宮を調査して二日目に発見しました。

 先に平原の調査を終えようと言う意見で一致していたので、これまで放置していました。

 ブラウとマキーシャさん達は、恐らく、あの教会の中にこの迷宮のボスがいると考えています。

 ただ、神威さんは若干違うと考えているようです。

 その最大の理由として、教会のサイズが小さ過ぎると言うのです。

 確かに、この教会のサイズは街にある様な物では無く、村などにある様な小型のサイズです。

 ですが、この迷宮はまだ出来たばかりだと思われますので、ボスと言えどもそれほど脅威では無いでしょう。

 なので、一応確認だけする事になりました。

 しかし、気になる事もあります。

 先に入った冒険者達がいるはずなのですが、未だにその痕跡が見付かっていないのです。



 教会の目の前に到着すると、その入り口の両側には首の無い騎士の像が置いてありました。

 最も、これは最初から無かったのではなく、その足元に二つの首が転がっていました。

 ですが、ここは迷宮。

 最初から首が落ちているデザインで誕生したのでしょう。

 これはどういう意味なのでしょうか。

 教会の入口は大きな木造の両開きの扉となっています。

 窓はくすんで中は確認出来ず、入口以外に中に入れる場所は無い様です。

 ブラウが慎重に扉を開け、中を確認しましたが、何もいないようです。

 ボスがいると予想していましたが、どうやらボスもいないようです。


「何も無い……?」


「見た限り、普通の教会っぽいね」


 ブラウとリョウさんが慎重に中を確認しています。

 マキーシャさんとシシーさんも中に入って天井を見上げています。

 普通の教会では、天地創造の神話が描かれる事が多いのですが、そこには見た事も無い絵が描かれていました。

 ボロボロなので全容は判らないが、少なくとも私が知っているどの神話にも当て嵌まらない。

 見た限りでは、何かを信仰しているような感じはするのですが、見ていると不安になっていきます。


「んー……本当に何も無いし、戻って報告をしようか」


 ブラウの言葉に全員が頷き、入口から外に出ようとした瞬間、教会の床が光を放ちました。


「っ!?」


「あ、足がっ!?」


虚影撃(きょえいげき)!」


 その瞬間、神威さんのスキル?が私とリルさんに放たれ、勢い良く入口から外に吹き飛ばされました。

 そして、教会の中で閃光が炸裂しました。


「直ぐにギル」


 その言葉を最後に、教会の中にいたはずの仲間達は姿を消していました。

 少し唖然としていたと思いますが、見た限りでは私にダメージはありません。

 恐らく、あのスキルは相手を吹き飛ばすだけの物だったようです。

 急いで確認しようと教会の中に入ろうとした時、リルさんが私のローブの裾を噛んで引っ張られました。

 それを受けて、仲間達が消える瞬間の言葉を思い出します。

 入口から教会の中を見る限り、爆発系の罠で全滅したのでは無いようです。

 そうすると、考えられる事はアレは迷宮の何処かに転移させられたのでしょう。

 今まで誰も戻らず、痕跡も無かった事から、全員この教会の罠に掛かってしまったのでしょう。

 これは直ぐに冒険者ギルドに報告し、一時的に閉鎖して貰った方が安全ですね。


「冒険者ギルドに戻りましょう。道中の護衛、お願い出来ますか?」


 私の言葉にリルさんが頷いてくれました。

 『終点の針』はリョウさんが持っていましたが、リルさんには入口の方角が判るようです。

 リルさんの後を付いて行き、急いで地上へと戻る事にします。



 一日掛かりましたが、何とか入口に到達して地上に戻ります。

 五日ぶりとなる地上ですが、時間は既に昼になっているようです。


「調査は終わりかい? 他の仲間は?」


 ギルドナイトの一人が私に話し掛けてきましたが、詳しい話をするには時間がありません。

 厄介な迷宮の罠に掛かり、仲間と別れてしまった事、緊急性の高い状態なので直ぐにギルドに戻らねばならない事を説明します。

 聞いていたギルドナイトの表情は面当てで見えませんが、その雰囲気から驚いているのが判ります。

 金級のブラウと銀級のマキーシャさん達が迷宮の罠に掛かり、生死不明。

 それにマキーシャさん達は、サガナでも長く活動している有名なパーティで、知り合いも多くいると言います。


「私が馬を出す、他の者達は誰も迷宮に入れるな!」


 説明を受けたギルドナイトの隊長さんが、足の速い馬を出してくれるようです。

 それに一緒に乗らせて貰い、急いでサガナまで戻らせていただきます。

 リルさんの方が足は速いですが、リルさんだけではサガナに入る事は出来ません。

 なので、申し訳ないのですが、馬の速度に合わせて貰っています。

 最も、サガナに戻るまでにゴブリンが数匹襲ってきましたが、全てリルさんが一瞬で倒してしまいました。



 サガナに到着し、門では兵士さんに隊長さんが緊急案件と言って素通りし、冒険者ギルドに直行しました。

 受付にいたアイナさんに、ギルドマスターへの面会をお願いしてしばらく待つと、直ぐに面会が取り付けられました。

 リルさんはギルドの入口で待っていて貰っています。


「緊急と言う事だが何があった?」


 ギルドマスターの部屋にいたのはクックさんだけでなく、アーノルドさんも居ました。

 直ぐに何があったのかを報告すると、二人共難しそうな表情を浮かべました。


「魔方陣が光った後、全員が消えたと言う事は……」


「考えたくない事だが、心当たりはアレしかないのである」


「一応、確認だが、平原の何処かに転移させられた訳では無いんだな?」


「それなら良いんですが……」


 私の言葉でクックさんが唸っています。

 アーノルドさんも顎に手を当てて考え込んでいるようです。


「誕生して間もない迷宮がアレになる確率はどのくらいだと思う?」


「少なくとも、吾輩は聞いた事は無いのである。しかし、もしもアレなら随分と不味い事になるのであるな」


 話している内容から、二人共何か心当たりがあるようです。


「一体どういう事なんですか?」


「うむ……可能性としては二つある」


「一つは、『平原の何処かに転移させられた』と言う可能性である」


「もう一つは……『迷宮の奥深くに転移させられた』と言う可能性だ」


 二人にそう言われ、話で聞いた事のある迷宮の名を思い出しました。

 冒険者を誘き寄せ、迷宮の最深部に転移させて確実に命を狩り取る迷宮。


「まさか……『逆さ迷宮』ですか!?」


 私の言葉に二人が頷きました。



 通常、迷宮は地上から地下へと降りて行くのが普通です。

 途中で帰る事も可能であり、場合によっては転移石を使用する事で脱出も出来ます。

 ですが、その迷宮の中で一つだけ例外の迷宮が存在します。

 それが『逆さ迷宮』と呼ばれる特殊な迷宮です。

 その迷宮は、最下層から地上へと登って行く(・・・・・)迷宮です。

 もし迷い込んだ場合、只管に地上を目指して襲い来る魔物を倒し続ける事になります。

 途中で帰る事も出来ず、転移石でも脱出も出来ません。

 本来は、白金級の冒険者チームが複数集まって、初めて攻略が可能になる程の難易度です。

 有史以来、確認された逆さ迷宮の数は3ヵ所だけです。

 そのどれもが、多くの白金級冒険者が苦労して攻略し、迷宮の核を破壊しました。

 今回の迷宮が本当に逆さ迷宮だった場合、4ヵ所目となります。

 ですが……


「平原の何処かに転移させられただけかもしれん。一応、数日は様子を見るが……王国のギルドに事情を話して応援を頼んでおく」


 クックさんがそう言いつつも、その表情を見る限り、可能性は低そうです。

 皆さん、無事だと良いのですが……




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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