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第54話




 城級ゴーレムが起き上がろうと左腕を地面に突き立てるが、その巨体を支えられずに転がってしまう。

 通常、同じ状態になったとしても、腰を据える事で動けなくとも体勢を立て直す事は出来る。

 だが、このゴーレムは上半身と両腕を肥大化させている為、腰を据えて体勢を立て直す事が出来ない。

 出来るのは、仰向けになるくらいだ。


「な、何故……」


 ゲルィンが、自慢の城級ゴーレムが倒された事に唖然としている。

 まぁそりゃぁねぇ……

 少し考えれば簡単にわかる事だ。



 エーナル達から聞いた城級ゴーレムの情報から、使用している素材は鉄系の鉱物系ゴーレムだと予想出来た。

 鉱物系ゴーレムは、確かに頑丈でパワーもある。

 だが、致命的な欠点が存在し、それを知らないでいると酷い事になる。

 それは鉱物である以上、特定の条件下で劣化するのだ。

 主に酸化して脆くなる。

 今回、イーランの使った矢はとあるスライムから採取出来る素材を使い、超強酸性のゲルを作れるのだが、コレは対酸処理を施さなければ、触れるだけで凄まじい勢いで溶けて行く。

 それが、あの青いへばり付いた物体の正体。

 矢の半分が空洞になっており、氷魔法で(やじり)を作って蓋をする。

 そして、エルの炎魔法でゴーレム自体を熱し、鏃が触れた瞬間、砕けて中身の超強酸性ゲルが表面に貼り付く。

 それは一気に一部分だけを酸化させ、強固な守りを一気に崩す。

 そこに、強力な一撃を叩き込めば、耐久力を失った部分は一溜りも無い。

 結果、片腕と片足を失い、城級ゴーレムは転がるしか出来なくなった。



 ゲルィン、呆けていて良いのかな?

 残った王級ゴーレムにエーナル達が向かってるぞ?

 それに気が付いたゲルィンが慌てて指示を出そうとしたが、テランのシールドバッシュが背後から王級ゴーレムの片足を吹き飛ばし、エーナルの攻撃が上半身を斬り飛ばした。

 そして、その胸部から丸い玉のようなモノが転がり出て、イーランの鋼鉄の矢がそれを撃ち抜いた。

 この丸い玉がゴーレムの中枢である『ゴーレムコア』であり、これが破壊される事でゴーレムは真に破壊された事になる。

 ゴーレムは、コアさえ無事であれば、またボディを用意すれば復活するのだ。

 これで本来は勝負は決したのだが、審判役の兵士も買収されてるだろうし、終わらんだろうなぁ……


「くっ……まさか倒されるとは……」


「叔父上、僕らの勝ちだ!」


 エーナルが剣先をゲルィンに向けるが、ゲルィンがニヤリと笑みを浮かべる。


「勝ちぃ? 儂はまだ負けていないぞ?」


 そう言ってゲルィンが懐から取り出したのは、大人の拳程度の青い結晶。

 それを放り投げると、輝きを放って再び5体のゴーレムが現れた。

 見た目だけでも、全部アップグレードされている感じがするな。

 名前を見て見ると『ミスリルゴーレム』になってるし……


「なっ」


「審判、あれは良いのか?」


 驚いているエーナルを無視し、俺が審判の兵士に聞く。


「ゴーレムはただの魔法生物、武器である! ゲルィン殿を倒すか負けを宣言させぬ限り勝負は決しない!」


 すると、審判の兵士は当然とでも言うように、そう言い放った。

 やっぱりな。

 まぁ俺としては別に問題無いが。


「そうかそうか」


 頷きながら前に出る。

 エーナル達の出番は此処までだ。

 一応、彼等は城級ゴーレムを倒せるだけの実力を見せつけた。

 ならば、ここから先は、俺の鬱憤晴らしだ。


「エーナル達は手を出さなくて良いぞ」


「良いんですか?」


 エルがそう聞き返してくるが、手を振って答える。

 さて、それじゃここは一発、自重()()にやるとするかね。



 目の前にいるミスリルゴーレム達の構成は先程のアイアンゴーレムと変わらない。

 剣持ちのナイトが2体、ランス持ちのロイヤルが1体、メイス持ちのキングが1体、巨体の城級が1体。 

 一気にナイトの一体の懐に跳び込むと、その膝を蹴り飛ばし、そのまま圧し折る。

 体がグラついた瞬間、その胸部に掌底(ショウテイ)を叩き込み、胸部にあるゴーレムコアを破壊。


(ぬる)い」


 更にそのナイトをロイヤルに向かって蹴り飛ばし、残っているナイトが振り下ろしてきた剣をスレスレで回避し、その頭を片手で掴んで力尽くでもぎ取る。

 そのまま棍でコア諸共一刀両断。


「脆い」


 ナイトを押し付けたロイヤルがランスを突き出すが、それを回避してカウンターで胴体部から両断し、転がったロイヤルの胸部を踏み潰してコアを破壊。


「遅い」


 キングが盾を構えて向かって来たので、その盾毎蹴り飛ばす。

 蹴りを受けた盾が(ひしゃ)げ、持っていた左腕が圧し折れる。

 痛みを感じないゴーレムである為、構わずにメイスを振り下ろしてくるが、コレを敢えて回避せずにメイスを受け止める。

 ズドンと轟音が響き、足元が若干陥没するが、対してダメージは受けていない。

 そのメイスを奪い取り、逆にキングの頭に叩き付け、そのまま胸部のコアまで陥没させる。


「弱い」


 残された城級が地響きを上げながら此方にやってくる。

 まぁ倒せない事は無いがここは……


「零式、殴り倒せ」


 殴りかかろうとしていた城級ゴーレムの真正面から、それを片手で受け止めた零式が逆に殴り飛ばした。

 殴り飛ばされた城級ゴーレムのダメージは凄まじく、拳が直撃した部分がべっこりと凹んでいた。

 先程のアイアンゴーレムより頑丈に作られているのが仇となり、城級ゴーレムが掴まれた腕を引き戻されて再び零式の間合いに強引に戻される。

 そこに零式が振り下ろした拳が、掴んでいた右腕を肩から破壊し、更に拳を振り上げてその胴体部に叩き込む。

 城級ゴーレムが仰向けに倒れた所で、零式の脚が胸部を踏み潰してゴーレムコアを諸共破壊した。


「さて、まだやるかい?」


 ゲルィンに聞くと、顔を真っ赤にしながら懐から赤い結晶を取り出した。


「まさか、儂のゴーレム軍団はまだまだおるんじゃ!」


「……面倒だから全部出せ、一つ残らず叩き壊してやっから」


 指先でチョイチョイと挑発しながら言い放つ。

 それを受けて、真っ赤になったゲルィンが更に懐から様々な色の結晶を放り投げた。


「後悔すると良い! 我が最強の『鋼鉄の軍団(ゴーレム・レギオン)』!」


 結晶が光を放ち、目の前に夥しい数のゴーレム達が出現する。

 アイアンゴーレムからミスリルゴーレム、ロックゴーレムやブロンズゴーレムと種類は様々だが、流石に100体近くいると壮観だ。

 ゲームでは5体までしか同時操作出来なかったが、此方ではそう言った制限は無い様だ。

 まぁそこは後で調べるとして。


「零式、リミッター解除、コード『剣魂一擲』」


 俺の言葉を受け、零式が巨剣を両手で大上段に構える。

 そして、全身のブースターとスラスターが青白い炎を噴き出す。

 そのまま、一気に大量のゴーレム軍団に向けて跳び出し、巨剣の峰部分にある先端と中央部のブースターも青白い炎を噴き出した。

 大推進力を合わせた超パワーが、ゴーレム軍団に炸裂した。



 零式はそのパワーが余りにも凄まじい為、戦闘時であってもリミッターが常に掛かっている。

 制限下では、本来のパワーの100分の1程度になっている。

 それがリミッターを解除されたらどうなるか。



 振り下ろされた巨剣がゴーレム数体を巻き込み、地面に触れた。

 瞬間、轟音と共に剣圧と衝撃波が周囲にいたゴーレムを巻き込んで吹き飛ばしていく。

 吹き飛ばされたゴーレムが別のゴーレムを巻き込み、そのゴーレムが更に別のゴーレムを……

 振り下ろされた剣から先の地面が大きく抉れ、大量にいたゴーレムは殆どが塵となり、僅かに残ったゴーレムも最早動けない程にボロボロになっていた。

 ゲルィンを見れば、ボロボロの城級ゴーレムの影で失神していた。

 審判の方を見ると、此方も結界の外で失神している。

 エーナル達はテランの盾の裏にいて無事だが、かなり怯えている。

 んーこりゃどうするかな。



 審判の兵士を叩き起こし、どうするのか判断させる。


「えっ? あっ? えっ?」


 判断を仰ごうにも、ゲルィンは失神し、呼び出したゴーレム軍団は全て行動不能。

 混乱しているが、この状態ではどう言い逃れてもゲルィンの敗北は確定だ。

 もし復帰したとしても、最早再戦するのは無理だろう。

 取り敢えず、生き残りのゴーレムは全て破壊させてもらう。



 そして、手持ちのゴーレムを全て破壊され、茫然自失となっていたゲルィンを簀巻きにし、兵士に勝敗を宣言させる。

 兵士はエーナル達の勝利と、渋々と宣言。

 ゲルィンに隷属の首輪が付けられ、以後はエーナルを妨害する事が出来なくなるだけでは無く、今回の件に関して洗い浚い調べられる。


 これで、エーナルの騒動が終わりかと言えば、そうでもなかった。

 まず、今回の試験でエーナルは白金級に上がり、更に王への謁見が行われる。

 その謁見の場で願いを言う際に、父の恩赦を願うのがエーナルの目的だったが、隷属の首輪を付けられた事により、ゲルィンが自白。

 しかし、その自白内容がかなり不味かった。


 まず、父の汚職事件は予想通り、ゲルィンの指示によりされた物で、直ぐに釈放手続きが行われると言う。

 だが、それ以外にも王国では禁制品である麻薬の密輸や、暗殺、人身売買にも関わっていた。

 しかし、それ等の問題すらも霞む大問題をこの男はやっていた。


 帝国への情報漏洩。

 月に一度、帝国のスパイに王国の状況や王城の見取り図、兵站や即時動員できる兵士の数、果てはいざという時の王族の逃走経路を漏洩させていた。

 いつから情報を帝国に漏らしていたのかと言うと、城級ゴーレムで帝国兵の一部を殲滅したと言うのは真っ赤な嘘で、実際には手も足も出ずに捕らえられ、その際に帝国側のスパイとして活動するなら命は助けてやると言う条件を承諾し、それからずっと情報を流し続けていたと言う。

 もし、このまま帝国との戦争が再開された時、今の状況で戦えば確実に負ける。

 それを知った王宮側は大激怒。

 ゲルィンに付けられた隷属の首輪を、『虜囚(りょしゅう)の首輪』と言う更に強力な拘束魔道具にし、更に情報を搾り取るのだそうだ。


 まぁ、帝国軍の一部を壊滅させたと言う話を聞いて、実際に城級ゴーレムと戦った際、それが嘘だと判った。

 だってどう考えても弱いんだもの。

 帝国兵士がどれ程の強さなのかは知らないが、あの城級ゴーレム程度の強さなら数の暴力でどうにでもなる。

 

 取り敢えず、俺はこのままサガナに帰る事にする。

 これ以上はエーナル達自身が解決する事だ。

 一応、戻る前に冒険者ギルドに顔を出すが、ギルマスのレイは不在。

 だが、俺宛にメッセージが残されており、今回の件の礼とデミワイバーンの魔石は転移石に使えなかった、今は少々手が離せない問題があり、詳しい事は後でサガナのギルマスのクックに伝えておく、と言う内容だった。

 何故使えないのかは気になるが、まぁ報告はちゃんと来るみたいだし、後で確認してみよう。


 さて、それじゃサガナに帰ってランク上げるかね。




それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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